ドコモが6980円でスマートウォッチを投入した理由
NTTドコモは2025年7月、「スマートウォッチ01」「スマートウォッチ02」の2機種をそれぞれ6,980円(税込)で発売しました。大画面モデルとコンパクトモデルという2タイプを用意し、通知機能や健康管理機能、睡眠トラッキング、100種類以上のスポーツモードなどを搭載。専用アプリを介して「dヘルスケア」と連携できる点も特徴です。
ITmedia Mobileがドコモ広報に行ったインタビューでは、発売の狙いについて「スマートウォッチ未所有層に向けた“体験機”としての役割を担わせたい」との説明がなされています。ドコモ独自調査によれば、スマートウォッチの普及率はまだ2割弱で、視認性や装着感などニーズが多様化していることから2機種展開にしたと明かしています。
auも「初心者向けモデル」を投入、その狙いとは?
au(KDDI)も2025年4月、「au Smart Watch」を発売。心拍数や血中酸素、睡眠時の呼吸数や中断回数などをモニタリングできる機能に加え、「auウェルネス」と連携することで、運動の継続に対するコインインセンティブを付与する仕組みを提供しています。
こちらも「初めてのスマートウォッチにおすすめ」との位置づけで、最大10日間のロングバッテリーやiOS/Android対応といった使いやすさが重視されています。
キャリア独自モデルの戦略的な立ち位置とは
ドコモもauも、Galaxy Watch、Apple Watch、Google Pixel Watchといった高性能なグローバルブランドのスマートウォッチをすでに正規販売しています。店舗やオンラインショップでの取り扱いがあり、ワンナンバーサービスなどの通信機能にも対応しています。
そのなかであえてオリジナルのスマートウォッチを投入する背景には、以下のような狙いが見え隠れします。
・まずは安価な入門機でスマートウォッチの魅力を体験してもらい、将来的に高性能モデルへのステップアップを促したい
・スマートウォッチ初心者やシニア層、ライトユーザーに向けた“第一歩”としての間口を広げたい
このように、キャリア各社にとってオリジナルモデルは「スマートウォッチの入り口」としての役割を担っており、自社の健康管理アプリ(dヘルスケア/auウェルネス)への導線としても機能しています。
なぜ「あえて尖らせない」端末なのか?
一方で、今回のオリジナルモデルはいずれもスペックや機能性においては高級スマートウォッチとは一線を画すベーシックな設計です。その背景には、通信キャリアが自社開発でGalaxy WatchやApple Watchのような完成度・ブランド力を超える製品をつくるのが難しいという現実もあるでしょう。
・フラッグシップ級のハードウェアを作るにはコストも時間もかかる
・自社製品で差別化しすぎると、既存のパートナー(SamsungやApple)との販売競合になりかねない
こうした事情から、あえて“特徴を抑えた”入門機にとどめることで、ラインナップの棲み分けを図っていると考えられます。
まとめ:通信キャリアのウェアラブル戦略は“入り口”と“導線”の設計がカギ
スマートフォンの飽和とライフログ市場の拡大を受け、通信キャリアも“腕元”を新たなサービス接点として注目しています。
キャリア独自のスマートウォッチは、その世界に一歩踏み込んでもらうための「体験モデル」であり、自社アプリの継続利用、ひいては高性能モデルの販売強化へとつなげる“導線”としての役割を果たしています。
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