Appleのウェアラブル部門が2四半期連続プラス、前年比6.5%増に加速|前年同期は8.6%減、市場の縮小予測に逆行【2026年4〜6月期決算】

コラム・業界分析

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Appleロゴの店舗のイメージ画像。Apple Watchは写っていない。

Appleが2026年7月30日(米国時間)、2026会計年度第3四半期(2026年3月29日〜6月27日)の決算を発表しました。総売上高は1,094億1,700万ドルで前年同期比16%増、6月期としては過去最高です。

ニュースでは「iPhoneが好調」「過去最高益」といった見出しが並びますが、スマートウォッチを追いかけている立場から見ると、いちばん重要な数字は別のところにあります。Apple WatchとAirPodsが含まれる「ウェアラブル、ホーム、アクセサリ」部門です。

先に断っておくと、Appleが公式リリースで「4〜6月期として過去最高」と名指ししたのは、総売上高とEPS、そしてiPhone・Mac・サービスの3事業です。ウェアラブル部門はそこに含まれていません。 会社が前面に出していない部門だからこそ、数字を自分で開いて確かめる価値があります。

この記事はAppleが公開している連結財務諸表(PDF)の実数をもとに、ウェアラブル部門を中心に読み解きます。

ウェアラブル部門は78億8,300万ドル、前年同期比6.5%増

まず全カテゴリの数字を並べます。単位は百万ドルです。

カテゴリ 2026年4〜6月期 前年同期 前年比
iPhone 54,252 44,582 +21.7%
Mac 10,352 8,046 +28.7%
iPad 6,191 6,581 −5.9%
ウェアラブル、ホーム、アクセサリ 7,883 7,404 +6.5%
サービス 30,739 27,423 +12.1%
合計 109,417 94,036 +16.4%

ウェアラブル部門は78億8,300万ドルで、前年同期から4億7,900万ドル増えました。全社の伸び(16.4%)には及びませんが、マイナスだったのはiPadだけで、ウェアラブルはしっかりプラス側にいます。

一方で、全社売上に占める割合は7.9%から7.2%へ下がっています。金額は増えているのに存在感は薄まっているわけで、これはiPhoneが21.7%増と大きく伸びたためです。「伸びている」と「Appleの中で重みが増している」は別の話だという点は、押さえておいたほうが実態に近くなります。

前年同期は8.6%減だった。潮目が変わっています

6.5%増という数字だけを見ると地味に思えるかもしれません。大事なのはこの部門が長く縮んでいたことです。

前年同期にあたる2025年4〜6月期のウェアラブル部門は、80億9,700万ドルから74億400万ドルへ8.6%減でした。そこからの反転です。

直近3四半期の推移を並べると、流れがはっきりします。

四半期 売上高 前年比
2025年10〜12月期 114億9,300万ドル −2.2%
2026年1〜3月期 79億100万ドル +5.0%
2026年4〜6月期 78億8,300万ドル +6.5%

2四半期連続のプラスで、伸び率も上がっています。 9か月累計でも272億7,700万ドル(前年同期266億7,300万ドル)と2.3%増で、通年ベースでもプラスに乗せてきました。

前四半期の決算を扱ったときには、この部門を「成長の踊り場か」と書いていました。1四半期を経て、踊り場を抜けた可能性が出てきたというのが今回の見立てです。

市場全体の予測とは逆を向いています

興味深いのは、業界の予測がむしろ弱気だということです。

調査会社の見通しでは、2026年のウェアラブル市場全体は前年から縮小し、スマートウォッチは「買い替え疲れ」で4%減とされていました。Apple Watchの出荷台数自体、過去に3年連続で減った時期があります。

その予測に反して、Appleのウェアラブル部門は2四半期続けて伸びました。市場全体が縮んでいるなかで、Appleだけがシェアを取り戻しているという読み方ができます。実際、スマートウォッチのEdge AI対応機ではAppleが約9割を占めるという調査もあり、高付加価値な部分にAppleが集中している構図はデータにも表れています。

ただし「Apple Watchが売れた」とは言い切れません

ここは正確に書いておきます。Appleはこの部門の内訳を開示していません。

「ウェアラブル、ホーム、アクセサリ」に含まれるのは次のとおりです。

・Apple Watch
・AirPods
・HomePod
・Apple Vision Pro
・AirTag
・各種アクセサリ(バンド、ケース、充電器など)

つまり78億8,300万ドルのうち、Apple Watchがいくらなのかは分かりません。AirPodsが牽引した可能性もあります。

そのうえで背景を推測すると、2025年9月にApple Watch Series 11、SE 3、Ultra 3、そしてAirPods Pro 3が出そろっています(Series 11・SE 3・Ultra 3の違いはこちらで比較しています)。今回の四半期(2026年4〜6月)はその発売から3四半期目にあたり、値引きが効き始めて買いやすくなる時期です。加えてCFO(最高財務責任者)のケバン・パレク氏は、アクティブデバイスのインストールベースがすべての製品カテゴリと地域セグメントで過去最高を更新したと述べています。売り切りではなく、使われ続けている端末が増えているということです。

全社の数字と、日本市場

地域別の売上も見ておきます。単位は百万ドルです。

地域 2026年4〜6月期 前年同期 前年比
南北アメリカ 45,781 41,198 +11.1%
欧州 29,395 24,014 +22.4%
中華圏 18,816 15,369 +22.4%
日本 6,554 5,782 +13.4%
その他アジア太平洋 8,871 7,673 +15.6%

全地域が二桁成長で、日本も13.4%増です。伸び率だけなら欧州と中華圏が突出しています。

経営陣のコメントも見ておきます。ティム・クックCEOは、全地域セグメントで2桁増を達成したことに触れたうえで、WWDC26で一新されたSiri AIと子どもの安全に関する新機能を発表できたことに言及しました。watchOS 27でApple WatchがSiri AIに対応することを考えると、次の製品サイクルの布石にあたる発言です。パレクCFOはEPSと営業キャッシュフローの両方が4〜6月期として過去最高だったとしています。

配当は1株あたり0.27ドルで、2026年8月10日の市場取引終了時点の株主が対象、支払いは8月13日です。

利益面では、粗利益率50.1%、希薄化後EPSは2.02ドル(前年1.57ドル)でした。ただしAppleは公式リリースで、関税還付が粗利益率に約2ポイント、EPSに0.11ドルの好影響を与えていると明記しています。この一時要因を除くと粗利益率は約48%、EPSは約1.91ドルという計算になり、実力ベースの伸びはもう少し控えめに見ておくのが妥当です。

決算書に出ている3つの変化

財務諸表を読むと、製品の話とは別に目を引く数字が3つあります。

1つ目は研究開発費です。 117億2,900万ドルで前年同期比32.3%増。売上の伸び(16.4%)の2倍のペースで増えています。同時に無形資産が110億9,300万ドルから203億4,200万ドルへ83%増えており、外部からの技術取得が進んだことをうかがわせます。WWDC26で発表された刷新版Siri AIをはじめ、AI関連への投資が数字に出てきた形です。

2つ目は棚卸資産です。 2025年9月末の57億1,800万ドルから110億9,200万ドルへ、9か月で約94%増えました。新製品の生産を積み増しているとも、需要を読み違えているとも解釈できる数字で、次の四半期で答え合わせができます。

3つ目は営業キャッシュフローです。 9か月累計で1,169億9,600万ドル、前年同期比43.1%増。四半期単体でも4〜6月期として過去最高だったとパレクCFOが述べています。

いずれもApple Watchの話ではありませんが、次世代のウェアラブルに投じられる原資がどれだけあるかを示す数字ではあります。

まとめ

今回の決算でスマートウォッチ好きが押さえておくべき点は、次の3つです。

ウェアラブル部門が2四半期連続でプラス成長し、伸び率が加速している。 前年同期の8.6%減から、6.5%増への転換です。

市場全体の予測が弱気ななかでの成長である。 2026年のウェアラブル市場は縮小予測でしたが、Appleはそれに逆行しています。

ただし内訳は非開示で、Apple Watch単体の実績は分からない。 AirPodsやアクセサリの寄与も含まれた数字である点は、割り引いて読む必要があります。

次の注目は2026年秋です。例年どおりなら新しいApple Watchが登場する時期で、そこでこの流れが本物だったのかが見えてきます。研究開発費の急増が製品としてどう出てくるのかも含めて、次の決算とあわせて追いかける価値がありそうです。

Source: Apple Newsroom「Apple reports third quarter results」FY26 Q3 Consolidated Financial Statements(PDF)

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