スマートフォンやスマートウォッチなどのガジェットでは、耐水性能などをアピールするスペックとして「IP68」という文字が書かれていることが多くあります。
「IP68」というのはIP規格(Ingress Protection)を表す数字で、IP規格は機器がどれだけ外的要因から保護されているかを示す国際規格です。
この規格を理解することで、ガジェットの耐久性や信頼性をより深く把握できます。
この記事では、IP規格の意味、特に「IP68」がどのような保護レベルを示すのかを詳しく解説し、これをクリアした製品がどのように信頼できるかについても紹介します。
IP規格とは?
IP規格は、製品がどれだけ固形物や液体から保護されているかを示します。IPの後に続く2桁の数字で、保護される対象とそのレベルが定義されています。
IP規格の数字の意味
・最初の数字(0~6): 固形物(主に埃)に対する保護レベル
・2番目の数字(0~9): 液体(水分)に対する保護レベル
1番目の数字と2番めの数字では表しているものが別物というわけですね。
以下の表に、各数字が示す保護レベルをまとめました。
最初の数字(固形物保護) | 説明 |
---|---|
0 | 保護なし |
1 | 直径50mm以上の物体(手や指など)からの保護 |
2 | 直径12.5mm以上の物体(工具など)からの保護 |
3 | 直径2.5mm以上の物体(小さなワイヤーなど)からの保護 |
4 | 直径1mm以上の物体(小さなネジなど)からの保護 |
5 | 埃が内部に入らない、または少し入っても問題なし |
6 | 完全に埃から保護される(完全防塵) |
2番目の数字(水分保護) | 説明 |
---|---|
0 | 保護なし |
1 | 垂直方向からの水滴(通常の雨)に対する保護 |
2 | 15度傾けた状態での水滴に対する保護 |
3 | 水しぶきに対する保護 |
4 | あらゆる方向からの水しぶきに対する保護 |
5 | 水圧での噴射に対する保護(洗車時など) |
6 | 高圧の水流に対する保護(海水浴など) |
7 | 1メートル程度の深さで30分間の水没に対する保護 |
8 | 1.5メートル以上の深さで30分以上の水没に対する保護 |
9 | 高圧の蒸気や温水による噴射に対する保護(スチーム等) |
IP68とは?
IP規格のなかでもよく見るのが「IP68」です。
上の表を見れば「68」が非常に高いレベルの保護を表す規格だと分かるでしょう。
この規格を満たしている製品は、日常的な使用において非常に高い信頼性を持ちます。具体的には:
・6: 完全な防塵保護(埃が一切内部に入らない)
・8: 水深1.5メートル以上で30分間の水没に耐えられる
これにより、IP68をクリアしたガジェットは、雨の日や汗をかく状況でも安心して使用でき、水泳やシャワー中の使用にも適しています。
IP6Xとは?
また、Apple WatchのIP規格の表記は「IP6X」となっていて、「X」って何やねん!と思う人もいると思います。
IP6Xは、IP規格の中で特に「防塵性」に関連した指標です。具体的には、「IP6X」という表記は次の意味を持ちます:
・最初の数字「6」: 完全防塵(埃が一切内部に入らない)
これは、製品が完全に埃やゴミから保護されていることを示します。IP6は、非常に高い防塵性を誇り、工場やアウトドアなど埃が多い環境でも問題なく動作します。
・2番目の数字「X」: 水に対する保護レベルを示すものの、ここではその情報が提供されていないことを意味します。
通常、IP規格の2番目の数字は水の保護レベルを示しますが、**「X」**は水に対する保護が評価されていない、またはこの情報が適用されていないことを意味します。
つまりIP6Xは防塵性が非常に高い一方で、水に関しては保護を評価していないため、水に対する耐性については明記していない……と言う意味なんです。
ただし、Apple Watchは
・Apple Watch Series 2 以降には、ISO 規格 22810:2010 に基づく水深 50 m の耐水性能がある。
・Apple Watch Ultra 以降には、ISO 規格 22810:2010 に基づく水深 100 メートルの耐水性能があり、EN13319 に準拠している。
との記載があるので、耐水性については別の規格で評価を得ている……ということになります(なので日常の水濡れは気にせず使えて、プールでも使えます)。
IP68規格をクリアしたガジェットの信頼性
IP68規格をクリアした製品は、特にスマートフォンやスマートウォッチにおいて非常に高い耐久性を誇ります。これらの製品は、次の点で信頼性があります:
1.耐水性: 水中でも問題なく使えるため、水しぶきや汗に触れることを心配する必要はありません。
2.耐塵性: 埃の多い環境でも内部にゴミや埃が入らないため、長期間使用しても正常に動作します。
3.堅牢性: 高いIP規格を満たす製品は、日常生活の中で耐久性が求められるシーン(アウトドアやスポーツ活動)でも安心して使用できます。
IP68規格をクリアした製品例
以下は、IP68規格やIP6Xをクリアした代表的なガジェットの一部です。
製品名 | 説明 |
---|---|
Apple Watch Series 7/8 | IP6X(防塵)および水深50メートルまで耐えられる(IP68) |
Samsung Galaxy S21 | IP68(完全防塵および水深1.5メートルまで30分間の水没耐性) |
Garmin Fenix 7 | IP68(完全防塵および水中での使用が可能、最大100メートルまで耐えられる) |
これらのガジェットは、特にアウトドアや運動を好むユーザーにとって、非常に信頼性が高く、過酷な環境でも安心して使用できる選択肢となります。
MIL規格とIP規格の違い
MIL規格のほかに「IP規格」というものも聞いたことがある人は多いと思います。
MIL規格とIP規格(Ingress Protection)は、製品の耐久性や保護性能に関する基準ですが、適用される環境や評価基準が異なります。
・MIL規格(Military Standard):
MIL規格は、過酷な環境条件での耐久性を重視しています。特に、極端な温度、湿度、衝撃、振動、塩水、砂塵など、軍事用途で想定される過酷な状況に対応したテストが中心です。
MIL規格は、軍事機器や装備の標準として制定されたもので、その基準に適合することで製品が極限状態でも機能することが保証されます。
・IP規格(Ingress Protection):
IP規格は、製品がどれだけ外部の固形物(塵やゴミ)や水分から保護されているかを示します。これにより、製品がどの程度防塵・防水であるかを評価します。
IP規格の評価は、特に電子機器や家庭用機器に焦点を当てており、防塵・防水に関して詳細な等級(IP67やIP68など)があります。
主な違い:
・環境条件: MIL規格は非常に過酷な軍事環境での使用を前提としているのに対して、IP規格は主に家庭や一般的な商業環境での耐性を測定します。
・評価内容: MIL規格は温度や振動、塩水など多岐にわたる環境での耐性を測るのに対し、IP規格は主に塵や水の侵入からの保護を評価します。
まとめ
IP規格とその中でも特に高いレベルを示すIP68は、ガジェットがどれだけ外的要因から守られているかを示す指標です。
IP68をクリアした製品は、特に水や埃に強く、日常的に安心して使用することができます。スマートフォンやスマートウォッチを選ぶ際には、このような規格を確認することで、耐久性に優れた製品を選ぶことができます。
●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者7000人程度)でも各種レビューを行っています!
当サイトのおすすめ記事のリンク
Apple Watchの使い方のテクニックや、購入検討に役立つ記事の一覧はこちら! ※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。