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東京大学発のヘルスケアスタートアップ、issin株式会社が「オートケア」という構想を発表しました。健康管理がどこまで自動化されているかを、自動運転になぞらえてレベル0からレベル5の6段階で定義したものです。
スマートウォッチやスマートリングを使っていると、一度は思うのではないでしょうか。「データは毎日きれいに溜まっているのに、結局そこから先は自分次第だな」と。issinが指しているのは、まさにその先の話です。
「オートケア」とは何か
issinの定義では、オートケアとは本人の意志やモチベーションに頼らず、データとAI、そして生活環境そのものが健康を自動で支える仕組みのことです。
同社が出発点に置いているのは、少し身も蓋もない前提です。多くの健康管理サービスは記録やアドバイスを通じて「本人のやる気」に働きかけるが、それでは続かない。健康管理が続かないのは利用者の意識が低いからではなく、努力を前提にしてきたサービス側の設計にも原因がある、という見方です。
さらに踏み込んだ指摘もあります。ヘルスケアで実際に動くのは人間の身体そのものなので、「本人の行動を自動化する」ことは原理的にできない。自動化できるのは、本人が行動しなくても済むように環境側を変えることだけだ、というものです。
だから目指すのは「人を頑張らせる技術」ではなく「頑張らなくても健康でいられる環境をつくる技術」である、というのがissinの立場です。この考え方は製品にも表れており、スマートバスマットがダイエットを助けてくれる理由10選で「乗るだけ3秒」の設計思想を掘り下げています。
レベル0からレベル5まで、健康管理の自動化を6段階で定義
レベルが上がるほど本人がやることは減り、レベル5では「何もしなくても健康が保たれている」状態に到達します。
| レベル | 判断主体 | AIの役割 | 本人がやること | 例 |
| L0 | 人 | — | すべて自分で行う | 自分で測り、記録し、決めて、動く |
| L1 | 人 | 記録 | 判断して行動する | 体重や活動が自動で記録される |
| L2 | 人 | 提案 | 提案を受け取り選択・決定する | スコア化・変化検知・パーソナライズ提案 |
| L3 | AI | 決定 | 止めるかどうかを判断する | AIが健康プランを決め、デフォルトで実行される |
| L4 | AI | 実行 | ほぼ何もしない | 入浴温度・照明の自動制御、食事の自動手配など |
| L5 | AI | 統合 | 何もしない | 全生活領域を統合し、常に最適な状態を維持する |
なおレベル3以降はissinが目指す将来像であり、現時点で提供されている機能・サービスではないと明記されています。
分かれ目はL2とL3のあいだ
issinが最も重要だとしているのが、L2とL3のあいだにある「判断主体が人からAIへ移る境界」です。
AIがどれほど優れた提案をしても、実行するのが人間である限りモチベーションの壁は残ります。L3ではAIが健康プランを決め、本人が止めない限りそのまま確定する。本人に残るのは「止めるかどうか」の選択だけになります。
言い換えれば、デフォルトが「やらない」から「やる」に反転するということです。ここを越えることがオートケア実現の最大の挑戦だとしています。
issinの現在地はレベル2
issinは自社の現在地を、体重管理の領域でレベル2だとしています。
お風呂上がりに乗るだけで体組成が記録される「スマートバスマット」や、装着するだけで睡眠の質などが分かる「スマートリカバリーリング」で、意識しなくてもデータが溜まる仕組みを実現(L1の記録の自動化)。さらに体重の変動パターンをAIが学習し、注意が必要な変化を知らせる「体重オートケア」を提供しています(L2の分析・提案)。
L3の境界を越えるために不可欠なものとして挙げられているのが、実生活のデータと、AIの判断を現実の生活の中で実行するフィジカルAIの2つです。同社のサービスは累計16万人の利用者データを蓄積しており、大規模な実データから変化のパターンを見いだすことで、判断をAIに委ねられる根拠を積み上げていくとしています。L2にあたる「体重オートケア」がどう実装されているかは、スマートバスマット2026年モデルの新旧比較で確認できます。
レベル4以降は1社ではつくれない
レベル4以降でAIの判断を実行するのは、人を取り囲む生活環境そのものです。issinはこれを自社単独で提供できるものではないと明言しています。
同社が担うのは、生活の中で蓄積される実データと、そこから一人ひとりの状態を理解して判断する、いわば「環境の脳」の部分。実際に生活の中で実行するには、食事・住環境・睡眠・運動・保険・医療といった各分野の企業やサービスとの連携が欠かせないという考えです。今回の発表を機に、パートナー企業との対話を広く進めるとしています。
検証拠点「ウェリーLAB」を開設
あわせて、デバイスやウェリーアプリを通じて蓄積した実データをもとに、健康に関する発見や気づきを分かりやすく発信する取り組みとして「ウェリーLAB」を開設しました。今後はオートケア構想の検証拠点として、データの解析や実験的な機能の提供を予定しているとのことです。
ウェリーLABはissin公式サイトのウェリーLABページから確認できます。
代表コメント

代表取締役の程涛氏は次のようにコメントしています。
「健康管理が続かないのは、意志が弱いからではありません。意志やモチベーションに依存する設計そのものが課題です。本人の行動は自動化できませんが、環境は変えられます。今の私たちはまだレベル2ですが、日々蓄積される実生活のデータとフィジカルAIを土台に、判断をAIに委ねられる世界へ一歩ずつ進みます」
「気づかないうちに進む体の変化を、暮らしの中のデータが静かに捉え、手遅れになる前に守れる健康があります。健康寿命が延びれば、家族や大切な人と思い出をつくる時間が増えます。issinはヘルスケア機器の単なるメーカーではなく、生活者の健康状態を理解する『環境の脳』として、多くのパートナーとともに、何もしなくても健康へ向かっていく世界の構築を目指します」
スマートバスマットの概要
構想の土台になっている「スマートバスマット」は、体組成計とバスマットを一体化させた製品です。お風呂上がりに乗るだけで体重・BMI・筋肉量・体脂肪率など15項目の体組成データを測定し、専用アプリに自動記録します。
| 製品名 | スマートバスマット 体組成計モデル(2026) |
| 販売価格 | 19,800円〜(税・送料込) |
| 主な機能 | 体組成測定15項目、パーソナルヘルスケアAI「ウェリー」、食事の栄養価分析、未来の体重変化予測、体重管理モード、体重オートケア(一部はメンバーシップ加入で利用可能) |
| 測定継続率 | 90%超 |
製品の詳細はissin公式サイトのスマートバスマット製品ページに掲載されています。
まとめ
スマートウォッチもスマートリングも、いまはほとんどがレベル1から2のあいだにいます。よく眠れていない、活動量が落ちている、といったことは教えてくれますが、そこから何をするかは結局こちらの仕事です。毎朝スコアを見て「今日は無理しないでおこう」と思っても、実際には普通に働いてしまう。心当たりのある方は多いはずです。
今回の構想が面白いのは、その状況を「利用者の意志の問題」ではなく「サービス設計の問題」として引き受けている点でしょう。デフォルトを反転させるという発想は、行動を変えさせるより現実的かもしれません。
一方で、判断をAIに委ねることには当然ためらいもあります。健康は最も個人的な領域ですから、どこまで任せるかは人によって違うはずです。issin自身もレベル3以降は将来像だと明記しており、当面はレベル2の精度を上げる段階が続くでしょう。ウェリーLABからどんなデータが出てくるか、そこが最初の見どころになりそうです。眠りを「測る」から「整える」へ動いている周辺の動向は、2026年版 注目のスリープテック7選にまとめています。
Source: issin株式会社 プレスリリース(PR TIMES)
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