発明家として知られるドクター中松(中松義郎)氏は、2025年7月22日に公開された集英社オンラインの記事で、堂々とこう語っています。
この記事の中でドクター中松氏は、自身がかつて発明した腕に装着する電話装置「ウデンワ」が、Apple Watchをはじめとするスマートウォッチの先駆けであると主張しています。
そこでスマートウォッチの専門メディアであるスマートウォッチライフが、この記事では「ウデンワ」について調査してみました。
ドクター中松の発明「腕電話(ウデンワ)」とは?
出典:特許第3227362号「腕電話」、中松義郎、日本国特許庁、2001年。
中松氏が「Apple Watchを発明した」と言う根拠となるのが、実際に出願・取得された特許第3227362号です。
本記事では、この特許を実際に調べてみました。
この「腕電話」は、1995年に中松義郎氏が出願した発明で、当初は特許庁から拒絶されました。
しかし2000年に不服審判を請求し、2001年7月に「特許すべき発明」として正式に認められたことが、特許審決公報(不服2000-4198)に記録されています。
つまりこの発明は、構想だけでなく、技術的にも特許として成立したウェアラブルデバイスなのです。
要点は、以下のような構成です。
発明の概要
・手首に装着できる電話装置で、通話の際に手を頬に近づけると自動的に送話口が口元、受話口が耳元に位置する構造
・時計のように装着することで、電話機の置き忘れ・紛失リスクを軽減
・操作も片手で完結し、ダイヤルボタンやディスプレイ、フリップカバーなどが備えられている
出典:特許第3227362号「腕電話」、中松義郎、日本国特許庁、2001年。
補足機能の数々
・ディスプレイに時刻を表示でき、腕時計としても使用可能
・人体の熱を利用した充電補助機能(熱電変換素子)を搭載した例も
・バッテリーパックは取り外し可能で、手首にしっかりと固定できる設計
・アンテナが内側に収まるよう配慮され、受信感度と安全性の両立を図っている
実際の特許文書で見る「Apple Watch的要素」
この発明は、現在のApple Watchやスマートウォッチ製品にも共通するコンセプトを多数内包しています。たとえば:
・ディスプレイ付きで時刻を表示する
→ Apple Watchと同様に時計機能あり
・バッテリーの持ちを改善する発熱活用
→ ウェアラブル技術における省電力化の先駆的思想
・音声通話の利便性を追求
→ watchOSの通話機能やLTEモデルの構想に通ずる
もちろん、Apple WatchはiPhoneとの連携や健康管理機能、アプリプラットフォームなどで飛躍的な発展を遂げており、「まったく別物だ」と感じる人もいるでしょう。
ただし、「腕に装着する通話機能付きの端末」というアイディア自体は、ドクター中松氏がすでに20世紀の終わりに構想・実現していたといえます。
ドクター中松=スマートウォッチの始祖?
実際にAppleがこの特許を参考にした形跡はありませんが、「同様の着想を誰よりも早く形にした」という点で、ドクター中松氏の発明には大いなる先見性があります。
科学者や起業家が、過去の発明にインスパイアされて革新を生む例は多々あります。ドクター中松氏の「ウデンワ」も、後に続くスマートウォッチ開発者たちにとって、間接的なインスピレーションとなった可能性は否定できません。
スマートウォッチが当たり前になった今だからこそ、こうした「原点」に改めて光を当てる意義があると言えるでしょう。
参考資料・リンク
「アップルウォッチの原型を発明したのは私なんです」|集英社オンライン
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)(特許検索番号:3227362)
まとめ
Apple Watchやその他のスマートウォッチが世界中で使われている今、こうした歴史的な“原型発明”にもスポットを当てることは非常に興味深いことです。
実用性、着想、先進性――どれをとっても、ドクター中松の「ウデンワ」は、まさに時代を先取りしたウェアラブルデバイスだったのかもしれません。
これからもスマートウォッチの進化を追いながら、過去の発明の“源流”にも目を向けていきたいところです。