Apple Watchは、心拍数や心電図(ECG)、血中酸素濃度などの健康データを日常的に測定・記録できるスマートウォッチとして広く知られています。近年では、これらの機能を医療現場で本格的に活用する事例が国内外で急増しており、「ウェアラブル×医療」の分野は新たなフェーズに突入しています。
本記事では、Apple Watchが医療機関で活用される背景、実際の活用事例、今後の展望について詳しく解説します。
なぜApple Watchは医療機関で活用されるのか
Apple Watchが医療現場で注目されている理由には、以下の点が挙げられます。
・高精度な生体センサーを搭載
心拍数、心電図、血中酸素濃度、皮膚温、呼吸数など多様なバイタルデータを正確に計測でき、病状の兆候を早期に捉えることが可能です。
・日常的に装着しやすく、患者の負担が少ない
ファッション性や使いやすさが高いため、患者が日常生活で無理なく継続的に装着し、データを取得できる点が医療用機器との差別化要素です。
・データ連携と遠隔共有が容易
Appleのエコシステム(iPhone・iCloud・ヘルスケアアプリ)により、取得した健康データを医療機関とシームレスに共有可能。遠隔診療の推進にも寄与しています。
・国内での規制認可も進展
Apple Watchの心電図アプリは2021年に日本でもPMDA(医薬品医療機器総合機構)から医療機器としての認可を取得。正式に診断補助に活用される土台が整っています。
医療機関で特に活用されているApple Watchの機能
・心電図(ECG)機能
心房細動などの不整脈検知に活用されており、医療機関でも術後のモニタリングや診断補助に利用され始めています。
・心拍数モニタリング
異常な高心拍や低心拍が検出された際にはApple Watchが通知を出し、日常生活の中で異常を察知するツールとして機能します。
・血中酸素濃度(SpO₂)測定
コロナ禍では軽症者の自宅療養支援において活躍。睡眠時無呼吸症候群や慢性肺疾患のモニタリングにも役立てられています。
・睡眠、皮膚温、活動量の記録
日々の生活習慣や体調の微細な変化を把握するために不可欠な情報を自動で記録。メンタルヘルスやホルモン変動の検知にも応用されています。
国内のApple Watch活用事例
1. ニューハート・ワタナベ国際病院
東京都港区にあるこの病院では、Apple Watchの心電図機能を活用した術後フォローアップを実施しています。患者が自宅で記録したデータを医師が確認し、心房細動の再発などを早期に発見。遠方に住む患者にも対応できるリモート医療の一環として機能しています。
AppleWatch外来を開始 大塚俊哉医師-心臓外科・心臓手術ならニューハート・ワタナベ国際病院
2. 川崎病院(兵庫県)の「スマートウォッチ外来」
Apple Watchや他社のスマートウォッチの心電図データを診療に活用する専門外来を設置。不整脈などの自覚症状があるものの、従来のホルター心電図では検出が難しかったケースにおいて、スマートウォッチが決定的な診断材料となる例が報告されています。
アップルウォッチ・スマートウォッチ外来 循環器内科 | 河北総合病院(東京都杉並区阿佐谷北)
3. 杏林大学医学部付属杉並病院
2024年には東京都杉並区にある杏林大学医学部付属杉並病院が「スマートウォッチ外来」を新設。Apple Watchなどを用いたPHR(Personal Health Record)の活用によって、患者の生活習慣・症状・データを包括的に管理し、より高度な診療を実現する体制が整えられています。
杏林大学医学部付属杉並病院が「スマートウォッチ外来」を新設!Apple WatchなどのPHR活用で次世代医療
4. 恵寿総合病院での「HUAWEI WATCH D2」導入実験
2025年6月、石川県七尾市の恵寿総合病院は、HUAWEI製のウェアラブル血圧計「HUAWEI WATCH D2」を入院患者向けに導入し、医療現場での実証実験を開始しました。このモデルは、手首での血圧測定が可能なスマートウォッチとして、医療機器認証(中国・EU)も取得済み。看護師の巡回を待たずして、患者自身が日常的に血圧を測定できるため、院内の業務効率化や早期の病状把握に貢献すると期待されています。
また、恵寿総合病院ではすでにApple Watchなどを活用したデジタルヘルス推進に積極的で、今回のHUAWEI WATCH D2導入もその一環。今後は血圧データと既存の電子カルテとの連携や、クラウドを活用したデータ蓄積によるAI解析など、さらなる活用も検討されています。
ウェアラブル血圧計「HUAWEI WATCH D2」が日本の病院で入院患者に初導入! 恵寿総合病院が実証実験を開始
海外のApple Watch活用事例
1. ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(アメリカ)
ハーバード大学医学部附属の同病院では、Appleとの共同研究として「Apple Heart and Movement Study」を展開。日常の心拍数、睡眠、呼吸パターン、月経周期などのデータを大規模に収集し、疾患の早期兆候や公衆衛生への知見を蓄積しています。
2. スペシャル・サージャリー病院(アメリカ)
整形外科で世界的に有名なこの病院では、術後のリハビリテーション管理にApple Watchを導入。患者が自宅で装着し、歩行距離や運動量を記録。回復プロセスの可視化と医師による進捗確認に貢献しています。
医療現場におけるApple Watchの未来
・個別化医療(パーソナライズドメディスン)の基盤へ
継続的に取得されるデータは、ゲノム医療や生活習慣病予防など、個別に最適化された医療戦略と結びつく可能性があります。
・リモート診療の標準化に貢献
在宅療養中の患者にとって、ウェアラブルからリアルタイムで医師にデータが届く仕組みは今後の医療インフラの一部になるでしょう。
・AIによる疾病予測への活用
Apple Watchの膨大なセンサーデータは、AIを活用することで、うつ病、心不全、糖尿病などの予兆を高精度に予測する研究が進行中です。
・医療機器としての機能拡張と制度整備
今後はさらに多くの機能が医療機器として正式に認定され、保険適用の範囲も広がっていくと予想されます。
まとめ
Apple Watchはすでに多くの医療現場で導入が進んでおり、遠隔モニタリングや予防医療、リハビリ支援といったさまざまな形で活用されています。その背景には、高精度なセンサー、使いやすさ、データの共有性、そして医療現場のニーズとの親和性があります。
ウェアラブルデバイスが「医療機器」として正式に認知される時代は、もはや遠い未来ではありません。医療とテクノロジーの融合がさらに進む中で、Apple Watchはその中核的存在として進化し続けることでしょう。
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