近年、「世の中の製品の多くは平均的な男性の体格に合わせて設計されている」という問題提起が、SNSやメディアで取り上げられるようになっています。
「電車のつり革に届かない」「キッチンが高すぎる」といった小さな不便は、実は社会全体の“標準”が誰を基準にしているかを映す鏡でもあります。
この“標準設計の偏り”は、実はスマートウォッチの世界にも根深く存在しています。
特にApple Watchをはじめとするスマートウォッチの替えバンドのサイズ展開において、腕の細い女性に合う選択肢があまりにも少ないのが現状です。
スマートウォッチのバンドは「ワンサイズ」や「男女兼用」がほとんど
スマートウォッチの多くは、本体購入時にバンドが1本(または大小2サイズ)付属しますが、それで「自分にぴったり合う」という人は意外と少数派。特に手首が細い女性や子ども、痩せ型の男性にとっては、どのサイズを選んでもブカブカになることが珍しくありません。
たとえば、Apple Watchのスポーツバンドは上下2パーツのうち、下のパーツだけが「S/M」「M/L」の2サイズ展開で、上のパーツは共通。
この設計自体がすでに「平均的な成人男性」前提であり、小柄な女性の腕には明らかに大きすぎる場合があるのです。
実際、当メディア編集部の女性スタッフ(特段小柄ではない標準的なスリム体型)の手首でも、「S/Mサイズ」でさえ明らかにゆるいという実例がありました。
ピッタリに見えても「ギリギリ合うレベル」なソロループ系
Apple Watchでは、サイズ展開が細かく用意された「ソロループ」や「ブレイデッドソロループ」といった伸縮素材のバンドもあります。これらは公式サイトから印刷できる測定シートを使って、自分の手首のサイズを測り、合ったサイズを購入するスタイル。
編集部員が測定したところ、サイズは最小サイズの1と2のあいだ。つまり、「既製品で用意されている最小サイズのさらに下限ギリギリ」。一般的な女性よりも極端に細いわけではない体型でもこの状況なので、多くの女性にとって「ちょうどいいサイズ」を見つけるのは困難です。
市販のバンドは「見た目は華奢」でも実は長すぎることが多い
サードパーティ製のApple Watchバンドも数多く販売されていますが、その多くはワンサイズ。見た目は華奢でも、手首の太さが140mm未満の場合、フィットしないことが多いのが実情です。
たとえばエレコム製の女性向けデザインのラインストーン入りバンドは、公式に「140~190mm対応」と書かれているものの、手首135mmの編集部員には最後まで締めても余裕ができる状態でした。
さらに、ナイロンバンドのような「折り返し調整式」のバンドでは、余ったバンドがディスプレイにかかってしまうという事態にも。
確実にフィットするのは、コマを調整できる金属製バンドか、前述のソロループのような伸縮バンドに限られるのが現状です。
スマートウォッチ本体も「女性向け」とは言いづらいサイズ感
見落とされがちですが、スマートウォッチはアナログ時計と違い、ディスプレイ搭載=本体が大型化しやすいという特性があります。
Apple Watch Series 10であれば42mmと46mmの2サイズ展開ですが、42mmでも手首が細い人には圧迫感があるという声も少なくありません。
ちなみに上の写真は40mmのApple Watchですが、腕の細い女性が着けると、大ぶりに見えますよね。
女性用として定番化しているモデルでも、本体が大きすぎて「ごつく見える」「服に引っかかる」といった課題があります。
変わりつつある市場、少しずつ進む“女性対応”
一方で近年は、スマートウォッチ市場でも女性ユーザーの増加を受けて、バンドの長さやデザインに配慮した製品も徐々に登場しています。
たとえばHUAWEIの『WATCH FIT』シリーズなどは細身のベルトと軽量な本体が特徴で、ピンク系やブルー系のカラーリングなど、女性を意識したラインナップが明らか。
こうした細身のバンド型のスマートウォッチ(スマートバンド)では、女性向けのサイズ感が意識されている印象です。
また、Apple Watchでも最近はケースカラーにベージュ系やゴールド系が採用されるなど、ユニセックスを意識した展開が進んでいます。
バンドのサイズ展開は「誰が標準か」を映す鏡
世の中の製品設計は無意識のうちに「誰の生活に最適化されているか」が反映されています。
料理をする男性が増えればキッチンの高さ設計も見直されるように、スマートウォッチを着用する女性が増えれば、バンドのサイズやデザインも変わっていくはずです。
ガジェットが「誰の手にフィットするのか」を真剣に考えることは、より多くの人にとっての使いやすさにつながります。
今後、ジェンダーや体格にかかわらず“ちょうどいい”選択肢が誰にでも用意される未来に期待したいところです。
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●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者7000人程度)でも各種レビューを行っています!
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