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スマートウォッチでも高精度で把握可能な安静時心拍数。「その数値が低い=心肺能力が高い」は誤り?

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スマートウォッチが提供してくれる様々な健康関連の情報のうち、もっとも簡単に把握でき、しかも信頼性が高いものの1つが安静時心拍数です。

スマートウォッチ上の消費カロリーやVO2maxなどの数値はアルゴリズムによる推測値ですが、心拍数はほぼ正確に計測されているという研究結果(*1)もあります。

Apple Watch等のスマートウォッチでは睡眠時の心拍数も把握可能だ

血圧やストレスレベル、または睡眠パターンなどの健康指標は体調の変化と必ずしも連動するとは限りませんが、安静時心拍数の変動を観察することによって、より客観的に自分の体調を把握することができます。

*1. Accuracy in Wrist-Worn, Sensor-Based Measurements of Heart Rate and Energy Expenditure in a Diverse Cohort.
https://www.mdpi.com/2075-4426/7/2/3

有酸素運動で安静時心拍数が低くなるメカニズム

一般的に成人の安静時心拍数は毎分60~100拍が正常な範囲だと言われていますが、それより低い数値の人も珍しくありません。

典型的な例はマラソンやトライアスロンなどの耐久系スポーツを行うアスリートたちです。彼ら彼女らの安静時心拍数は毎分30~40拍台になることも多いそうです。

有酸素運動を継続すると心臓のサイズが増大して、1回の収縮で送り出す血液の量も増えます。そのため体内で必要とされる血液の循環に必要な心臓収縮の回数が少なくて済むというわけです。安静時心拍数が低いと言うことは、最大心拍数との差が大きくなることを意味します。つまりヘトヘトになるまでの時間が長くなります。その分だけ耐久力の基になる心肺機能が高くなるとも言えます。

アスリートに限らず、普通の人でも有酸素運動を継続すれば心肺機能は高まります。それにつれて安静時心拍数の数値は下がっていくことが多いので、体調の変化やトレーニング効果を把握するには便利な指標です。

心臓も筋肉ですので、鍛えないと弱くなります。トレーニングを長期間さぼると安静時心拍数が高くなってしまうこともあります。その逆もまた然りで、使い過ぎもよくありません。オーバートレーニングの状態になって睡眠や休息が不足しているときも安静時心拍数は高くなります。

安静時心拍数は個人差に注意

ただし、安静時心拍数は個人による違いが大きく、その数値を他人と比較することにはあまり意味はありません。安静時心拍数が低ければ低いほど、よりスタミナがあるということでもありません。有名な例はアテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずきさんです。

雑誌『Number』の記事(*2)によると、野口さんの安静時心拍数は現役時代でも一般人とあまり変わらない毎分58拍だったそうです。

*2. 野口みずき「“父”と手にした相棒」~アテネ五輪金メダルの秘密~
https://number.bunshun.jp/articles/-/848678

安静時心拍数はあくまで自分の数値の変動に注目しましょう。

長期的にトレーニングを継続した結果、安静時心拍数が徐々に低下しているのであれば、望ましい効果が出ていると判断してもよいのですが、特に運動を日常的にしていない人は安静時心拍数が毎分60拍を下回る日が続いた場合は注意が必要です。

治療が必要な徐脈の症状なのかもしれません。健康な人でも徐脈を発症する場合はありますので、念のため医者に相談した方がよいでしょう。

●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookは https://www.facebook.com/WriterKakutani

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