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左手にApple Watch、右手にFitbitを着けっぱなしで過ごした4日間のデータ比較。スタンフォード大の研究は正しいか

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2024.03.12

1日の終わりにスマートウォッチ、あるいはフィットネストラッカーのデータを眺めるのは楽しいものです。

心拍数の変化、歩数や移動距離、エネルギー消費量、睡眠の長さやパターンなど、自分がどれだけ体を動かしたか、あるいはどれだけ休めたか、さらにはどれだけ眠れたかまで、以前なら専門的な機器や施設を抜きには得られなかった情報を簡単に知ることができます。

その一方で、真実を追求する科学者から、私のようなあまのじゃくな一般ユーザーまで、そうしたデータの信憑性に疑問を抱く人が世の中にはいないわけではありません。

学術研究の共通認識:心拍数○、エネルギー消費量✕

佐々木麟太郎内野手が入学を決めたことで話題を呼んだ米国カリフォルニア州のスタンフォード大学は世界大学ランキングでも常に上位の座にある名門です。そのスタンフォード大学の研究者らがApple Watch やFitbitなどの手首に巻くタイプのウェアラブル製品を対象にして、それぞれが表示する心拍数とエネルギー消費量(カロリー)を専門施設で計測された数値と比較検証した研究があります(*1)。

*1. Accuracy in Wrist-Worn, Sensor-Based Measurements of Heart Rate and Energy Expenditure in a Diverse Cohort.

この研究が発表されたのは2017年。当然、対象となった製品はそれより古いモデルでした。結果として、心拍数はどの製品も概ね正確な数値を測定していましたが、エネルギー消費量はどれも不正確、かつ製品ごとに出す数値には多くのばらつきが見られました。

それから数年後、2020年にはカナダの研究者らが類似した数多くの研究を統合分析したシステム・レビュー論文(*2)を発表しました。

2. Reliability and Validity of Commercially Available Wearable Devices for Measuring Steps, Energy Expenditure, and Heart Rate: Systematic Review.

ここでも似たような結論が出ました。どの製品も歩数と心拍数に関してはほぼ正確でしたが、エネルギー消費量に関しては正確な数値を出した製品はひとつもなかったということです。

さらに細かく分析すると、歩数に関して最も正確だったモデルはFitbit、Apple Watch、Samsungと続き、心拍数の正確性に関してはApple WatchとGarminが双璧で、Fitbitはやや低めの数値を出す傾向がありました。

「それってホント?」がもたらした新たな発見

こうして学術的な結論が出ているにもかかわらず、身の程もわきまえず、いつものように自分の身体を使って実験をしてみることにしました。

左手首にApple Watch Ultra、右手首にFitbit Charge 3、同時に着用して4日間を過ごし、両者が測定したデータを比較してみたというわけです。

基本的には着けっぱなしでしたが、充電をするときには両手首から同時に腕時計を外しました。計測したのは1日に平均して23時間くらいになると思います。重要なポイントはApple WatchとFitbitを着用する時間をまったく同じにしたことです。

心拍数

前述しましたように、研究ではウェアラブル製品が測定する数値で最も信頼性が高いとされるのは心拍数です。

私の実験でも、この分野ではApple WatchとFitbitが示した数値は驚くほど相似していました。

データ1:安静時心拍数(心拍数/分)

測定日 Apple Watch Fitbit 差異
2月20日 59 60 1
2月21日 60 58 -2
2月22日 59 58 -1
2月23日 59 57 -2
2月24日 58 59 1

安静時心拍数が完全に数値が一致した日はないものの、その差は1ないし2回に留まっています。

よく誤解されることですが、安静時心拍数とは1日で最も低い心拍数ではありません。5、6分間ほど安静にしているときの心拍数の平均値です。

つまり、Apple WatchとFitbitは正確に心拍数を計測するだけではなく、1日に何回も訪れるであろう「安静時」を認定するロジックも似通っているのでしょう。

歩数(移動距離)

意外なことに歩数はApple WatchとFitbitでかなりの差が出ました。初日を例外として、Fitbitの方がApple Watchより多めにカウントしていたのです。

データ2:歩数

測定日 Apple Watch Fitbit 差異
2月20日 3,501 2,732 -769
2月21日 12,434 13,340 906
2月22日 3,105 5,231 2,126
2月23日 8,738 10,913 2,175

移動距離にも似た傾向が認められました。初日が少なく、2日目が突出して多く、3日目にまた落ち込み、4日目にまた増えています。たくさん歩けば、それだけ移動する距離が長くなるわけですから、理屈としては合っています。

データ3:移動距離(km)

測定日 Apple Watch Fitbit 差異
2月20日 2.56 1.80 -0.76
2月21日 10.24 10.45 0.21
2月22日 2.24 3.47 1.23
2月23日 6.88 7.25 0.37

どちらの数値が正しいかは別にして、データが推移する傾向は私自身が実際に活動した内容と一致しています。即ち、初日は筋トレのみ、2日目は筋トレ+5キロほどのジョグをし、3日目は休息日、4日目は筋トレ+高校野球の指導を行ったのです。

ちなみに、私の場合は指導と言っても、生徒たちと一緒に走ったり、紅白試合で外野を守ったりしますので、その運動量は5㎞走ったときとさほど変わりません。

エネルギー消費量

研究では最も不正確だとされたエネルギー消費量。私の実験でもApple WatchとFitbitが出した数値にはかなりの差が出ました。

データ4:エネルギー消費量(kcal)

測定日 Apple Watch Fitbit 差異
2月20日 1,602 1,532 -70
2月21日 1,886 2,220 334
2月22日 1,649 1,793 144
2月23日 1,784 2,324 540

ただし、歩数(移動距離)とデータ推移の傾向は似ています。同じ体重を移動させるのであれば、その距離が長くなる分だけエネルギーを余分に消費するというわけで、これも理屈は合っています。

もっとも、2日目や4日目に生じたApple WatchとFitbitの差異(334kcal, 540kcal)はやはり大きすぎると言わざるを得ません。

マクドナルドの公式ウェブサイトによると、通常ハンバーガーが256kcal、ビッグマックが530kcalということですので、摂取カロリーと消費カロリーのバランス収支を気にする人にとっては、昼食を抜くかどうかの判断さえ迫るほどの違いだからです。

睡眠時間

睡眠時間は上で紹介した研究では比較対象外でした。Apple Watchが睡眠データを測定し始めたのはwatchOS7(2020年リリース)以降のことだからです。Fitbitはこの分野では2010年代から先行していました。

私の実験では、Apple WatchとFitbitは他の分野と同様に、睡眠時間の長さに多少の差異はあるものの、数値が上下する傾向はほぼ似通っていました。

データ5:睡眠時間

測定日 Apple Watch Fitbit 差異
2月20日 8時間47分 8時間33分 -14分
2月21日 8時間19分 8時間32分 13分
2月22日 7時間4分 6時間45分 -19分
2月23日 9時間44分 8時間59分 -45分

心拍数と並んで、個人的には最も感心したのはこの分野です。私はけっして寝つきが良いタイプではありませんし、夜中に目を覚ますこともあります。「これから寝るよ」とか「今起きたよ」とか宣言するわけではなく、ただ手首に巻きっぱなしにしておいただけの腕時計が、一体どうやって、私が眠りに入ったことや、目を覚ましたことを認識できるのでしょう?

浅学菲才なる私にはその理論的根拠がまったく理解できませんが、Apple WatchとFitbitが測定する睡眠時間にはかなりの信憑性があるようです。

結論:数字ではなくトレンドで把握

個人で行った実験ですので、Apple WatchとFitbitの2製品しか比較はできませんでした。従って、ウェアラブル製品すべてについて言及することはできません。

それでも、これらの製品が提供してくれる健康指標には一定の信頼を置くことができると私は考えます。厳密ではなくても、傾向は示してくれるのではないかと。

気をつけなくてはならないのは、表示された数値そのものに拘らないことではないでしょうか。

もういちどスタンフォード大による別の研究(*3)を紹介しますと、実際に歩いた歩数より低い数字をウェアラブル製品が測定すると、ユーザーには自己肯定感の低下や血圧上昇といった心身の不健康に繋がる現象が起こりやすいのだそうです。

*3. Effects of Wearable Fitness Trackers and Activity Adequacy Mindsets on Affect, Behavior, and Health: Longitudinal Randomized Controlled Trial.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9909519/ 

1日1万歩、1500カロリー制限、8時間睡眠など、目標を立てるのは悪いことではありませんが、ウェアラブル製品が提供するデータの数値をその判定に使用することは避けた方がよさそうです。

●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani

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