スイスLiomが非侵襲の血糖値測定ウェアラブルを開発中|手首で光のラマン分光 2028年発売目標 研究用装置で誤差MARD 14.5%

NEWS

公開日:

プリズムを通った光が赤・緑・青の帯に分かれて広がる様子(光で分子を調べる分光のイメージ)

針を刺さずに、手首に着けるだけで血糖値を測り続けるウェアラブルを、スイスのLiom Health AG(以下Liom)が開発しています。ドイツの電子技術誌Elektorが2026年10月に伝えたもので、光を使う「ラマン分光」という測定方法を小さな分光器に収め、2028年の製品発売を目指しています。研究用の装置を使った試験では、測定値のずれを示すMARDが14.5%でした。

皮膚に細いセンサーを刺して使う連続血糖測定器(CGM)は、アボットのLibreシリーズなどがすでに使われています。Liomが目指すのは、その針もなくすことです。ただし、手首に着ける製品はまだ開発の途中です。日本での発売予定も明らかにされていません。この記事では、光で血糖を測る仕組みと、試験の結果が何を意味するのかを順に紹介します。

光を当てて分子の「指紋」を読み取るラマン分光の仕組み

ラマン分光は、物に光を当てたときの光の変化から、そこにどんな分子があるかを調べる方法です。研究室の分析装置で広く使われています。

皮膚の内側に光が入ると、ほとんどの光はそのまま散らばりますが、ごく一部は分子の振動の影響を受けて、波長(色)が少しだけ変わって返ってきます。この変わり方は分子ごとに決まったパターンを持つため、指紋のように見分けられます。ブドウ糖(グルコース)も、そのパターンから見分けられる分子のひとつです。

Liomは、この光の測定に信号処理と機械学習を組み合わせ、返ってきた光から血糖に関わる情報を取り出しています。目指しているのは、皮膚に針を刺さず、一人ひとりの採血による合わせ込み(較正)もしないで、血糖を連続して測ることです。

難しいのは装置の大きさです。研究室のラマン分光装置は、光学部品をいくつも組み合わせ、弱い光を十分に集めて精密に測る必要があります。Liomはこれを手首に収めるため、独自の分光器、光センサー、データ処理の技術をひとまとめにした小型の光学プラットフォームを開発しています。

研究用装置での誤差はMARD 14.5%、手首の製品での検証はこれから

Elektorによると、Liomの技術を使った前向きのパイロット研究が、医学誌Journal of Diabetes Science and Technologyに掲載されています。この研究では、一人ひとりの採血による較正をしない条件で、MARDは14.5%でした。

MARD(平均絶対相対誤差)は、センサーが出した値と、採血などで測った基準の値が、平均で何%ずれているかを示す数字です。小さいほど基準の値に近く、正確に測れていることになります。

ここで押さえておきたいのは、この結果が研究用の装置で得られたものだという点です。発売を目指す手首型の製品で測ったものではありません。小型化した装置でも同じように測れるかを確かめることが、次の大きな課題になります。

血糖値は、糖尿病の治療で薬の量を決める判断にも使われる数値です。試験の数字だけを見て、いま使っている血糖測定器の代わりになると考えるのは早すぎます。

2025年12月に分光器の小型化を発表、製品の発売目標は2028年

Liomは2025年12月に、独自のラマン分光プラットフォームの小型化が進んだことを発表しています。研究用の装置から、手首に着けられる大きさへ近づける段階です。

測る対象は血糖だけではありません。今後の研究テーマとして、乳酸、ケトン、脂質、たんぱく質といった体内の物質も挙げています。いまのウェアラブルでも測れる心拍数・活動量・睡眠と組み合わせて、体の代謝の状態をより詳しくつかめるようにすることを目指しています。

一般向けのウェアラブルは現在開発中で、発売の目標は2028年です。

11月のelectronica 2026で技術を紹介

ドイツ・ミュンヘンで電子部品の見本市「electronica 2026」が開かれます。Liomは、そのスタートアップ展示エリア「electronica Fast Forward」の出展企業に選ばれました。11月12日には、ステージで「Non-Invasive Glucose Sensing(針を使わない血糖センシング)」と題した発表も予定されています。

会期 2026年11月10日〜13日
会場 メッセ・ミュンヘン(ドイツ) ホールB4 スタンドB4.251/13
Liomの発表 11月12日 13:30〜14:00(electronica Fast Forward Stage)
発表タイトル Non-Invasive Glucose Sensing

「血糖値が測れる」とうたう今のスマートウォッチには注意が必要

通販サイトなどでは「血糖値が測れる」とうたうスマートウォッチが売られています。日本糖尿病学会は2024年に、こうした製品について注意を呼びかけました。

Liomのような開発中の技術のニュースと、いま売られている製品の宣伝文句は分けて考える必要があります。血糖の管理が必要な人は、医師に指示された測定器を使い続けてください。

針を使わない血糖測定は、スマートウォッチの健康機能のなかでも長く期待されてきたテーマです。Liomが2028年の発売までに、手首の製品でどこまで精度を示せるかが次の焦点になります。下の関連記事では、血糖を測るウェアラブルのこれまでの動きや、注意喚起の内容を紹介しています。

Source: Elektor Magazine, Liom

あわせて読みたい関連記事

「血糖値が測れる」とうたうスマートウォッチについて、日本糖尿病学会が出した注意喚起の内容です。

日本糖尿病学会が「血糖測定機能をうたうスマートウォッチ」に注意喚起

腕に貼るタイプの連続血糖測定器では、血糖とケトンを1台で測る製品が米国で認可されています。

血糖とケトンを1台で連続測定するウェアラブルをFDAが認可|アボット「Libre Duo 10 Day」

針を使わずに指の汗から血糖などを測る、スマートリングの研究も進んでいます。

指の汗で血糖・アルコールなど6項目を測るスマートリング「CHARM」をUCサンディエゴ校が開発

健康管理に役立つウェアラブルの記事は、タグページにまとめています。

ヘルスケアの記事一覧

Smart Watch Lifeのトップページへ

 はじめての方・記事の探し方に迷った方へ
記事が多くて迷ったら、 記事の探し方ガイド から目的別に読めます。

※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。
     

関連記事