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米ユタ大が「カフ不要」で血圧を連続モニタリングできるスマートウォッチを開発|Nature Communicationsに掲載予定

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血圧の数値は健康診断のたびに気になる項目ですが、いまの家庭用血圧計は腕に巻く「カフ(加圧帯)」を使うのが当たり前で、しかもじっと座っていないと正確に測れません。1日の血圧の変化を細かく追いたい人にとっては、不便さの方が目立つ仕組みでもあります。

そんな常識を覆すかもしれない新技術が、海外メディアの@theU(米ユタ大学公式ニュース)で報じられました。米ユタ大学とイリノイ大学シカゴ校の研究チームが、加圧カフを使わずに血圧と血流を連続的に測定できるスマートウォッチ型のウェアラブルデバイスを開発したというものです。研究成果は、まもなく学術誌「Nature Communications」に掲載される予定です。

Source:@theU – University of Utah

従来のカフ式血圧計が抱えていた「物足りなさ」

研究を主導したのは、開発当時ユタ大学に所属していたBenjamin Sanchez Terrones氏(電気・コンピュータ工学・准教授/現在はイリノイ大学シカゴ校)。同氏は血圧モニタリングの現状について「高血圧は心臓発作、動脈瘤、脳卒中の引き金になる“静かなる殺し屋”であり、世界的な医療負担になっている。これを攻略することは“聖杯”ともいえる課題だ」と述べています。

普段わたしたちが目にする血圧計は、腕にカフを巻いて加圧し、収縮期血圧(上の数字)と拡張期血圧(下の数字)を表示するタイプがほとんどです。便利な装置ではありますが、計測中はじっとしていなければならず、得られる値も「ある瞬間のスナップショット」にすぎません。歩いているとき、階段を上っているとき、ストレスを感じているときに血圧がどう変動しているのかは、見えないままです。

Sanchez Terrones氏は、この状況を映画にたとえて分かりやすく説明しています。「1日を通した血圧の変化はまるで映画のようなものだが、カフを巻いた瞬間に得られるのは、その映画の1枚の静止画にすぎない。残りの99%は見逃されている」というわけです。

光ではなく「電気」で血圧を測るという新発想

市販のスマートウォッチの多くは、光を使って血流を読み取り、そこから血圧を推定する仕組みを採用しています。ただ、研究チームによると、この光学的な手法は科学的な原理が完全には解明されておらず、機械学習を「ブラックボックス」として血圧を推定しているケースが多いといいます。出力の根拠が説明しづらく、臨床現場でそのまま信頼するには壁があるのが現状です。

新しいデバイスは、光ではなく「ごく弱い電流」を使うのが特徴です。手首に流す微弱な電流を通して、血液と組織の中をどれくらい電気が流れやすいかを示す「生体インピーダンス(bioimpedance)」を計測します。心拍ごとに血流が変化すると、この電気的な性質も微細に変化するため、その変動データから血圧の動きを読み取るという考え方です。

共同研究者で数学が専門のユタ大学・Christel Hohenegger准教授は「機械学習に物理学の原理を直接組み込むことで、ブラックボックス的な予測から脱却し、より正確で説明可能、そして現実の医療現場で広く使えるシステムに近づくことができる」とコメントしています。

流体力学と電磁気学を組み合わせた「物理ベースAI」

このスマートウォッチがユニークなのは、AI(機械学習)の中に「血流の物理学」をあらかじめ組み込んでいる点です。具体的には、脈動する血液の流体力学と、生体インピーダンスを測るための電磁気学の知見をモデルに反映しています。これにより、物理的にあり得ない値を予測してしまうリスクを抑え、現実に即した結果を出しやすくなるとされています。

研究チームによれば、こうした「物理学に裏付けられた機械学習(physics-informed machine learning)」の手法を採用することで、ユーザーごとに個別のキャリブレーションを行わなくても、安静時から運動中まで連続的に心血管の状態を追跡できるようになるといいます。

共同著者でユタ大学数学科のBraxton Osting教授は「血圧は2つの数字ではなく、時間の関数として捉えるべきものだ。手首の間接的な電気信号から、その全体の波形を復元するというのは典型的な“逆問題”であり、血流の物理を直接モデルに埋め込んだことで、予測の信頼性を高められた」と述べています。

ICU患者を含む150人で実証、Nature Communicationsに掲載予定

研究チームはこのデバイスを、ユタ大学院生のHenry Crandall氏、Tyler Schuessler氏、Filip Bělík氏らが中心となって、合計150人を対象にテストしました。検証の対象には、集中治療室(ICU)で治療中の患者や、外来の患者まで含まれており、健康な被験者だけで完結させなかった点が大きな特徴です。

Sanchez Terrones氏は「Madsen Health Centerだけでなく、ICUの患者にも協力していただいたのは、本当に必要としているターゲット層でこの技術が機能するかどうかを確かめたかったからだ」と話しています。研究成果は、学術誌「Nature Communications」に「Cuffless hemodynamic monitoring with physics-informed machine learning models(物理ベース機械学習モデルによるカフレス血行動態モニタリング)」というタイトルで掲載予定で、編集前の早期版は2026年5月14日に公開されています。

「2つの数字」から「動画のような連続データ」へ

従来の血圧計が映し出していたのは、収縮期血圧と拡張期血圧という2つの数字、いわゆる「120/80」のような表現でした。Sanchez Terrones氏らの技術では、血流の速度や脈拍を連続的な波形として記録することで、こうしたシンプルな2値を超えた情報を取り出せるとされています。

たとえば、デスクワーク中の落ち着いた状態と、急いで階段を上った直後の状態を比較しながら、1日の血圧の動きを「動画」のように追えるイメージです。これが実現すれば、血圧の上下のパターンから生活習慣の影響を読み解いたり、特定のタイミングで血圧が急上昇している人を医療側がより早く把握したりすることが期待できます。

日本での実用化はこれから

この技術は、ユタ大学が知的財産を保有しており、現在は同大学のTechnology Licensing Officeがライセンス先を探している段階です。研究としては論文発表が間近に迫っているものの、製品としていつ・どのメーカーから・どの市場で発売されるかは、現時点では公表されていません。当然ながら、日本での発売や取り扱いについても具体的な発表はなく、購入を検討できる段階にはありません。

Smart Watch Lifeでは、本技術が商用化に向けてどう展開していくか、ライセンスを受けるメーカーが現れた段階や、製品化のロードマップが明らかになった段階で続報をお届けします。「カフを使わずに血圧を1日中モニタリングできるスマートウォッチ」という未来像に興味がある方は、今後の動きを一緒に追いかけていきましょう。

まとめ

米ユタ大学とイリノイ大学シカゴ校の研究チームが発表した新型ウェアラブルは、加圧カフを使わずに血圧と血流を連続測定するというこれまでにない仕組みを持っています。手首から取得する生体インピーダンスのデータに、流体力学と電磁気学の知識を組み込んだ機械学習モデルを掛け合わせることで、血圧を「2つの数字」ではなく「時間に沿った波形」として読み取れるようになる点が大きな特徴です。

製品としてはまだ商用化前の段階ですが、論文がNature Communicationsに掲載されることで、今後ほかのメーカーやスタートアップにも影響を与える可能性があります。スマートウォッチが「健康のおまけ機能」から「臨床的にも信頼できる血圧モニタリングデバイス」へと進化するきっかけになるかもしれない、注目の研究です。

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スマートウォッチ/ウェアラブルの最新研究&次世代技術まとめ|大学の研究から「未製品化」の新技術まで一望

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