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スマートフォンやスマートウォッチが常に手元にある今、通知や情報の多さに「なんだか疲れた」と感じたことはないでしょうか。こうしたデジタル機器の利用によって生じる心身のストレスは「テクノストレス」と呼ばれ、リモートワークや常時接続の広がりとともに、あらためて注目されています。ここでは、テクノストレスとは何か、その症状や原因、対策を、国内外の研究や公的資料をもとに整理します。
テクノストレスとは?(定義と起源)
テクノストレスは、コンピューターやスマートフォンなどのデジタル技術を使うことで生じる、心身のストレスを指す言葉です。この言葉は1980年代、米国の臨床心理学者クレイグ・ブロード氏が、コンピューターの普及がもたらす“人的コスト”として提唱したとされています。当初から、「技術の進歩に人間の側が追いつけないこと」が問題の中心にありました。
臨床心理学の研究レビュー(石津和子「テクノストレスに関する研究の展望」)でも、テクノストレスはコンピューター利用から生じるネガティブな状態として整理され、疲労やメンタルヘルスへの悪影響が古くから知られてきたと述べられています。近年は職場だけでなく、私生活でもSNSやオンライン会議、常時接続の環境がストレス源になりうると考えられています。
「テクノ不安症」と「テクノ依存症」──2つのタイプ

国内の解説では、テクノストレスは大きく2つのタイプに分けて説明されることが多くあります。
一つは「テクノ不安症」です。新しい機器やシステムへの不安、操作ミスへの恐れ、覚えることの多さといった負担が中心で、頭痛・肩こり・めまい・動悸・息切れなどの身体的な不調として現れることもあるとされます。
もう一つが「テクノ依存症」です。機器を手放せない、常時接続でないと落ち着かない、対人関係が煩わしく感じられる、思考が機械的になりやすい──といった“過剰適応”の側面が強いタイプです。
何がストレス源になるのか
研究では、テクノストレスを生む要因(テクノストレッサー)として、情報過多、変化への追従圧力(次々に現れる新機能やアップデートへの対応)、システムの複雑さ、そして仕事が私生活に入り込む“侵入感”などが挙げられています。
特に近年は、スマートフォンやスマートウォッチによる「常時接続」が、この侵入感を強めやすいと指摘されます。終業後も通知が気になる、休んでいても切り替えられない──そうした感覚は、テクノストレスの典型的な現れの一つといえます。
研究でわかってきたこと
テクノストレスは「ただの疲れ」ではなく、心理・行動・身体にまで広がる現象として研究が続いています。105件の研究を対象にした系統的レビュー(La Torreら, 2019年)は、テクノストレスが仕事と私生活の両方に影響し、仕事や生活の満足度・生産性を下げ、心理的・行動的な不調と結びつくことが多いと結論づけています。
働き方の面でも、コロナ禍以降のDX(デジタル化)の急速な進展が指摘されています。労働政策の専門誌(日本労働研究雑誌/川上憲人氏)は、職場のコミュニケーションが対面からデジタルツール中心へ移り、雑談や表情といった非言語的なやり取りが減ることで、意思疎通のすれ違いやメンタルヘルス不調につながりうると論じています。
一方で、テクノストレスは設計や運用しだいで和らげられるとも考えられています。研究では、組織的なサポート、操作教育などの技術支援、「自分は使いこなせる」という自己効力感、ITとマインドフルに向き合う姿勢などが、緩和要因として検討されています。
スマートウォッチ・通知とどう付き合うか

テクノストレスは、機器そのものが悪いというより、“付き合い方”の問題という側面が大きいものです。研究や実務の解説で共通して挙げられるのは、次のような工夫です。
・通知を整理し、本当に必要なものだけに絞る
・連続した画面作業の時間を短くし、休憩を意識的にはさむ
・終業後は通知を止める、仕事用と私物のデバイスを分けるなど、オンとオフの境界をつくる
意図的にデジタル機器と距離を置く「デジタルデトックス」も、テクノストレスとの付き合い方として注目されています。
スマートウォッチは、通知を手首に届けることで“常時接続”を強める側面もありますが、使い方しだいでは味方にもなります。たとえば、受け取る通知を厳選すればスマホを何度も取り出さずに済み、かえって画面を見る回数を減らせます。また、ストレスや睡眠、心拍の状態を可視化して自分の疲れに気づくきっかけにする、という使い方もあります。
まとめ
テクノストレスは、デジタル機器が生活に深く入り込んだ現代ならではのストレスです。テクノ不安症・テクノ依存症という2つの側面があり、情報過多や常時接続が背景にあること、そして仕事と私生活の両方に影響しうることが、国内外の研究で示されています。大切なのは、機器を遠ざけることではなく、通知や画面との“ちょうどいい距離”を自分で設計すること。「便利さ」と「休まらなさ」は表裏一体で、ときには機能を足すより引く発想(“画面なし”を選ぶ動き)も大切になりそうです。スマートウォッチも、その距離のとり方しだいで、疲れの原因にも、健康管理の味方にもなります。
参考にした情報・研究
本記事は、以下の研究・資料を参考に構成しています。
La Torre G ほか「Definition, symptoms and risk of techno-stress: a systematic review」(Int Arch Occup Environ Health, 2019年)/PubMed
川上憲人「DXが職場や仕事にもたらすもの」(日本労働研究雑誌 No.754, 2023年5月)/労働政策研究・研修機構(JIL)
石津和子「テクノストレスに関する研究の展望──職場におけるメンタルヘルス促進の観点から」
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