2026年4月20日、Appleはティム・クック氏が同年9月1日付けでCEOを退任し、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のジョン・ターナス氏が後任CEOに就任すると発表しました。クック氏はエグゼクティブ・チェアマンに移行し、経営の第一線を退く形となります。
スマートウォッチ専門メディアとして、Apple Watchを長年取り上げてきた立場から、クック氏が14年間にわたってAppleをどのように導いてきたのかを振り返ってみたいと思います。
「スティーブ・ジョブズの後継者」という難役を引き受けた人物
ティム・クック氏が正式にAppleのCEOに就任したのは2011年8月24日のこと。その6週間後の10月5日、共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が膵臓がんの合併症で亡くなりました。
世界中から注目されるカリスマ経営者の後を継ぐというのは、想像を絶するプレッシャーだったはずです。しかし、クック氏は独自のスタイルでその重責を果たしていきます。ジョブズ氏のマイクロマネジメント型の手法から一転、協調・信頼を重視するカルチャーをAppleに根付かせたことが特徴として挙げられています。
在任中に達成した驚異的な数字
クック氏の業績を語るとき、まず目を引くのは財務面での圧倒的な成長です。
CEOに就任した2011年時点のAppleの時価総額は約3,500億ドルでした。それが2026年時点では4兆ドルを超え、約11倍(1,000%以上)の成長を遂げました。2011年に1,080億ドルだった売上高は2025年には4,160億ドルを超え(ほぼ4倍)、テクノロジー企業として世界第2位の規模を誇ります。また、世界全体でのアクティブデバイス数は25億台以上に達し、200超の国と地域、500超の直営店を構えるグローバル企業へと成長しました。
2021年8月には10年間の報酬として約7億5,000万ドル相当の株式を売却したことも話題になりました。これはクック氏がAppleにもたらした価値の大きさを象徴するエピソードと言えるでしょう。
Apple Watchを生んだCEO

スマートウォッチメディアとして特筆しておきたいのは、Apple Watchがクック体制下で誕生・成長したプロダクトだという点です。
Apple Watchの発表は2014年、発売は2015年のことでした。ジョブズ氏が作り上げたiPhoneやMacとは異なり、クック時代のAppleが主導して世に出したデバイスです。当初は「iPhoneの付属品に過ぎない」と冷ややかに見る声もありましたが、Series 4以降の心電図機能、転倒検出、血中酸素ウェルネス機能など、ヘルスケア方向への進化を積み重ね、今やウェアラブルデバイス市場でトップシェアを誇る存在に育て上げました。
Apple Watchがここまで成長できた背景には、クック氏が得意とするサプライチェーン管理の巧みさと、ヘルスケアへの強い関心があったと考えられます。Appleが医療・健康分野への投資を積極的に進めてきたのも、クック体制の重要な方向性のひとつです。
サプライチェーンの天才が会社を救った
クック氏がAppleに入社したのは1998年のこと。当時のAppleは経営が悪化しており、ジョブズ氏に直接口説かれる形で入社を決断したと言われています。
入社後、クック氏はまず工場と倉庫の整理から着手しました。製造を外部委託することで在庫を「数ヶ月分」から「数日分」にまで圧縮。さらに2005年頃からフラッシュメモリへの大規模な先行投資を実行し、iPod nano、iPhone、iPadの安定供給を実現しました。後にヒューレット・パッカードのエンジニアが「HP TouchPadはiPadの廃棄・不良パーツで作られた」と述べたというエピソードが残っており、いかにAppleのサプライチェーンが競合を圧倒していたかがわかります。
経営者としてのクック氏を理解するには、この「オペレーションの天才」という側面を外すことができません。華やかな製品発表の裏で、世界中のサプライチェーンを緻密にコントロールし続けてきた人物だったのです。
プライバシーと環境への強いコミットメント
クック氏はCEO在任中、技術系企業としては珍しい姿勢でプライバシー保護を訴え続けました。2018年にはブリュッセルで開催されたプライバシーカンファレンスで、テック企業による個人データの大量収集を「監視に等しい」と批判し、業界内外から注目を集めました。
環境への取り組みも積極的で、2013年にはアメリカ環境保護庁(EPA)の元長官リサ・ジャクソン氏を採用し、再生可能エネルギー推進を加速させました。Appleの製品はカーボンニュートラルを目指す方向で開発が進み、カーボンフットプリントは2015年比で60%以上削減されました。環境問題への姿勢は企業ブランドの重要な柱となっています。
2014年、フォーチュン500企業のCEOとして初めてゲイであることを公表
ビジネスの話題から少し離れますが、クック氏が2014年10月にBloomberg Businessへの寄稿で公にゲイであることを公表したことは歴史的な出来事として記憶されています。フォーチュン500企業のCEOとして初めてのカミングアウトでした。
クック氏は「ゲイであることは神が私に与えてくれた最大の贈り物のひとつだと考えている」と述べ、LGBTQの権利擁護に積極的に関わってきました。この姿勢は、多様性と包括性を重視するAppleの企業文化にも反映されています。
退任後は「エグゼクティブ・チェアマン」として関与を継続
クック氏は2026年9月1日以降もエグゼクティブ・チェアマンとしてAppleに残ります。完全な引退ではなく、後任のジョン・ターナス新CEOをサポートする立場に移行する形です。
ターナス氏は2001年にAppleのプロダクトデザインチームに加入し、2013年にはハードウェアエンジニアリングVPに就任。2021年にはハードウェアエンジニアリングSVPに昇格し、エグゼクティブチームの一員となりました。Mac、iPad、AirPodsなど数多くの主要製品の開発を主導してきており、Apple Watchの進化にも深く関わってきた人物です。スマートウォッチ観点でも注目の人事と言えます。
まとめ:14年間でAppleを再定義した経営者

ティム・クック氏の在任14年間は、Appleという会社が「スティーブ・ジョブズのいないApple」としての新たなアイデンティティを確立した時代でもありました。
サプライチェーンの効率化で財務基盤を強化し、Apple Watchというまったく新しいカテゴリを生み出し、プライバシーと環境保護をブランドの中核に据えた。その結果、時価総額は在任中に約11倍(1,000%以上)に成長しています。
Apple Watchを毎日使っている方にとって、クック氏はそのデバイスを世に送り出した張本人とも言える存在です。新しい体制のAppleがどのような製品を届けてくれるのか、引き続き注目していきたいと思います。
Source: Wikipedia「Tim Cook」
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