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Apple Watchはクロスフィットの超ハードなワークアウト「マーフ」の運動量を把握できるか

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Apple Watch の「ワークアウト」アプリでは最初から20を越える種類の運動を選択できます。

それ以外のワークアウトも追加が可能で、その数は増え続けているようです。

アップル社のサポートページ:Apple Watch のワークアウトの種類

例えば、散歩に出かけるとき、歩く距離や時間を記録するためにはワークアウトの種類に「屋外ウォーキング」を選択します。プールで泳ぐときは「プールスイミング」を選び、トレッドミルで走るときは「室内ランニング」を選びます。

非常にシンプルです。迷うことはありません。

ところが、世の中にはこうしたカテゴリーにあてはめにくいエクササイズがあります。例えば、ラジオ体操は全身を鍛える「機能的筋力トレーニング」なのでしょうか、音楽に合わせて動くから「ダンス」なのでしょうか、それとも体幹を鍛える「コアトレーニング」なのでしょうか。はっきりと選べる人は少ないのではないかと思います。

私が行っているクロスフィットもApple Watchでワークアウトの種類を選択するときに迷うことが多いスポーツです。なぜならクロスフィットはそもそも多種多様な運動を組み合わせるもので、しかもその組み合わせは無限に変化するからです。

Apple Watchは「常に変化する、高強度の、機能的動作」を把握できるか

クロスフィットのジムで行うのは日替わりのメニューです。重量挙げ、ランニング、ロウイング、鉄棒、逆立ち、ケトルベル、縄のぼり、メディシン・ボール、自重筋トレ、縄跳び、プライメトリクス、などなど、数えきれないほどのエクササイズから、その日に行う運動メニューを指定されます。

定番メニューのようなものもいくつかありますが、最も有名なもののひとつが今回ご紹介する「マーフ」です。

マーフとはまず1マイル(1600メートル)を走り、続いて懸垂を100回、腕立て伏せを200回、スクワットを300回行い、最後にまた1マイルを走るというものです。しかも,すべてのエクササイズで、重量ベストを着用して行います。

そのとんでもない回数はともかくとして、このメニューをApple Watchで記録しようと思ったとき、ワークアウトの種類を選択することの難しさは分かってもらえるでしょう。走る部分はさておき、懸垂、腕立て伏せ、スクワットの部分はどうすればよいのでしょうか。

もうひとつあります。言うまでもないことですが、重量ベストを着用すると、同じ運動でも大変きつくなります。そのきつさをApple Watchはきちんと把握してくれるのでしょうか。

ひとりで行う「変形型」マーフとApple Watch

この実験に大変都合のよいことに、私の自宅からちょうど1マイル離れた位置に公園があり、そこには大人がぶら下がることができる高さの鉄棒があります。途中に信号も交差点もありません。いくらでもマーフをやれと言わんばかりの立地条件なのです。

まずは自宅から公園に向かって走り出します。Apple Watchで選択するワークアウトは「屋外ランニング」。ここでは迷うことはありません。

上半身には重量ベスト、手首にはApple Watch。走り始めたばかりなので、まだ元気だ。

1マイル(1600メートル)の距離は普段の私なら軽めのジョグで9~10分くらいです。しかし、マーフが規定する20パウンド(約9キロ)の重量ベストを着て走るとなると、話はまったく別になります。

客観的には歩きと変わらないようなペースでしか走っていませんが、もちろん主観的には大変ハードな1マイル走になりました。

Apple Watchが表示したタイムは14分31秒、消費カロリーは79CALでした。1分間平均の消費カロリーを計算すると、約5.4CAL となります。これは大変低い数値で、仮に1時間走り続けても約326 CAL。普通のジョグより少ないくらいです。どうやらApple Watchは重量ベストを着ていようがいまいが、ゆっくり走ったとしか評価してくれなかったようです。

さて公園に着いたら、懸垂100回、腕立て伏せ200回、スクワット300回、というとんでもない回数の自重筋トレが待っています。本来ならすべてこの順番で続けてやらないといけないのですが、それをやるのは大変きついうえ、また面白くもないので、別のクロスフィット・メニューである「シンディー」を20セットに変更しました。

シンディーとは懸垂5回、腕立て伏せ10回、スクワット15回が1セットになったメニューです。これを20セットやればマーフと同じ回数になります。

ここでApple Watchで指定するワークアウトの種類に迷うことになります。「自重筋トレ」という種類は用意されていません。「伝統的筋力トレーニング」のような気もしますし、「機能的筋力トレーニング」のような気もします。結局、私は「高強度インターバルトレーニング (HIIT)」を選択しました。

私はこの「シンディー」20セットを、自重でなら20分以内に終わらせることができます。しかし、当然のことですが、重量ベストを着用するとなると、そのきつさは別次元になります。

ヘトヘトになって20セット目を終了したとき、Apple Watchにはタイムは39分23秒、消費カロリーは244 CAL と表示されました。1分間平均の消費カロリーは約6.2 CAL。先ほどのランよりは少し多目ですが、やはり非常に軽い運動のような数値です。肩も腕も太股も、全身の筋肉がパンパンに張っていることを思うと、この数値に納得することは難しいです。

最後の難関は自宅までの1マイル走です。なにしろスクワットを合計で300回こなした直後なのですから。それでも、自分でも驚いたことに、行きのランよりペースをやや速くすることができました。もうすぐ終わるという気分的なものなのか、あるいは重量ベストに体が慣れてきたのか、その理由は正直なところよく分かりません。

自宅前に到着して、Apple Watchのワークアウト終了ボタンを押すと、タイムは13分22秒、消費カロリーは94 CALでした。行きよりも帰りの方が約1分速く、15 CAL余分に消費したということになります。

個人的結論:Apple Watchはやはり有酸素運動に最適化されている

「ワークアウト」アプリに記録されたデータ。左が行きのラン、中央が筋トレ3種類、右が帰りのラン

Apple Watchの「ヘルス」アプリを見ると、この日私の身体的活動は68分間、436 CALとなっていました。マーフを行った以外の時間はApple Watchを手首から外しましたので、それがつまり、マーフの総運動量だということになります。

ちなみに、以前私が約10キロを75分間でジョグした時の消費カロリーは550 CALでしたので、マーフの運動量はそれより低いとApple Watchは言っているのです。

クロスフィットで最もきついと恐れられているマーフより、同じ時間だけ軽めのジョグをした方がカロリーをより多く消費する。これに同意するクロスフィッターは少ないでしょう。体感での疲労度と筋肉痛の度合いからは遠くかけ離れた比較結果です。

以前に書いた記事の繰り返しになってしまいますが、Apple Watchは(多分、他のスマートウォッチやフィットネストラッカーも)、有酸素運動(特にランニング、ウォーキング、水泳、自転車など、同じ動作を一定時間繰り返すタイプの運動)の動作を追跡することに最適化されていると考えた方が良いと思います。

●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani

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