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海外医療メディアのEMJによると、重度の精神疾患(SMI:Serious Mental Illness)を抱える米国の退役軍人を対象に行われた質的研究で、スマートウォッチをはじめとするウェアラブルデバイスが「日常生活に無理なく取り入れられ、自分の状態を知る手がかりになる」と前向きに受け止められたことが報告されました。
本記事は海外発表の研究をもとにしたもので、特定の製品レビューではなく、メンタルヘルス領域におけるウェアラブルの活用可能性に焦点を当てた内容となっています。
Source:EMJ – Wearable Devices Accepted by Patients with Serious Mental Illness
退役軍人15名がウェアラブルで症状モニタリングを試行
重度の精神疾患は症状の波が大きく、通院と通院の間隔が空きやすいうえ、身体面の合併症リスクも高いと言われています。そのため、診察日と診察日のあいだをどう橋渡しするかが、現場の医療者にとって長年の課題でした。ウェアラブルデバイスを含むモバイルヘルス技術は、その「すき間の時間」を継続的にモニタリングできる手段として注目を集めてきました。
今回の研究では、統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のいずれかと診断された人を対象に、ウェアラブルデバイスを使ううえでの「実行可能性」と「受容性」が評価されました。参加者はロサンゼルス大都市圏の退役軍人省(Greater Los Angeles VA)でケアを受けている退役軍人15名。2週間から1か月にわたりウェアラブルデバイスを装着したうえで、体験について質的インタビューに応じています。
「自分の体に意識が向くようになった」という前向きな声
研究結果からは、参加者の多くがウェアラブル型のヘルストラッカーを日常生活に違和感なく取り入れられたこと、そして自分自身のデータを医療者と共有することに価値を感じていたことが示されました。
具体的には、睡眠・心拍数・ストレス・身体活動量といった指標を計測する機能が活用されており、これらを見える化することで「自分の体調や心の状態に意識が向くようになった」「健康的な生活を送るきっかけになった」という声が挙がっています。睡眠パターンや歩数を確認したことで、もっと体を動かそう、生活リズムを整えようと意識が変わった人もいたと報告されています。
プライバシーや位置情報の追跡、医療者へのデータ共有について不安を訴える声はほとんどなく、むしろ「収集されたデータは、より良い治療判断につながる可能性がある」という肯定的な受け止めが目立ったとされています。
長期利用に向けた課題は「データの理解しづらさ」と「装着感」
一方で、長期間使い続けるうえでの障壁も浮き彫りになっています。挙げられた主な課題は、計測されたヘルスデータの意味を理解しづらいこと、ペアリングするスマートフォンアプリの操作で技術的なトラブルが起きやすいこと、そして長時間の装着による不快感などです。
また「不安感の高まりや再発の予兆といった、複雑なメンタルヘルスの症状まで、ウェアラブルで本当に拾えるのか」という疑問の声も出ています。研究チームは、追加的なテクニカルサポート、アプリ設計の改善、服薬リマインダーや気分トラッキングといった機能拡充があれば、この層にとっての使いやすさはさらに高められるだろうと指摘しています。
研究の結論と今後の展望
論文の著者らは「ウェアラブルデバイスは重度の精神疾患を抱える人々にとっても実行可能で受容性が高い手段と考えられる」と結論づけたうえで、患者自身が生成したヘルスデータを日常の臨床ケアに統合することで、実際に臨床アウトカム(治療成績)の改善につながるのかを検証するには、より大規模な研究が必要だと述べています。
引用元:Freitas AM et al. Assessing the use of wearable mobile-monitoring devices among individuals with serious mental illness: qualitative acceptability and feasibility study. J Med Internet Res. 2026;28:e85087. DOI:10.2196/85087.
まとめ:ウェアラブルは「メンタルヘルスの伴走者」になり得るか
今回紹介した研究は、Apple WatchやGarmin、スマートリングといった一般向けウェアラブルが、メンタル領域でも「日常に置いておける小さな相棒」になり得る可能性を示唆しています。睡眠・心拍・活動量といった指標は、本来は身体の健康のために設計されたものですが、自分の状態を客観的に振り返るきっかけになるという点では、心の健康にも関わってくる情報です。
もちろん、ウェアラブルが医療の代替になるわけではなく、専門医の診察やカウンセリングが必要な場面は変わりません。それでも、診察と診察のあいだの「見えない時間」をやさしく可視化してくれるツールが、これからますます私たちの生活に身近になっていきそうです。
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