Appleは2025年5月、Apple Watchの心臓健康機能により重大な不整脈「心房細動(AF)」を早期発見できた事例を紹介するプレス向けイベントを開催しました。
ゲストとして登壇したのは、Apple Watchによって心房細動に気づき、命を救われた体験を持つ神奈川県在住の鈴木政博さん。
そしてもう一人の登壇者は、不整脈専門医として、医療の現場でApple Watchを診療に活用している杏林大学医学部 循環器内科学教室 診療科長の副島京子先生です(リモートでの参加)。
本記事では、このイベントでの副島先生の発言を中心に、「なぜ心房細動の早期発見が重要なのか」「Apple Watchがいかに有効か」について紹介していきます。
Apple Watchが命を救った、鈴木政博さんの実体験
ヘビメタ好きで年間30回もライブに出かけるほど活動的なライフスタイルを送っていた鈴木政博さん。そんな鈴木さんの生活は、2023年6月にApple Watch SEから届いた「不規則な心拍」の通知で一変しました。
Apple Watch Series 8へ買い替え、心電図アプリを活用して自ら心拍を測定。3回連続で「心房細動の可能性」と表示され、受診を決意。結果的に精密検査を経て手術に至り、現在は経過良好です。
この物語はAppleの公式CMとして公開されました。
なおイベントでの鈴木さんのトーク内容については、下記記事で詳しく解説しています。
Apple Watchが命を救う――重大な心疾患から再起したエンジニアの物語【実話が公式CMに】
副島医師が語る、心房細動の危険性と発見の難しさ
副島先生は、心房細動が「最も多く見られる不整脈」であるにも関わらず、自覚症状がなく気づかれにくいことを指摘しています。
・水面下に隠れた「無症候性」の患者が大多数
・気づいた時には脳梗塞など重篤な症状を起こしているケースも
・早期発見には心電図測定デバイスの活用や心拍監視が鍵となる
その意味で、Apple Watchのように常時装着でき、心拍の異常を検知してくれて、本人が簡単に心電図の記録を残せるデバイスの存在は非常に大きいと述べました。
医療現場での活用事例
Apple Watchでは、電極によってユーザーが手首の上で直接心電図を記録できる
副島先生の診療現場では、以下のようなApple Watchによる実際の活用例が紹介されました。
・82歳女性がApple Watchで心房細動を記録 → 正確な診断と治療へ
・胸の鼓動に不安感のあった患者が就寝中にApple Watchで記録 → 心房細動を特定し治療へ
いずれの例も、「症状が出た瞬間」に自分でApple Watchを使って心電図を取れることで診断が早まり、重篤化を防ぐことができたとのことです。
なおこうした活用が可能なのは、Apple Watchで計測した心電図がPDF化や印刷も可能なため。
副島先生も「30秒間の心電図が非常にきれいに記録できますので、医師であればその記録も参考に診断をして、心房細動の診断をつけることが安濃」とApple Watchの心電図機能に太鼓判を押していました。
早期治療のメリットと、Apple Watchが果たす役割
Apple Watchには睡眠時無呼吸に関する通知機能も2024年に登場
心房細動の治療は、かつては薬物治療を優先し、最後の手段としてアブレーション(組織を物理的に破壊除去する治療法)が行われていました。しかし現在では「早期診断・早期アブレーション」が再発リスクを大きく減らすことがわかっています。
また、心房細動の予防や再発防止には以下の生活習慣の管理が重要です。
・高血圧の管理
・睡眠時無呼吸症候群の改善
・日々の運動量の確保と記録
なおApple Watchでは2024年に新しい睡眠時無呼吸の通知機能が登場。
血圧の測定はできませんが、日々の運動量を記録する機能はスマートウォッチ界随一の使いやすさで有名です。
こうしたライフスタイルのトラッキングをApple Watchが支援することで、予防医療のパートナーとしての価値が高まっていると副島先生は語ります。
医療現場とApple Watchの今後
副島先生は、今後さらにApple Watchが医療機関と連携していく未来に期待を寄せています。
・患者の運動や睡眠データを電子カルテに連携
・高齢者の健康管理や糖尿病治療にも応用可能
杏林大学医学部附属杉並病院でも、2024年7月よりApple Watchから得られた健康データの診療活用がスタートするとのことです。
参考:先進的な医療への取組み | 循環器内科 | 診療科・部門紹介 | 杏林大学医学部付属杉並病院
不整脈専門医としての実感と期待
副島京子医師
副島先生は不整脈専門医として、患者に対しては「iPhoneユーザーであればApple Watchの活用を勧めることが多い」と語ります。理由は下記の通りです。
・心電図の正確性は他社製品よりも高い
・自分で記録し、医師に持参するという流れが理想的
・Apple Watchでの異常検知が診断の突破口になることも多い
また、健康な人でも定期的に心電図を取り、異常を早期に察知することは非常に有意義だと強調しました。
一方でApple Watchの健康データの医療分野での活用が大きく進まない背景には、
・電子カルテとの連携が困難(フォーマットの統一がされていない)
・セキュリティ面の過剰な制限
といった問題があることも言及。これらの課題が解決されれば、Apple Watchは医療現場でより広く使われ、患者の健康を守る大きな助けとなるでしょう。
まとめ:Apple Watchは“健康を見守るパートナー”へ
Apple Watchは、単なるガジェットではなく、心臓の異常を早期に察知し、命を救う可能性を持ったパーソナルヘルスデバイスです。
心房細動のような見逃されがちな症状を、日常の中でキャッチできる存在として、今後さらに重要な役割を担っていくことでしょう。
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