スマートリングは「コンピュータ」になるのか? Ultrahumanが7,000万ドル調達、クアルコムが出資して指輪でソフトを動かす構想【海外ニュース】

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スマートリングの写真

スマートリングを「測る道具」から「動かす道具」へ変えようとしている会社があります。

TechCrunchが2026年9月4日、インドのスマートリングメーカーUltrahuman(ウルトラヒューマン)が7,000万ドル(1ドル150円換算で約105億円)を調達したと報じました。出資者にはクアルコムのベンチャー部門であるQualcomm Venturesが名を連ねています。

そして狙いは、単なる資金集めではありません。指輪の中でソフトウェアを動かし、健康管理の枠を超えて使うという構想です。順に見ていきます。

クアルコムが入った7,000万ドルの調達

今回のラウンドの内訳は、株式による調達が6,500万ドル、負債による調達が500万ドルです。

参加したのはQualcomm Venturesのほか、米国の臨床検査大手Labcorp、Alpha Wave、Blume Ventures、Nexus Venture Partners、Alteria Capitalです。関係者の話として、評価額は3億6,500万ドル(約550億円)で、2023年時点の1億2,000万ドルからおよそ3倍になったと伝えられています。

本拠地はインドのベンガルールで、創業は2019年。創業者はモヒト・クマール氏とヴァツァル・シンハル氏の2人です。もともとは持続グルコースモニターから始まった会社で、その後スマートリングが主力になりました。

「いまの指輪はトラッカーにすぎない」

資金よりも重要なのは、クアルコムとの関係の中身です。

Ultrahumanはクアルコムと組み、同社のシリコンを使った新しいリングを開発しているとクマール氏はTechCrunchに語っています。現行モデルはNordic Semiconductor製のチップを使っており、今後もこれは併用する方針です。

処理能力が増えることで、より多くのソフトウェアとアルゴリズムを指輪の中で直接動かせるようになるとされています。スマートフォンやクラウドへの依存が減る、ということです。

クマール氏の言葉が分かりやすいので引用します。

「いまのリング型デバイスはどれもトラッカーのようなものです。指にはめると、心拍数、動き、睡眠を測ってくれる」

そのうえで同氏は、プログラムやアルゴリズムが本体の中で動く「コンピュータ」に近いものにしたいと述べています。

ポインタ、ゲームコントローラー、車の鍵

コンピュータになると何ができるのか。挙がっているのは次のような使い方です。

開発者が自分でプログラムを書けるようにすること。指輪をポインタやマウスとして使うこと。ゲームのコントローラーにすること。車の鍵にすること。そしてAIとやり取りするための窓口にすること。

Qualcomm Venturesのグローバル責任者であるクイン・リー氏は「AIの未来は、パーソナルで、環境に溶け込んでいて、常時オンになっている」と述べ、Ultrahumanが新世代の「パーソナルAIデバイス」を作っていると評しています。

チップメーカーの側から見ると、スマートフォンの次に置くものを探している、という文脈も読み取れます。

9月中に、いまあるモデルへ届く

新しいハードウェアを待つ必要はありません。

クマール氏によれば、9月末までのソフトウェア更新で、既存のRing AirとRing Proに一部の機能が届くとのことです。含まれるのはゲームコントローラーとして動く機能と、AIアプリとやり取りする機能。あわせて第三者の開発者が新しい機能を作れるようにする仕組みも入ります。

日本ではRing AIRがコストコやAmazonで流通しています。すでに持っている人の指輪が、ソフトウェアだけで別の役割を持ち始めるかもしれない、という話になります。

なぜ手首ではなく、指なのか

Ultrahuman Ring AIRを指にはめた状態。幅の広いリングが人差し指に収まっている。

指という位置をどう生かすか。写真はUltrahuman Ring AIRを実際に使ったときのものです。

Ultrahumanの主張の中で、いちばん面白いのはここだと思います。

クマール氏はスマートウォッチを「手首の上のスマートフォン」に近いものだと表現しています。それに対して指輪は、指という位置を生かして精密なポインティングと操作のデバイスになれる。しかも同時に、心拍数、体温、動きといった身体の状態を持ち歩いている、というわけです。

「ゲームのコントローラーは、あなたの心拍数も体温も読み取りません。でもこれは読み取ります」

同氏はここから、プレイヤーの動きだけでなく、心拍数や体温にも反応するゲームを構想しています。コントローラーであり、同時に身体のセンサーでもある、という位置づけです。

指先は、腕時計より細かい動きを拾える場所です。この方向は理屈としては通っています。実際に使い物になるかは、9月の更新が最初の答え合わせになります。

数字で見るUltrahuman

構想の話が続きましたが、足元の事業も伸びています。

年間の収益ペース(ARR)は現在1億4,000万ドル(約210億円)で、1年前からおよそ45%増。2027年1月までに2億ドル(約300億円)に届くと見込んでいます。

リングの累計販売数は約80万本で、2026年2月時点の約70万本から増えました。ユーザーの約12%が、同社のサブスクリプション型ソフトウェア機能「PowerPlugs」に課金しているとのことです。

売上の構成では、この四半期の約45%が米国、約11%がインドとなっています。

一方で、店舗などのオフライン拠点、ブランド、臨床研究への投資が増えたため、今年は黒字にならない可能性があるとクマール氏は認めています。調達した資金の一部は、インドとアラブ首長国連邦での展開強化に充てられます。実店舗のような接点が販売につながることが分かってきたためだそうです。

Ouraとの特許紛争で、米国を一度離れていた

順風満帆というわけではありませんでした。

米国は同社の最大市場ですが、Ouraとの特許紛争を受けて、過去1年の大半にわたりRing AIRの米国販売を停止していました。今年になって設計を見直したRing Proで市場に戻っています。

そして戻ってみると、需要は供給できる量の18〜20倍で推移しているとのことです。クマール氏は、早ければ次の四半期に以前の販売量まで戻し、その後の4四半期でさらに3倍にすることを目指すとしています。

スマートリングの市場そのものは伸びています。2026年のウェアラブル市場はスマートウォッチが4%減となる一方、スマートリングは53%増という予測も出ていました。

Labcorpと組んで、血液検査とつなぐ

今回の出資者にLabcorpが入っているのも見どころです。

両社は、指輪が捉える血流の信号と、血液検査のデータを組み合わせることで、循環器の健康、妊娠しやすさ、老化といった領域の健康リスクを見つけられないかを検討しているとされています。

Labcorpのベンチャーファンド責任者であるミーガン・ヴォーン・ワッターズ氏は「長期にわたるウェアラブルのデータと、より深い生物学的な信号を組み合わせることで、Ultrahumanは個別化された健康の分野に新しい機会を作っている」とコメントしています。

将来的には製品への統合につながる可能性があるとされますが、詳細は明かされていません。

ウェアラブルの数字がどこまで信頼できるかについては、測定値と推定値を切り分けたレビュー論文を先日紹介しました。血液検査という別系統のデータと突き合わせる発想は、その課題への一つの答えでもあります。

IPOは早くても2028年

競合との違いが出ているのが上場の時期です。

OuraはSECへの秘密申請を済ませており、160億ドル(約2兆4,000億円)を超える評価額で9月の上場を狙っていると報じられています。

対してUltrahumanは、まだ先です。クマール氏はおよそ8四半期にわたって黒字を示してから上場したいとしており、その実績を作るのに8〜10四半期かかると見ています。早くても2028年、という見立てです。

急いで上場するより、収益性を証明してからにする。今年の赤字見込みを認めたうえでの発言なので、一貫はしています。

まとめ

整理すると、こうなります。

Ultrahumanは7,000万ドルを調達し、クアルコムのベンチャー部門が出資しました。評価額は3億6,500万ドルで、2023年の約3倍です。クアルコムのシリコンを使う新型リングを開発中で、指輪の中でソフトウェアを動かす方向に舵を切ろうとしています。

9月末までのソフトウェア更新で、既存のRing AirとRing Proがゲームコントローラーになり、AIアプリとつながり、第三者の開発者に開かれます。

スマートリングは長らく「寝ている間に測るもの」でした。それを起きている間に使うものに変えられるかどうかが、この投資の賭けている部分だと思います。

Galaxy Ring 2やGarminの動きも含めて、スマートリングは各社が次の一手を探している段階です。9月の更新がどう仕上がるかは、注目しておきたいところです。

Source: TechCrunch(Yahoo Finance掲載)/画像: 編集部撮影

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