キッズスマートウォッチ市場は10年で約3倍へ|2035年に約332億ドル、年率約12%成長との予測【調査レポート】

NEWS

公開日:

床の赤いハート型紙に手を添えて見上げる男の子

子ども向けのスマートウォッチ——GPSで居場所がわかり、通話やメッセージで連絡が取れ、けれどSNSや自由なネット接続はできない。そんな「見守り+連絡」に特化したウェアラブルの市場が、これから10年で大きく伸びるという予測が公表されました。

市場調査会社のSNS Insiderによると、世界のキッズスマートウォッチ市場は2025年の約107億ドル(1ドル150円換算で約1.6兆円)から、2035年には約332億ドル(約5兆円)へと拡大し、2026〜2035年の年平均成長率(CAGR)は約12%(11.96%)になる見通しです。数字はあくまで一調査会社の予測ですが、その内訳には「今どきの子育て」の変化がよく表れています。

市場規模は10年で約3倍へ。「スマホより安全な連絡手段」という需要

予測の背景にあるのは、「幼い子にスマホを持たせる代わりに、目的を絞った専用ウォッチを選ぶ」という親の選択の広がりです。キッズスマートウォッチは、GPSによる居場所確認、通話、ビデオ通話、緊急時のSOSといった安全・連絡機能を備える一方、SNSや自由なインターネットには触れさせない設計になっています。

SNS Insiderは、家族のつながりを保ちつつスマホの弊害を避けたいというニーズが、こうした端末を「家族のコミュニケーション基盤」の一部に押し上げていると指摘します。加えて、部品コストの低下や通信網の普及で、高機能モデルが先進国だけでなく新興国でも買いやすくなり、価格帯の異なる多様なモデルが登場していることも、市場拡大の後押しになっているとしています。

数字が映す需要の中身

レポートは市場を複数の切り口で分解しています(いずれも2025年時点の構成比予測)。

タイプ別:一体型(セルラー内蔵)が約58.2%。通信・GPS・SOSを1台で完結できる点が支持され主流に。一方、軽量・低価格を保ちながら機能を高めるスタンドアロン型が今後の最速成長と予測
接続別:Wi-Fi対応が約30.2%で、手頃さと連絡・学習アプリ対応が理由。年長の子向けにNFC(タッチ決済・認証)対応が急成長カテゴリとして台頭
販売チャネル別:オンライン販売が約57.2%。比較・レビュー・価格の見やすさからEC中心。ただし装着感や品質を確かめられる実店舗も引き続き重要
バンド素材別:シリコンが約51.8%。丈夫で快適、子どもの日常使いに向くため多数派

「一体型が主流だが、軽量・安価なスタンドアロン型が伸びる」「決済機能付きが年長の子に広がる」という構図は、子どもの成長段階に合わせて選択肢が枝分かれしていることを示しています。

教育とデジタルウェルネスが商品開発の主戦場に

メーカー各社が競って強化しているのが、教育機能デジタルウェルネス(健全なデジタル習慣)です。AIを使った学習アプリ、語学ツール、知育コンテンツやゲームによって、ウォッチは「連絡端末」から「学びの道具」へと役割を広げつつあります。

同時に、子どものデジタル依存への懸念から、保護者による管理機能、安全な通話相手の制限、使えるアプリを絞る仕組み、利用時間のコントロールといった“守り”の機能も重視されています。活動量・睡眠の記録や水分補給リマインダーなど、家族全体のウェルネス端末としての側面も訴求ポイントになっています。

市場を牽引するのはアジア太平洋。中国だけで域内の半分

地域別では、アジア太平洋が最大かつ最速で成長する市場とされ、所得の向上、都市化、家電の生産力、見守り技術の普及がその理由です。なかでも中国1国でアジア太平洋の売上の約52.4%を占めると見込まれています。北米も、保護者の意識の高さやGPS見守り機器の普及を背景に主要市場であり続けるとされます。

レポートが挙げる主なプレーヤーには、Garmin、Huawei、VTech、TickTalk、Xplora、LG、Verizon、Tencent、Qihoo 360などが並びます。日本でも知られるブランドから、海外の見守りウォッチ専業メーカーまで幅広い顔ぶれです。

SWL編集部の見立て:数字は「予測」として幅を持って。日本では“キッズケータイ文化”との違いも

まず押さえておきたいのは、この332億ドルという数字が調査会社1社による10年先の予測だという点です。市場規模やCAGRは前提の置き方で大きく変わるため、断定ではなく「こういう方向に伸びるという見立て」として受け止めるのが妥当でしょう。とはいえ「スマホの前段階として、安全に絞った子ども向けウォッチを選ぶ」という流れ自体は、実感に合う説得力のある指摘です。

日本に目を向けると、この分野は世界とは少し事情が異なります。国内では見守り端末としてキャリアのキッズケータイや、ランドセルに入れるGPS発信機が根強く、腕時計型が主役とは言い切れません。海外で伸びるキッズスマートウォッチが、日本の子育て文化にどうなじんでいくかは注目どころです。

そしてもう一つ、教育・健康を売りにする一方で、子ども向けウォッチが新たな“依存”や競争を生む影の側面も見落とせません。実際に中国では、子ども向けスマートウォッチのSNS機能をめぐって社会問題が起きています。市場が伸びるほど、機能の魅力と使わせ方の設計は、親と社会がセットで考えるべきテーマになりそうです。

Source:SNS Insider「Kids Smartwatch Market」プレスリリース(2026年7月20日)

あわせて読みたい関連記事

市場が拡大する一方で、子ども向けウォッチが引き起こしうる問題を象徴する事例です。
子ども向けスマートウォッチで「1日6時間いいね稼ぎ」。中国で起きている危険な社会問題とは?

日本の“見守り端末”を代表する、腕時計型キッズケータイの一例です。
見た目はスマートウォッチ!? ドコモの「キッズケータイ コンパクト SK-41D」に注目

キッズ市場と対照的に「買い替え疲れ」が指摘される、ウェアラブル全体の市場予測もあわせてどうぞ。
2026年のウェアラブル市場は3%減へ|スマートウォッチは「買い替え疲れ」で4%減、スマートリングは53%増と明暗くっきり

 はじめての方・記事の探し方に迷った方へ
記事が多くて迷ったら、 記事の探し方ガイド から目的別に読めます。

※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。
     

関連記事