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スマートウォッチの血中酸素・心拍はどこまで正確? 肌の色・装着位置で変わる精度【研究レポート】

Apple Watchに関するイメージ画像

スマートウォッチやスマートリングで測れる「血中酸素(SpO2)」や「心拍数」。健康管理に役立つ便利な機能ですが、「この数値はどこまで正確なの?」「肌の色やタトゥーで変わるって本当?」と気になったことはないでしょうか。ネット上では「色黒だと測れない」「タトゥーがあると使えない」といった情報も飛び交っています。2024年に発表された大規模な研究(メタ分析)が、この疑問にデータで答えています。結論を先に言えば、「肌の色でスマートウォッチの心拍が大きく狂う」という単純な話ではありません。この記事では、その結果をできるだけ正確に、誇張せずに紹介し、なぜ差が出るのかという仕組み、そして数値と上手に付き合うための具体的なポイントまでまとめます。

約6万人を分析した2024年の大規模研究

この研究は、医療情報の専門誌「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に2024年に掲載されたメタ分析です。メタ分析とは、過去の多数の研究を統合し、より信頼性の高い結論を導く手法のこと。一つの小さな研究では偶然や偏りの影響が出やすいですが、たくさんの研究をまとめることで全体像がはっきり見えてきます。

今回はパルスオキシメーター(指などで血中酸素を測る医療機器)に関する23件の研究(約5万9,000人)と、ウェアラブルの光学式心拍計に関する4件の研究を統合し、肌の色によって測定精度に差が出るのかを、動脈血の検査値や心電図といった“正解”と比較して検証しました。肌の色は「明るい・中程度・濃い」の3グループに分けて分析されています。これだけの規模で横断的に検証した研究は珍しく、現時点でかなり信頼できるデータといえます。

血中酸素は「全体的に高めに出る」、心拍は肌色での有意差なし

まず血中酸素について。研究で分かったのは、パルスオキシメーターは肌の色にかかわらず、実際の値より少し高めに表示する傾向があるということです。過大評価の程度(平均バイアス)は、明るい肌で約0.70%、中程度で約0.27%、濃い肌で約1.27%でした。濃い肌でやや大きくなるものの、研究チームは「統計的には有意な差だが、臨床的に重大とまでは言えない」と評価しています。つまり「色が濃いと数値がまったくあてにならない」というほどの差ではない、ということです。

それ以上に注目すべきは、すべての肌色グループで、FDA(米食品医薬品局)が定める精度の目安(誤差3%以内)を超えていたという点です。肌の色に関係なく、家庭用の数値は「目安」であって完璧ではない——これが大事なメッセージです。とくに血中酸素は「実際よりやや高めに出やすい」性質があるため、表示が正常値でも油断は禁物、という見方ができます。

一方、スマートウォッチなどの光学式心拍計については、肌の色による明確なバイアスは見られませんでした。「濃い肌だと心拍が測れない」と単純に言える結果ではなかったわけです。ただし、誤差の幅(ばらつき)自体は決して小さくありませんでした。心拍数の許容誤差の範囲は、明るい肌でおよそ±14〜16拍だったのに対し、濃い肌ではおよそ±33拍と広く、いずれも国際的な基準(±5拍)を超えていました。これは肌の色だけでなく、運動中の体の動きや測定状況など、さまざまな要因が複雑に影響していると考えられます。安静時はおおむね正確でも、激しい運動中は誤差が大きくなりやすい、という経験則とも一致します。

なぜ精度が変わる? 光学式センサーの仕組み

スマートウォッチの多くは、緑色などのLEDの光を皮膚に当て、血液による光の吸収の変化を読み取る「光電脈波(PPG)」という方式で心拍や血中酸素を測っています。心臓が血液を送り出すたびに血管の血液量が変わり、それによって反射してくる光の量が微妙に変化する——その波を捉えて脈を数える仕組みです。

ここで関わってくるのが、肌に含まれるメラニン色素です。メラニンも光を吸収するため、理論上は肌の色が濃いほど、センサーに戻ってくる光の信号が弱くなり、読み取りにくくなる可能性が指摘されてきました(npj Digital Medicine 2021ほか)。同じ理由で、センサー部分にかかるタトゥー(とくに黒や濃い色のインク)も光を吸収・遮断し、測定に影響することがあります。Appleなどメーカーも、タトゥーがあると一部の測定がうまくいかない場合があると案内しています。さらに、手首から浮いた緩い装着や、汗・体毛なども、光の通り道を乱して精度を下げる要因になります。

数値と上手に付き合うためのポイント

仕組みを知れば、対策はシンプルです。使い方しだいで測定はぐっと安定します。次の点を意識してみましょう。

・本体を手首にやや高め(手首の骨より上)で、すき間ができない程度にしっかりフィットさせる
・測定時は腕を動かさず、机などに置いて安静にする
・センサーにかかる位置のタトゥーは測定に影響する場合があると知っておく
・運動直後や汗をかいたときは、いったん拭いてから測る
・1回の数値で一喜一憂せず、数日〜数週間の「変化の傾向」を見る

とくに血中酸素は「やや高めに出やすい」性質を知っておくと、数値の受け取り方が変わります。表示が低めの値で続く、あるいは普段と明らかに違うなど気になる場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。スマートウォッチの数値は、医師の診断を置き換えるものではなく、体調の変化に気づく“入り口”として使うのが正解です。

まとめ

2024年の大規模研究が示したのは、血中酸素は肌の色にかかわらず全体的に高めに出やすく、心拍は肌色による有意差はないものの誤差の幅は大きい、という現実的な結果でした。「色が濃いと使えない」という話ではなく、どの機種・どの肌色でも家庭用の数値はあくまで「目安」だということです。仕組みと限界を理解したうえで、装着位置やタイミングを整え、日々の傾向を見るツールとして上手に活用していきましょう。気になる症状があるときは、機器の数値だけで判断せず医療機関を受診することが大切です。

Source: Singh et al., Journal of Medical Internet Research (2024)

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