Apple Watchをつけて眠ると、翌朝iPhoneのヘルスケアアプリに「覚醒」「レム睡眠」「コア睡眠」「深い睡眠」という4つの睡眠ステージが表示されます。
「へえ、こんなふうに分かれてるんだ」と眺めるのは楽しいものですが、いざ中身を理解しようとすると、ちょっと戸惑いませんか?
「コア睡眠って何? 聞き慣れないけど……」
「深い睡眠が少ないみたい。これって大丈夫?」
こうした疑問はとても自然なものです。そもそも睡眠のしくみ自体、学校で詳しく習う機会はあまりありません。
この記事では、Apple公式サポートの情報に加えて、厚生労働省の健康情報サイト(e-ヘルスネット)や茨城県健康科学センターの資料をもとに、Apple Watchが表示する4つの睡眠ステージの意味を、できるだけやさしい言葉で解説します。
そもそもApple Watchはどうやって睡眠を記録しているの?

まず気になるのは、「腕時計が睡眠の中身まで分かるの?」という点ですよね。
Apple Watchは、心拍数と体の動き(加速度センサー)のデータを使って、眠っている間の状態を推定しています。直接脳波を測っているわけではありませんが、心拍の変化や体の動きのパターンから、今どの睡眠ステージにいるかをかなり正確に判定できるのです。
使い方はシンプルで、iPhoneのヘルスケアアプリで「睡眠」を設定したうえで、Apple Watchをつけたまま眠るだけ。睡眠時間が1時間以上あれば、翌朝アプリに睡眠ステージのグラフが表示されます。
眠りを左右する2つの力――「睡眠欲求」と「体内時計」

睡眠ステージの話に入る前に、そもそも人はなぜ毎晩同じような時間に眠くなるのか、少しだけ触れておきます。ここを知っておくと、ステージの意味がぐっと理解しやすくなります。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、人の睡眠は大きく2つの力でコントロールされています。
ひとつは「睡眠欲求」。起きている時間が長くなるほど、脳に疲れがたまって「もう眠りたい」という欲求が強まっていきます。徹夜明けに猛烈に眠いのは、この力が最大になっているからです。
もうひとつは「体内時計による覚醒力」。体内時計は朝から夕方にかけて覚醒力を高め、夜になるとそれを弱めます。覚醒力が下がったタイミングで睡眠欲求がピークを迎えるので、私たちは毎晩だいたい同じ時間に眠くなるわけです。
茨城県健康科学センターの資料では、この関係を「二過程モデル」と呼んでいます。難しそうな名前ですが、要するに「疲れ」と「体内時計」の2つが絶妙なバランスで毎日の眠りを形作っているということです。
眠りに入るとき、体の中では何が起きている?
夜が近づくと、体は眠りの準備を始めます。厚生労働省の解説や茨城県健康科学センターの資料によると、具体的にはこんなことが起きています。
まず、体から熱を逃がして脳の温度を下げます。赤ちゃんが眠くなると手足がぽかぽか温かくなるのを知っている方もいるかもしれませんが、あれは体の中心部の熱を手足から放出して、脳を冷やしている証拠なのだそうです。大人でも同じことが起きています。
次に、メラトニンというホルモンが分泌されます。「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンが増えることで、自然と眠気がやってきます。
そして朝方になると、今度は覚醒を促すホルモンの分泌が始まり、体は目覚めの準備に入ります。つまり睡眠は「何もしていない時間」ではなく、体が意図的に状態を切り替えている、とても能動的な時間なのです。
ノンレム睡眠とレム睡眠――眠りの2つの顔
ここからが本題です。人の眠りには、大きく分けて2種類の状態があります。
ひとつは「ノンレム睡眠」。脳の活動がぐっと低下して、体も脳もしっかり休んでいる状態です。心拍数や血圧も下がります。
もうひとつは「レム睡眠」。「レム」はRapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字で、名前のとおり眠っているのに眼球がきょろきょろ動いています。脳波を調べると覚醒時に近い活動を示していて、夢を見るのもこの時間帯です。
茨城県健康科学センターの資料によると、この2つは約90〜120分の周期で交互に繰り返されます。6時間眠る人なら3〜4回、もう少し長く眠る人なら5回ほどこのサイクルを繰り返して朝を迎えます。
また、睡眠の前半には深いノンレム睡眠が多く、後半になるほどレム睡眠の割合が増えていくのが典型的なパターンです。朝方に夢を見やすいのは、このためです。
Apple Watchの4つの睡眠ステージを読み解く

ここまでの睡眠の基礎知識をふまえると、Apple Watchが表示する4つのステージの意味がすっきり見えてきます。
覚醒
文字どおり「目が覚めている状態」です。寝入りばなや、夜中にふと目が覚めた瞬間、朝の目覚め前などに記録されます。
じつは健康な人でも一晩に10回以上は短い覚醒が起きているのだそうです(茨城県健康科学センター資料)。ただ、すぐにまた眠りに戻るので本人はほとんど気づきません。覚醒の時間がグラフに表示されていても、それだけで「眠りが浅かった」と心配する必要はありません。
レム睡眠
医学でも同じ名前で呼ばれている睡眠段階です。脳は比較的活発に動いていて、夢を見やすい時間帯にあたります。
一見「浅い眠り」に思えますが、レム睡眠には記憶の整理や感情の処理といった大切な役割があると考えられています。茨城県健康科学センターの資料でも、レム睡眠中に記憶回路の成長・活性化が起きていると説明されています。
また、レム睡眠中は筋肉の活動がほぼ停止します。いわゆる「金縛り」は、レム睡眠中に意識だけが先に目覚めてしまう現象で、4〜6割の人が経験するとも言われています。
コア睡眠
「コア睡眠」は医学の教科書には出てこない、Apple Watchなどスマートウォッチで使われる一般向けの表現です。
医学的な分類では、ノンレム睡眠は深さによって段階1〜4に分かれています。このうち浅めの段階1・段階2にあたるのが「コア睡眠」だと考えられます。
段階2は一晩の睡眠の約40〜50%を占めるとされており(茨城県健康科学センター資料)、コア睡眠がグラフの中で一番長く表示されるのはごく自然なことです。「浅い」と聞くと不安になるかもしれませんが、この段階で脳の活動はしっかり休息モードに入っています。
深い睡眠
ノンレム睡眠の中でも特に深い段階3・段階4にあたります。脳波上に大きくゆっくりした波(デルタ波、徐波とも呼ばれます)が現れ、脳が最も深く休んでいる状態です。
茨城県健康科学センターの資料では、ノンレム睡眠が深くなるにつれて脳活動が休息し、心拍数や呼吸数が減少し、血圧も低下すると説明されています。昼間フル回転していた大脳皮質を、集中的にメンテナンスしている時間と言えるでしょう。
深い睡眠は睡眠の前半に集中して現れるのが特徴です。成長ホルモンの分泌とも深く関わっており、体の修復にとって欠かせない時間帯です。
「深い睡眠が短い」と感じたら?
Apple Watchのグラフを見て「深い睡眠が少ないかも……」と気になる方は多いと思います。でも、すぐに心配する必要はありません。
茨城県健康科学センターの資料によると、深い睡眠の量は年齢とともに自然に減っていきます。これは異常ではなく、生理学的にごく自然な変化です。
具体的には、ノンレム睡眠の深い段階(段階3・4)は20代〜30代から緩やかに減少し始め、50歳以降は段階4がほとんど見られなくなることもあるそうです。一方で、成人の睡眠段階1はだいたい10〜20%、段階3・4はやはり15%程度とされており、もともと深い睡眠の割合はそこまで大きくありません。
大切なのは、深い睡眠の「量」だけを見るのではなく、朝の目覚めの感覚や日中の体調と合わせて判断することです。
まとめ:数字より「リズム」に目を向けよう
ここまで見てきたように、睡眠は「ただ意識がなくなる時間」ではありません。ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れながら、脳と体をそれぞれの方法で回復させている、とても精巧なプロセスです。
Apple Watchの睡眠ステージは、こうした眠りの中身を手軽にのぞけるありがたい機能ですが、数字の多い・少ないに一喜一憂するよりも、毎日の生活リズムを見直すきっかけとして使うのがおすすめです。
「だいたい同じ時間に眠れているか」「睡眠時間は確保できているか」――そうした大きな流れに目を向けることが、結局は一番の睡眠改善につながります。
Source:
Apple公式サポート「Apple Watchで睡眠を記録してiPhoneで『睡眠』を使う」
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)「睡眠のメカニズム」(三島和夫)
茨城県健康科学センター「睡眠に関する基礎知識 睡眠のメカニズム」(PDF資料)
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