スマートウォッチの睡眠データはどう読む? 厚生労働省「睡眠ガイド2023」と照らし合わせる

スマートウォッチの使い方、基礎知識

公開日: 最終更新日:

スマートウォッチを着けて眠れば、睡眠時間も睡眠ステージも自動で記録されます。ただ、翌朝その画面を開いて「で、この数字はどうなの?」と手が止まったことはないでしょうか。

判断の物差しになるのが、厚生労働省が2024年2月に公表した健康づくりのための睡眠ガイド2023です。国が「良い睡眠とは何か」を定義し、年代別に具体的な目安を示したもので、スマートウォッチが記録する数値はここに突き合わせて初めて意味を持ちます。

この記事では、手元のデータをガイドの推奨事項と照らしながら読み解いていきます。

厚生労働省は「良い睡眠」を2つの軸で定義している

ベッドで眠る人のイメージ。良い睡眠は量と質の両面から評価される

まず押さえておきたいのが、ガイドが良い睡眠を「量」と「質」の2軸で捉えている点です。ガイドにはこう書かれています。

睡眠時間が睡眠の量を反映する指標であるとすれば、睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)は、睡眠の質を反映する指標といえます。

つまり、量は睡眠時間、質は睡眠休養感。ここでスマートウォッチの立ち位置がはっきりします。

スマートウォッチが得意なのは、圧倒的に「量」の側です。何時に眠り、何時間眠ったかを毎晩自動で積み上げてくれます。一方の睡眠休養感は「朝起きたときに休まった感じがするか」という主観なので、センサーで測れるものではありません。

数値だけを見ても、休養感だけを頼りにしても、片側しか見ていないことになります。スマートウォッチが出した時間と、自分の朝の感覚。この2つを並べて眺めるのが、ガイドに沿った見方ということになります。

年代別の目安と、自分の記録を突き合わせる

ガイドは推奨事項を「成人」「こども」「高齢者」の3つに分けて示しています。スマートウォッチの週平均や月平均と比べるなら、この数字が基準になります。

対象 睡眠ガイド2023の推奨
成人 個人差はあるが、6時間以上を目安に睡眠時間を確保する
小学生 9〜12時間を参考に確保する
中学生・高校生 8〜10時間を参考に確保する
高齢者 床上時間が8時間以上にならないことを目安にする

成人の「6時間以上」は、いちばん引き合いに出しやすい数字でしょう。スマートウォッチの週平均がここを下回っているなら、それは主観の問題ではなく、量が足りていないという話になります。

注意したいのが高齢者の項目です。ここだけ「長く寝ましょう」ではなく「長く床にいすぎないように」という方向を向いています。ガイドは、長い床上時間が健康リスクになるとしたうえで、日中の長時間の昼寝を避けて活動的に過ごすことも推奨しています。年代によって、目指す方向そのものが変わるわけです。

「布団にいた時間」と「実際に眠っていた時間」は違う

Apple Watchが計測した睡眠時間の画面。就寝と起床の時刻、実際に眠っていた時間が表示されている

編集部員がApple Watchで記録した1晩ぶんの睡眠時間の画面

ここが、スマートウォッチを使う意味がいちばんはっきり出るところです。

先ほどの高齢者向けの推奨に「床上時間」という言葉が出てきました。これは寝床にいた時間のことで、実際に眠っていた時間とは別物です。布団に入ってから寝つくまでの時間も、夜中に目が覚めていた時間も、床上時間には含まれます。

そして厚生労働省は、自己申告の限界についてはっきり書いています。

自覚する睡眠時間は床上時間を反映しやすく、やや不正確である可能性があることを知っておく必要があります。

「昨日は7時間寝た」と思っていても、それは布団にいた時間を答えているだけかもしれない、ということです。しかも高齢世代では、この主観と客観のずれ自体が健康状態を予測する目安になりうる、とも指摘されています。

この穴を埋められるのが、まさにスマートウォッチです。寝床にいた時間と実際に眠っていた時間を切り分けて記録してくれるので、「思っていたより眠れていなかった」というズレに気づけます。両者の差が小さいほど効率よく眠れている、という見方もできます。

厚生労働省は簡易計測機器をどう評価しているか

スマートウォッチを着けたまま就寝する様子。翌朝に睡眠データを確認できる

では、国はスマートウォッチのような機器をどう見ているのでしょうか。ガイドには次の一節があります。

現時点では、安価で購入可能な機器においては、計測精度の高さは十分とは言い難いかもしれませんが、こうした簡易機器を用いて自分自身で睡眠を管理することができる時代が近づいていると思われます。

期待と限界を両方はっきり書いているのが、この文章の誠実なところだと思います。精度は手放しで信頼できるものではない。けれど自分で睡眠を管理する道具としては近づいている。過信もせず、否定もしない。この温度感が、ちょうど使う側の心構えとしても適切です。

ガイドは別の箇所で、ウェアラブル端末の普及を踏まえ、睡眠の客観的な把握にデジタル技術を活用していくことの重要性にも触れています。方向としては前向きに捉えられています。

睡眠ステージは何を見て判定しているのか

Apple Watchの睡眠アプリAutoSleepが表示した睡眠ステージのグラフ。軽い睡眠と深い睡眠が色分けされている

編集部員がApple Watch用アプリ「AutoSleep」で記録した画面。眠りの深さが段階ごとに色分けされる

多くのスマートウォッチは、眠りを「レム睡眠」「深い睡眠」といった段階に分けて表示します。この段階そのものは、厚生労働省の健康用語辞典にも項目があります。

レム睡眠は急速眼球運動と骨格筋活動の低下を特徴とする段階で、夢をよく見る時間帯とされています。ノンレム睡眠は睡眠の深さによってさらに4段階に分けられると定義されています。

ここで見落とせないのが、辞典がどちらの語についても「睡眠脳波から判別され」と書いていることです。本来この判定は、頭に電極を付けて脳波を測って行うものだということです。

対してスマートウォッチは、手首の動きを捉える加速度センサーと、心拍センサー、そして心拍の間隔のゆらぎ(心拍変動)などを組み合わせて段階を推定しています。脳波は見ていません。

仕組みが違う以上、医療機関の検査と完全に一致するわけではありません。機種によって同じ夜の判定が食い違うことがあるのも、それぞれ独自のアルゴリズムで推定しているからです。段階ごとの分数を1分単位で真に受けるより、週単位・月単位の傾向として眺めるほうが、この道具の性格に合っています。

データを生活習慣に結びつける

記録を眺めるだけで終わらせず、原因の側に手をつけるところまで進めたいところです。ガイドには、睡眠に影響する生活習慣について具体的な数字が並んでいます。

・カフェインは1日400mg(コーヒーで700cc程度)を超えると夜眠りにくくなる可能性があり、特に夕方以降の摂取は影響しやすい
・晩酌での深酒や、眠るために飲むお酒(寝酒)は睡眠の質を悪化させる可能性がある
・喫煙も睡眠の質を悪化させる可能性がある
・運動は1日のどの時間に行っても睡眠の質を改善するが、就寝前1時間以内の激しい運動は逆に質を下げる可能性がある

運動の項目は、スマートウォッチと相性が良いところです。ワークアウトの記録が時刻付きで残っているので、「夜遅くに追い込んだ日の睡眠がどうだったか」を後から突き合わせられます。カフェインやお酒は自分で記録する必要がありますが、就寝時刻や中途覚醒の記録と並べれば、心当たりは見えてきます。

朝の光と体内時計の関係についても、ガイドは繰り返し触れています。起床後から日中はできるだけ明るい光を浴び、就寝前はブルーライトを含む明るい光を避けることが良い睡眠につながる、という整理です。

数値が良くならないときに考えること

生活習慣を見直しても改善しない場合について、ガイドは次のように書いています。

睡眠時間を十分確保しているにもかかわらず睡眠休養感が低下した場合、医療機関などで原因を詳しく調べてもらう必要があります。

量は足りているのに休養感がない。これは生活習慣の問題ではなく、背後に睡眠障害が隠れている可能性を示すサインだということです。

代表的なものが睡眠時無呼吸症候群で、辞典では「眠り出すと呼吸が止まってしまうため、過眠や高血圧などを引き起こす病気」と説明されています。いびきや日中の強い眠気が続くようなら、スマートウォッチの数値を自分で解釈しようとせず、医療機関に相談するのが確実です。

スマートウォッチは受診のきっかけを作る道具にはなりますが、診断の代わりにはなりません。ここは切り分けておきたいところです。

まとめ

スマートウォッチの睡眠データは、単体で眺めても良し悪しを判断できません。厚生労働省の睡眠ガイド2023という物差しに当てて初めて、「足りているのか」「どこを直すのか」が見えてきます。

・良い睡眠は「量(睡眠時間)」と「質(睡眠休養感)」の2軸。数値と朝の感覚を並べて見る
・成人は6時間以上が目安。高齢者は逆に床上時間が8時間を超えないように
・自己申告の睡眠時間は不正確になりやすい。そのズレを埋められるのがスマートウォッチの強み
・国も精度には留保を付けている。1日の数字ではなく傾向として読む
・量が足りているのに休養感がないときは、医療機関へ

数字に振り回されるのではなく、自分の睡眠を考えるきっかけとして使う。それがいちばん健全な付き合い方だと思います。

出典: 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」厚生労働省 e-ヘルスネット 健康用語辞典

あわせて読みたい関連記事

睡眠計測をもっと深く知りたい方へ。目的別に役立つ記事をまとめました。

Apple Watchが表示する4つの睡眠ステージを、1つずつ詳しく知りたい方はこちら。

Apple Watchでわかる「4つの睡眠ステージ」とは? 覚醒・レム睡眠・コア睡眠・深い睡眠を正しく理解する

スマホのアプリでの計測と何がどう違うのか、センサーの観点から整理しています。

スマホとスマートウォッチの睡眠計測、何が違う?センサーと計測精度の違いを徹底解説!

睡眠を含むさまざまな計測を支えるセンサーの役割はこちらに。

スマートウォッチは心拍・歩数・高度をどう測る?主要センサー6種をやさしく整理

睡眠中の呼吸数という、もうひとつの手がかりについて。

【睡眠時の呼吸数の正常値】Apple Watchで自動計測される呼吸数の見方・目安・グラフの読み方を解説

足りない睡眠の蓄積を「睡眠負債」として見える化する使い方も。

Apple Watchで「睡眠負債」を見える化! AutoSleepなどのアプリで睡眠の質を改善しよう


●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者8000人程度)でも各種レビューを行っています!

 はじめての方・記事の探し方に迷った方へ
記事が多くて迷ったら、 記事の探し方ガイド から目的別に読めます。

※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。
     

関連記事