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睡眠スコアを気にしすぎると逆効果?『オルソソムニア』とトラッカーの上手な付き合い方【研究レポート】

Apple Watchに関するイメージ画像

スマートウォッチやスマートリングの「睡眠スコア」、毎朝チェックしていませんか。睡眠を見える化できる便利な機能ですが、スコアを気にしすぎるあまり、かえって眠れなくなってしまう人がいることが研究で報告されています。その状態には「オルソソムニア」という名前まで付けられました。よく眠ろうとする努力が、皮肉にも不眠を悪化させてしまう——。心当たりのある方もいるのではないでしょうか。この記事では、その研究をもとに、睡眠トラッカーに潜む落とし穴と、数値に振り回されない上手な付き合い方を、具体的に考えていきます。

「オルソソムニア」とは? 報告された3つのケース

オルソソムニア(orthosomnia)は、2017年に医学誌「Journal of Clinical Sleep Medicine」で提唱された言葉です。「正しい(ortho)」と「睡眠(somnia)」を組み合わせた造語で、健康的な食事に過度にこだわるあまり不健康になる「オルソレキシア」になぞらえています。意味は、睡眠トラッカーのデータを通じて“完璧な睡眠”を追い求めるあまり、逆に睡眠への不安が強まってしまう状態です。

論文では、トラッカーのデータに振り回された3人の患者が紹介されています。40代の男性は「トラッカーに8時間以上の睡眠を表示させなければ」というプレッシャーから、必要以上に長くベッドで過ごすようになっていました。20代の女性は、医療検査(睡眠ポリグラフ検査)では十分な深い睡眠が取れているのに、トラッカーの「睡眠が浅い」という表示を信じ込み、不調を訴え続けました。60代の男性は、自覚のない早朝覚醒のデータばかりを気にして、医師の行動改善の提案にも抵抗しました。

3人に共通していたのは、スコアを良くしようとして必要以上に長く床に就き、かえって不眠を悪化させかねない状態だったことです。眠れないことへの不安が、さらに眠りを遠ざける——という悪循環です。睡眠は「がんばろう」と意識するほど遠ざかりやすいもの。スコアという数字が、その“がんばり”に拍車をかけてしまうところに、オルソソムニアの怖さがあります。

そもそも睡眠トラッカーはどこまで正確?

ここで大切なのが、消費者向けトラッカーの精度には限界があるという事実です。論文によれば、多くの機器は脳波ではなく体の動きや心拍をもとに睡眠を推定しているため、睡眠の深さ(ステージ)を正確に判別することは難しく、眠ってから途中で目覚めた時間の検出も得意ではありません。医療現場で行う睡眠ポリグラフ検査が脳波などを直接測るのに対し、トラッカーはあくまで“間接的に推定している”のです。

ところが論文の症例では、一部の患者は医療検査の結果よりもトラッカーの数値のほうを「自分の感覚に合う」と信じ込んでしまっていました。ここに大きな落とし穴があります。必ずしも正確とは限らない推定値を“絶対の真実”として受け取り、それに合わせて自分の体調を判断してしまう。「よく眠れた感じがするのに、スコアが低いから今日は調子が悪いはずだ」と思い込んでしまうような状態です。睡眠スコアは便利な指標ですが、それはあくまで推定値であり、医療検査ほど厳密ではない——この前提を持っておくことが、付き合い方の第一歩になります。

あなたは大丈夫? こんなサインに注意

自分がオルソソムニア気味になっていないか、次のような傾向がないか振り返ってみましょう。朝起きてまず睡眠スコアを確認し、その数字でその日の気分が決まってしまう。スコアが低い日は「今日は絶対に調子が悪い」と決めつけてしまう。よく眠れた実感があっても、点数が低いと不安になる。スコアを上げたくて、眠くないのに早くベッドに入る。寝つけないとき、つい時計やスマホでデータを確認してしまう——。

こうした傾向が強いと感じたら、少し距離を取るサインかもしれません。数字を追うことが目的化し、本来の「ぐっすり眠ってすっきり起きる」という目的を見失っている状態だからです。睡眠は成績表ではありません。点数を競うものでも、毎晩満点を取らなければいけないものでもないのです。

トラッカーと上手に付き合うコツ

もちろん、睡眠トラッカーは正しく使えば心強い味方です。就寝・起床リズムの乱れに気づいたり、生活習慣を見直すきっかけになったりします。スコアに振り回されないために、次の点を意識してみましょう。

・1日のスコアで一喜一憂せず、数週間単位の「傾向」を見る
・睡眠ステージや点数は“目安”であり、医療検査ほど正確ではないと理解する
・スコアを上げるために無理に長く寝ようとしない(眠くないのに床に就かない)
・寝る前のスマホ・通知チェックを控える(スコア確認が習慣化すると不安が増す)
・眠れない悩みが続くときは、アプリの数字ではなく専門家(医療機関)に相談する

いちばん大切なのは、数値そのものではなく「日中の眠気や調子はどうか」という自分の実感です。スコアが多少低くても日中を元気に過ごせているなら、それはあなたにとって十分な睡眠かもしれません。逆に、スコアが高くても日中つらいなら、別の原因を探るサインです。トラッカーはその実感を補助する道具、と位置づけると気持ちがぐっと楽になります。もし毎朝スコアを見るたびに気が重くなるようなら、思い切って睡眠計測を数日オフにしてみるのも、立派な対処法の一つです。

まとめ

睡眠スコアは便利な反面、こだわりすぎると「オルソソムニア」のように睡眠を悪化させることもあります。トラッカーの数値は完璧ではなく、あくまで傾向をつかむ目安です。スコアに支配されるのではなく、上手に距離を取りながら、自分の体調を整えるヒントとして活用していきましょう。もし睡眠の悩みが続くようなら、アプリの数字を見つめ続けるより、専門家に相談するのが結局は近道です。

Source: Baron et al., Journal of Clinical Sleep Medicine (2017)

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