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2026年9月26日、米国のランニング誌Runner’s Worldが、Apple WatchとCOROSのユーザーデータから「VO2max(最大酸素摂取量)を伸ばすのに効いた練習」を読み解く記事を公開しました。走る量を増やすことにも効果はありましたが、COROSのデータでいちばん伸びが大きかったのは、閾値走を取り入れたグループでした。
スマートウォッチでVO2maxを見る人が増え、日本でも「VO2max 上げ方」の検索が伸びています。この記事では、Runner’s Worldが紹介したデータと専門家の助言を整理したうえで、時計に出る数字をどう読めばいいのかを、これまでSWLで取り上げてきた研究とあわせて考えます。
走る量が多い人ほどVO2maxは高かった
Runner’s Worldによると、Apple WatchとCOROSのどちらのデータでも、全体の運動量がVO2maxの変化に関わっていました。
Appleの「Apple Heart and Movement Study」では、心肺機能(VO2max)が「平均より上」の参加者は週に平均200分以上、「高い」参加者は週に平均300分以上体を動かしていました。VO2maxが高い人は低い人に比べて、1日あたりの運動時間が平均で15分以上長かったとしています。
COROSがRunner’s Worldのために北米のユーザーデータを集計した結果は、次のとおりです。いずれも12週間でのVO2maxの変化です。
| 走り方 | 12週間でのVO2maxの変化 |
|---|---|
| 週4日走る | 0.1% |
| 週6日走る | 0.4% |
| 週40〜60km(約25〜37マイル) | 0.2% |
| 週100km(62マイル)以上 | 0.5% |
| 1回のロング走が15km以上 | 約0.2% |
| 1回のロング走が15km未満 | 最大でも0.1% |
Runner’s Worldは、実際の数字にすると、たとえばVO2maxが50から50.25になるくらいの変化だと説明しています。小さく見えても、走るのが楽に感じられたり、ペースが上がったりといった、はっきりした違いにつながりうるとしています。
実際、COROSのデータでは、週の走行距離が13マイル(約21km)未満のユーザーでも、12週間で平均ペースが17分06秒から15分04秒に上がっていました。週50マイル(約80km)以上走るユーザーでは、イージーランのペースが13分21秒から10分04秒になっています(ペースはいずれも原文の数値のまま)。
ただし、メイヨー・クリニックのMichael Joyner医師は、走る量はVO2maxを上げる一番の方法ではないとしています。量が効いてくるのは、マラソンのような長い距離でVO2maxや乳酸閾値、走りの効率がどれだけ落ちずに保てるかという「耐久力」のほうだと説明しています。
いちばん効いたのは閾値走と長めのインターバル
Joyner医師が「いちばん大事」と挙げるのは、ロングインターバルです。5kmのレースペースくらいで3〜5分走る練習で、たとえば3分間の全力に近い走りを5本、あるいは800mを6本、あいだに2〜3分の軽いジョグをはさんで行います。これを週に2回ほど取り入れる形です。
強さの目安として、Joyner医師は「前かがみにならないルール」を挙げています。追い込んだと感じるくらいの強さで走るけれど、終わったあとに前かがみにならないといけないようなら、速すぎたということです。
こうしたインターバルは心臓を刺激し、1回の拍動で送り出せる血液の量と、心臓が送り出す血液の総量を増やします。筋肉が酸素を使う力も高め、ミトコンドリアの働きを促し、毛細血管を増やします。その結果、酸素が働いている筋肉に届きやすくなり、運動が楽に感じられるようになる、というのがJoyner医師の説明です。
もう一つの柱が閾値走です。Joyner医師は、10kmのペースのおよそ80〜90%で走る練習としています。COROSのデータでも、VO2maxを上げるのにいちばん効果的だったのが閾値走で、取り入れたユーザーは12週間で平均0.6%VO2maxが上がっていました。週6日走る(0.4%)、週100km以上走る(0.5%)よりも大きな伸びです。
Appleのデータでも、段階的に負荷を上げていく「きつい」トレーニングとVO2maxの上昇に関係が見られました。ゆっくり走る量を積むだけでは説明がつかない、ということになります。
時計のVO2maxは「推定値」として読む

編集部員がApple Watchで計測したデータの一例
ここで気をつけたいのが、時計に出るVO2maxは実際に測った値ではない、という点です。Runner’s Worldも、Apple WatchとCOROSはどちらも屋外で走ったときの心拍数とペースの関係からVO2maxを推定していると説明しています。
ミシガン大学などのレビュー論文では、スマートウォッチのVO2maxは、呼気ガスを分析する運動負荷試験と比べて誤差(MAPE)が約5〜13%とされていました。競技レベルが高い人ほど誤差が大きくなる傾向もあります。
この誤差の幅と比べると、COROSのデータに出てくる0.1〜0.6%という変化はかなり小さな数字です。数週間で表示が上がった、下がったというだけで、練習が効いた、効かなかったと決めつけるのは早いということになります。
一方で、同じレビュー論文が時計のVO2maxの使いみちとして挙げていたのは「個人内の変化の追跡」でした。同じ時計を着けて、同じように屋外を走り続ければ、数か月単位の傾向はつかめます。Runner’s Worldも、時計のVO2maxは実験室の検査ほど正確ではないものの、大まかな傾向を知る手がかりにはなるという専門家の見方を紹介しています。
数字より「同じペースが楽になったか」で確かめる
VO2maxは、年齢や遺伝、性別などにも左右されます。Appleのデータでは、心肺機能が1mL/kg/分より大きく改善した人は、男性、もともとの体力レベルが低い人、30歳未満の人に多く見られました。同じ練習をしても、伸び方には個人差があるということです。
そのうえでJoyner医師は、時計の数字や実験室の検査以外にも、VO2maxが上がっているサインはあると話しています。一つは主観的なきつさ、もう一つはレースの結果です。
「同じスピードで走って、少し楽に感じるか。もっと速く走っても、同じくらいのきつさで済むか。そしてレースの結果はどうなっているか。数値にとらわれがちですが、結局のところ、速く走れているかどうかです」
VO2maxが上がると、ゆっくり長く走るときも楽に感じられるようになります。Runner’s Worldは、VO2maxが高いことは、糖尿病やがん、心臓病のリスクが低いこと、さらにあらゆる原因による死亡リスクが低いこととも関係していると紹介しています。
まとめ
Apple WatchとCOROSのデータからは、走る量が多いほどVO2maxは高い傾向にあるものの、いちばん伸びが大きかったのは閾値走を取り入れた場合だと分かりました。Joyner医師は、5kmのレースペースで3〜5分走るロングインターバルと、閾値走の2つを柱に挙げています。
一方で、時計のVO2maxは心拍とペースから計算した推定値で、実験室の値と比べて数%から十数%ずれることがあります。12週間で0.1〜0.6%という変化は、その幅よりも小さな数字です。表示を毎週追いかけるより、同じ時計で数か月の傾向を見ながら、同じペースが楽になったか、レースのタイムが縮んだかで確かめていくのが現実的な使い方になりそうです。
Source: Runner’s World/Apple Heart and Movement Study
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