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WHOOPが火をつけた革命――スマートウォッチの「画面なし」モデル流行の源流とは

コラム・業界分析

公開日: 最終更新日:

スマートウォッチといえば、手首の画面で通知を確認したり、アプリを操作したりするもの――。多くの人がそんなイメージを持っているのではないでしょうか。ところが最近、あえて画面を持たない「スマートバンド」が、ウェアラブル市場で大きな存在感を放ち始めています。その流れを作ったのが、アメリカ発のブランド「WHOOP」です。

2024年にはサッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドがWHOOPに投資しアンバサダーに就任。そして2026年に入り、Fitbit、Garmin、POLARといった大手ブランドが相次いで画面なしのバンド型デバイスを発表・準備しています。いまウェアラブル市場で何が起きているのか。WHOOPが切り拓いた「画面なし」の思想と、その波に乗る各社の動きを整理してみたいと思います。

なお画面なしモデルで日本で入手可能なものは、下記の記事で紹介しています。

スマートウォッチに”画面なし”モデルが広がっている。静かに進化する次世代ウェアラブル【2026年版】

Image source: WHOOP 

WHOOPとは何か――ハーバード発、画面を捨てたウェアラブル

WHOOPは2012年、ハーバード大学在学中のウィル・アーメドによって創業されました。米国マサチューセッツ州ボストンに本社を置く同社は、2015年に最初のデバイスを発売。そのコンセプトは当時のウェアラブル市場の常識とは大きく異なるものでした。画面がないのです。

一般的なスマートウォッチやフィットネスバンドが「手首の小さなスマホ」を目指していた時代に、WHOOPは画面を一切排除しました。時間を確認することも、メッセージを受け取ることも、決済をすることもできない。言わば「センサーが付いたリストバンド」です。その理由はシンプルで、「身体のデータを24時間365日、意識せずに計測し続けること」に全振りしたかったからです。24時間装着することで心拍数の変動、安静時の心拍数、呼吸数、睡眠の質、回復度(リカバリー)、身体への負荷(ストレイン)といったデータを高い精度で計測し続けます。

このアプローチは、プロアスリートやシリアスなフィットネス愛好家の間で熱狂的な支持を集めました。Apple WatchやFitbitといったスマートウォッチのユーザーの中にも、運動や健康に関するデータのみを必要として、他の機能にはあまり興味がない層は一定数います。そのような人たちにとって、「画面がない」ことは欠点ではなく、むしろ「デジタル通知に邪魔されず、身体と向き合うための設計思想」として評価されたのです。

ハードウェア無料のサブスクリプション・モデル

WHOOPがもうひとつ注目を集めた理由が、そのユニークな販売形態です。いわゆるサブスクリプション方式で、ユーザーは月々の利用料を払う代わりに、ハードウェアは無料で受け取る仕組みになっています。新バージョンが出ても、既存メンバーには追加費用なしで新しいデバイスが届けられます。

2021年に発売された「WHOOP 4.0」では、前バージョン(3.0)よりサイズが33%も小さくなりました。その裏には、シリコンバレーのSila Nanotechnology社が開発した新世代バッテリー技術がありました。従来のリチウムイオン・バッテリーより小さなサイズではるかに長持ちするこの技術を、初めて商品化製品に利用したのがWHOOP 4.0だったのです。結果としてフル充電から5日間連続使用が可能になり、テクノロジー系メディアはもちろん、Forbesのような大手メディアも大きく取り上げました。(当サイトでも2021年にWHOOP 4.0の詳細レポートを掲載しています。)

ロナウドの参画が示した「リカバリー市場」の巨大さ

WHOOPの存在感を決定づけた出来事のひとつが、2024年5月のクリスティアーノ・ロナウドとの提携です。ロナウドはWHOOPへの投資を行うとともに、グローバルアンバサダーに就任しました。

39歳(当時)を過ぎてもトップレベルのパフォーマンスを維持し続けるロナウドにとって、リカバリーの管理は競技生活の根幹に関わるテーマです。世界で最も知名度の高いアスリートが「画面のないウェアラブル」を選んだという事実は、リカバリー重視のウェアラブル市場がニッチではなく、巨大なポテンシャルを持つ領域であることを業界全体に印象づけました。

WHOOPは日本で買えるのか――2026年現在の状況

ここまで読んで「WHOOPを使ってみたい」と思った方もいるかもしれません。しかし2026年4月現在、WHOOPは日本市場に公式上陸していません。入手するには海外の公式サイトからの直接購入や並行輸入に頼る必要があります。
日本展開が進んでいない主な理由として、アプリの日本語ローカライズが完了していないことが挙げられます。WHOOPのアプリは一部日本語に対応しているものの、完全な日本語化には至っておらず、本格参入に向けた準備段階にあると見られています。また、WHOOPが備える医療グレードに近い健康計測機能について、日本独自の規制基準への対応が必要になることも、展開を遅らせている要因のひとつでしょう。
とはいえ、日本国内でも健康意識の高いユーザーを中心にWHOOPの評判は口コミで広がりつつあります。後述するPOLAR Loopのように日本市場を明確に視野に入れたブランドも出てきていることから、リカバリー系ウェアラブルへの需要は確実に存在しています。WHOOPの日本本格展開も、時間の問題なのかもしれません。

大手が相次いで参入――Fitbit Air、Garmin CIRQA、POLAR Loop

Fitbit Air――ステフィン・カリーを起用した新路線

2026年4月、FitbitがNBAスターのステフィン・カリーを起用したティザー映像を公開し、新型デバイスの存在を予告しました。リーク情報では「Fitbit Air」という名称が浮上しています。

Fitbitはもともとフィットネストラッカーの先駆者として知られ、歩数計測や心拍数モニタリングの普及に大きく貢献したブランドです。Google傘下に入ってからはPixel Watchシリーズに注力していましたが、ここにきてバンド型の新製品を投入する動きを見せています。カリーの起用からも、アスリートのパフォーマンス管理やリカバリーを意識した方向性がうかがえます。

【あわせて読みたい】Googleの画面なしFitbitバンド、製品名は「Fitbit Air」か。サブスクは「Google Health」に刷新の可能性

Garmin CIRQA――サブスクモデルの可能性

同じく2026年4月には、Garminが「CIRQA」という商標を登録していたことが判明しました。発売時期は2026年5~6月頃と予想されており、WHOOPと同様のサブスクリプション(月額課金)モデルを採用するのではないかという見方も出ています。

Garminといえば、GPSスポーツウォッチの王者として、ランナーやトライアスリートから圧倒的な支持を得ているブランドです。高精度なセンサー技術と豊富なトレーニングデータの蓄積を持つGarminが画面なしのバンド型デバイスに参入するとなれば、リカバリー系ウェアラブルの市場に大きなインパクトをもたらすことは間違いありません。

POLAR Loop――老舗の復帰

心拍計の老舗ブランドであるPOLARも、2025年11月に「POLAR Loop」を発表しました。日本向けのプレスリリースも配信されており、日本市場への展開も視野に入っています。

POLARは心拍計測の分野で40年以上の歴史を持つブランドであり、かつて「POLAR Loop」という名称のアクティビティトラッカーを販売していた時期もあります。その名称を再び採用し、リカバリーやヘルスケアに特化した新デバイスとして投入する判断は、まさにWHOOPが証明した市場の存在を追認するものと言えるでしょう。

【あわせて読みたい】ポラールのスクリーンレス健康バンド「POLAR Loop」が一般発売。Makuakeで1801%達成の注目モデル

ウェアラブル市場は「二極化」の時代へ

こうした動きを俯瞰すると、ウェアラブル市場がはっきりと二つの方向に分岐しつつあることが見えてきます。

ひとつは「通知中心」の方向です。Apple WatchやGoogle Pixel Watchに代表されるように、スマートフォンの通知を手首で受け取り、決済やアプリ操作まで行える「手首の情報端末」としての進化を続ける路線です。

もうひとつが「リカバリー中心」の方向です。WHOOPが確立したこの路線は、画面を持たず、通知機能を排し、ひたすら身体データの計測と分析に集中します。ユーザーが求めているのは「画面を見ること」ではなく、「自分の身体の状態を正確に知ること」であるという考え方がベースにあります。

注目すべきは、この二極化が単なるデバイスの違いにとどまらないという点です。通知中心のデバイスが「ハードウェアの販売」を軸にしたビジネスモデルであるのに対し、リカバリー中心のデバイスはWHOOPのように「ハードウェア無料+サブスクリプション」を収益の柱に据える傾向があります。Garmin CIRQAにもサブスクモデルの採用が予想されていることから、この流れはさらに広がりそうです。

WHOOPが変えたのは「デバイスの形」ではなく「問いの立て方」

WHOOPが本当に変えたのは、スマートバンドの形状やスペックではなく、ウェアラブルに対する問いの立て方そのものだったのかもしれません。

「手首でできることを増やす」のか、それとも「手首で”気づける”ことを深める」のか。前者の競争がApple Watchを頂点に成熟しつつあるなかで、後者の領域にはまだ大きな成長余地が残されています。Fitbit、Garmin、POLARという実績あるブランドが揃ってこの領域に参入し始めたという事実が、その余地の大きさを物語っています。

スマートウォッチを選ぶ際に「何を画面に表示するか」だけでなく、「そもそも画面は必要なのか」という問いが当たり前になる日は、そう遠くないのかもしれません。

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Google Fitbit Air を実際に数日使い込んだ感触は【実機レビュー】Google Fitbit Air×Google Health コーチで体験した、データを「対話する」新しいウェアラブルでレポートしています。

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