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スマートリング市場は2025年に400万台規模へ。Omdia調査が描く「次世代ヘルスエコシステム」の姿とは

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スマートリング市場が、いま世界的に大きな注目を集めています。睡眠やストレス、体温の変化を指輪型デバイスでさりげなく計測し、アプリ側でまとめて見える化する。そんな「画面に頼らないヘルスケア体験」が、スマートウォッチやスマートバンドとは少し違う魅力として、じわじわと浸透しつつあります。

市場調査会社 Omdia が2025年11月に公開したレポート「Empowering the Health and Fitness Ecosystem with Smart Rings」は、この新しいカテゴリの現在地と今後の伸びしろを、データと分析を交えて整理したものです。本記事ではそのポイントを押さえつつ、SmartWatchLife編集部としての視点も交えながら解説していきます。

スマートリングがなぜここまで注目されているのか、スマートウォッチとは競合なのか、それとも共存するのか。そして、今後どのようにヘルスケアのエコシステムに組み込まれていくのかを、ウェアラブル初心者の方にも分かりやすく紹介します。

2025年、スマートリング市場は“400万台規模”へ

まずは、スマートリングというジャンルが「どれくらい売れているのか」を整理しておきましょう。Omdiaの推計によると、スマートリングの世界出荷台数は次のように伸びています。

・2023年:およそ85万台
・2024年:およそ180万台(前年からほぼ倍増)
・2025年上半期:すでに160万台に到達
・2025年通期予測:400万台超

まだスマートウォッチ全体と比べるとニッチな市場ではありますが、伸び率だけを見ると「ウェアラブルの中で最も勢いのあるセグメントのひとつ」になりつつあります。トレンドとしては、数年前のスマートウォッチ黎明期を思い出させるような成長カーブです。

ブランド別のシェアを見ると、2025年上半期は次のような構図です。

・Oura(オーラ):74%で圧倒的トップ
・Ultrahuman(ウルトラヒューマン):9%
・Samsung(サムスン):9%
・RingConn(リングコン):5%
・その他:Circular/Noise/boAt/Zepp など

現時点ではOuraがカテゴリー全体を牽引している状況ですが、Samsungのような大手メーカーや、新興スタートアップも着実に存在感を増しています。編集部としては、「Ouraの独壇場」から「複数ブランドが競争・協業するフェーズ」へと移っていく過渡期に差し掛かっているように見えます。

なぜ今、スマートリングがここまで伸びているのか

では、なぜスマートリングはここまで急速に拡大しているのでしょうか。Omdiaはユーザーの生活スタイルや価値観の変化に注目し、いくつかの要因を挙げています。ここでは、その中でも重要なポイントを3つに絞って紹介します。

理由1:スマホ中心生活の中で「画面を減らしたい」ニーズ

スマートフォン、PC、タブレット……私たちの生活は、すでに十分すぎるほど画面に囲まれています。Omdiaが欧州で行った調査では、「自分は画面を見すぎている」と感じている人が約半数に達しており、とくに若年層でデジタル疲労への不安が高まっているとのことです。

一方で、「睡眠の状態は知りたい」「健康管理には取り組みたい」というニーズは消えていません。このジレンマを解決してくれるのが、画面をほとんど持たないスマートリングです。リング側はひたすらデータを取り続け、ユーザーは日常の中でその存在を忘れていても構いません。必要なときだけアプリを開き、まとめて状況をチェックする――。

通知で腕を振動させて「今これを見て」と迫るスマートウォッチに対し、スマートリングは「静かに見守り、あとからまとめて教えてくれる」存在といえます。編集部の感覚としても、X(旧Twitter)やコミュニティを見ると、「通知から少し距離を取りたい」という声はここ数年で確実に増えており、スマートリングはその気持ちにフィットしていると感じます。

理由2:腕時計が苦手な人でも“24時間装着”しやすい

同じ調査では、「スマートウォッチやバンドを持っていない」と答えた人が43%おり、そのうち半数以上が「今後も購入予定はない」と回答したというデータも紹介されています。理由としては、

・時計を一日中つけていると邪魔・違和感がある
・睡眠中まで腕に何かを付けていたくない
・こまめな充電や着脱が面倒

といった声が挙げられています。

指輪は、腕時計と比べて軽く、物理的にも心理的にも「負担になりにくい」アイテムです。もともとアクセサリーとしてリングをつける習慣がある人にとって、スマートリングは「新しいガジェット」ではなく「普段の指輪を賢くしたもの」として受け入れやすい側面があります。

このため、スマートリングはこれまでウェアラブルデバイスに縁のなかった層に対し、強力な“入口”になり始めています。日本でも、「腕時計は好きじゃないが、睡眠スコアには興味がある」といった方にとって、有力な選択肢になっていく可能性が高いでしょう。

理由3:睡眠・ストレス・女性の健康など“からだの微細な変化”を捉えやすい

スマートリングは、指先の血管に近い位置でセンサーを当てられるため、皮膚温度や血流の変化を捉えるのに向いています。Omdiaのレポートでは、スマートリングが特に得意とする領域として、次のような項目が挙げられています。

・睡眠の質や睡眠ステージの分析
・ストレスや疲労度、回復状態の推定
・月経周期や排卵日・妊娠しやすいタイミングの予測
・体調不良の兆候(体温変化など)の早期検知

これらはいずれも、「毎日のデータを長期にわたって蓄積していくことで、初めて見えてくる変化」です。就寝時に外してしまいがちな腕時計と比べて、24時間つけっぱなしにしやすいリングは、こうした用途に非常に適していると言えます。

SmartWatchLifeとしても、睡眠・回復・メンタルのケアといったテーマは、日本のユーザーの関心も年々高まっている分野だと感じています。スマートリングは、従来の「歩数・カロリー中心」のガジェットから、「心と体のコンディション全体を整えるツール」へと、ウェアラブルの役割を広げていく存在になりそうです。

スマートウォッチとは“競合”ではなく“補完関係”に

「スマートリングが伸びると、スマートウォッチはいらなくなるのでは?」という疑問も出てきますが、Omdiaの見立てはむしろ逆で、両者は補完関係にあるとされています。

スマートウォッチは、心拍計測やワークアウト記録、GPSによるルートログ、通知の確認など、「日中のアクティビティ」と「コミュニケーション」に強みを持つデバイスです。一方、スマートリングは、睡眠や回復度、ストレス、体温変動といった、「じっくりと時間をかけて観察したい指標」を得意とします。

そのため、

・日中の運動・ワークアウト・通知確認 → スマートウォッチ
・夜間の睡眠・体温の変化・長期的な体調管理 → スマートリング

という役割分担が進んでいくイメージです。ユーザー側から見ると、

「ウォッチで“今日何をしたか”を把握し、リングで“最近の自分の調子”を把握する」

という二層構造が成り立ちます。これは編集部としても非常に合理的な分け方だと感じますし、実際にApple(Apple Watch+AirPods+将来的なリング)、Samsung(Galaxy Watch+Galaxy Ring)、Ultrahuman(リング+モジュール型デバイス)など、複数の企業が「複数デバイスを組み合わせたヘルスエコシステム」の構築を進めているのも印象的です。

Ouraに代表される“サブスクモデル”と、大手メーカーの揺さぶり

ビジネスモデルという観点でも、スマートリングはスマートウォッチとは少し違った顔を持っています。Omdiaのレポートによると、多くのスマートリングは「ハードウェア+月額サブスクリプション」の構成を前提としており、リングは「データを取るための入り口」、アプリとクラウドサービスが「価値を提供する本体」となっています。

その代表例が Oura です。Ouraは、

・リング本体の販売
・会員制サブスクリプション(Oura Membership)

の二本立てで事業を展開し、得られた収益をアルゴリズムやアプリの改善に継続的に投資しています。レポートでは、

・生成AIを活用したパーソナルコーチング機能
・体調変化の兆候を早期に知らせる、症状レーダーのようなツール
・ストレスマネジメントに特化した新しい指標やアドバイス

など、サブスクから得られた資金と、継続的に蓄積されるユーザーデータを生かして、ソフトウェア側の価値を高めていることが紹介されています。

ユーザー視点で見ると、使えば使うほど自分に最適化されたフィードバックが返ってくるため、サブスクを解約しにくくなる構造です。SmartWatchLifeとしても、この「データとアルゴリズムを核にしたSaaS型ヘルスサービス」という捉え方は、今後のスマートリング市場を理解するうえで重要だと感じます。

一方で、レポートは「大手テック企業が買い切り型(ワンタイム購入)のスマートリングを投入すれば、このサブスクモデルにプレッシャーがかかる可能性がある」とも指摘しています。Samsung Galaxy Ring のように、ハードウェア代のみで高度な機能を提供する製品が増えれば、ユーザーは「毎月課金する価値があるか」をより厳しく見極めるようになるでしょう。

今後数年は、

・サブスクで進化し続けるプレミアムリング
・買い切り価格で提供される大手メーカー製リング

という、ビジネスモデルの違いを軸にした競争が起こる可能性があります。

普及のカギとなる5つの課題

スマートリングには明るい成長ストーリーがある一方で、本格的なマス市場に向けてはまだ多くの課題もあります。Omdiaのレポートでは、特に次の5点が重要なテーマとして挙げられています。

1. ハードウェア制約と計測精度

リングというごく小さな筐体の中に、バッテリー・センサー・アンテナなどをすべて詰め込むのは簡単ではありません。スポーツシーンなど動きの激しい場面では、まだスマートウォッチほどのアクティビティ精度に届いていない製品も多いとされます。

ここを補うのがソフトウェアとAIです。センサーの生データそのものに依存するのではなく、統計処理や機械学習による補正を組み合わせることで、「小さなハードの限界をソフトで埋める」アプローチが今後ますます重要になると考えられます。

2. サイズ・フィット感・耐久性

指のサイズは、季節や体調によって微妙に変化します。リングがきつすぎると装着がストレスになりますし、ゆるすぎるとセンサーと皮膚がきちんと密着せず、計測精度が落ちてしまいます。サイズ展開の充実や、日常生活での当たりの少ない形状設計、コーティングや素材の工夫など、従来の「ジュエリーの開発ノウハウ」と「ウェアラブルの技術」をいかに融合させるかがポイントになりそうです。

3. 価格と“プレミアム感”のバランス

スマートリングは、現状では比較的高価格帯の製品が多く、「興味はあるけど、まずはスマートウォッチやバンドから」と考える人も少なくありません。Omdiaは、プレミアムなポジショニングを維持しつつも、

・エントリーモデルと上位モデルを分ける
・ソフトウェア機能に応じた料金体系を設計する

などによって、より多くのユーザーが手を伸ばしやすい構成を作ることが重要だと指摘しています。日本市場でも、価格と機能の“腹落ち感”は購入の大きな決め手になるため、この点は今後各ブランドの腕の見せ所になりそうです。

4. バッテリーの安心感

「週に1回充電すればいい」「充電頻度が少ない」というのはスマートリングの大きな魅力ですが、その一方でバッテリーの安全性や寿命も気になるポイントです。小型バッテリーの長寿命化・安全性向上はもちろん、「充電スタンドの使い勝手」「残量表示の分かりやすさ」なども含めて、ユーザーが不安なく“つけっぱなし”にできる体験設計が求められます。

5. データプライバシーと信頼

スマートリングが扱うのは、睡眠・心拍・体温・周期情報など、非常にセンシティブなヘルスデータです。Omdiaは、データをクラウドに保存する設計が多いことから、強固なセキュリティ対策と透明性の高いプライバシーポリシーが不可欠だとしています。

とくに新興ブランドにとっては、

・どのデータを、どの目的で利用しているのか
・どのように匿名化・保護しているのか

といった点を、ユーザーに分かりやすく伝えることが「製品のスペック以上に重要になる可能性がある」と感じます。日本のユーザーは、このあたりの情報に敏感な層も多いため、今後のプロダクト選びでは「機能」だけでなく「安心して預けられる企業かどうか」も重要な評価軸になっていくでしょう。

スマートリングがつくる“次世代ヘルスエコシステム”

Omdiaは、スマートリングを「他のウェアラブルを置き換える存在」ではなく、「エコシステムの中核を担う、もうひとつのレイヤー」として位置付けています。

スマホ、スマートウォッチ、スマートリング、ワイヤレスイヤホンなどのデバイスが連携し、そこに生成AIが加わることで、次のような体験が現実的なものになりつつあります。

・睡眠と日中の活動データの両方から、「今日は回復優先にした方がよい」といった無理のないアドバイスを出してくれる
・体温や心拍の微妙な変化から、「風邪の引き始め」や「オーバーワークの兆候」を早めに知らせてくれる
・月経周期や睡眠状態、ストレスレベルを統合し、その日の過ごし方やトレーニング強度を具体的に提案してくれる

こうした「先回りのアドバイス」が実現すると、ユーザーは初めて「自分の健康を能動的にマネジメントしている」感覚を得られるようになります。Omdiaは、スマートリングがまさにこのような“プロアクティブなヘルスオーナーシップ”の中心的な役割を担い得るとまとめています。

SmartWatchLifeとしても、ヘルスケアの主役が「単体のガジェット」から「複数デバイスとAIが連携する体験」へと移りつつあることは、ここ数年の取材のなかで強く感じているポイントです。その中でスマートリングは、もっとも“さりげなく”、しかし確実に私たちの生活に入り込んでくるレイヤーになるかもしれません。

まとめ:スマートリングは“静かな主役”になる

スマートリングは、スマートウォッチのように画面上で派手に主張するガジェットではありません。しかし、

・つけっぱなしにしやすいことで、長期のデータが溜まりやすい
・睡眠やストレス、体温変化などを得意分野として確立しつつある
・スマホやスマートウォッチと組み合わせることで、より深いインサイトを生み出せる

という意味で、ヘルスケアやフィットネスのエコシステムの中で“静かな主役”になっていく可能性があります。

日本でもスマートリングの選択肢は着実に増えています。すでにスマートウォッチを使っている方は、「睡眠と回復をより深く知るためのセカンドデバイス」として。まだどのウェアラブルも持っていない方は、「まずは生活の邪魔になりにくいウェアラブル」として。スマートリングを検討してみる価値は十分にあるでしょう。

本記事の内容は、Omdiaが公開したブログ記事「Empowering the Health and Fitness Ecosystem with Smart Rings」をベースに、SmartWatchLife編集部が独自の観点を交えて要約・再構成したものです。

Source:Omdia「Empowering the Health and Fitness Ecosystem with Smart Rings」

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