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スマートウォッチの健康機能は諸刃の剣か。使用でのストレス増加を報告する研究結果も

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スマートウォッチやフィットネストラッカーの健康関連機能は格段に進化しました。

Apple Watch、Fitbit、Oura Ringなど、様々なウェアラブル機器が心拍数の変動を常時モニターし、異常な数値が出たときにユーザー、あるいは医師に警告する機能を備えています。

関連記事:「来年以降のApple Watchは健康関連機能がさらに充実」と米国『The Wall Street Journal』が報道。体温測定機能で発熱の検知も?

いわば腕時計や指輪が健康診断を24時間365日行ってくれるようなもので、それによって人々の健康や生命にもたらせる恩恵は計り知れないほど大きいはずです。しかし、どうやらそれだけではないようです。

こうした機能がユーザーの健康に寄与する以上に、メンタルヘルスに悪影響を与えてしまっているケースが最近いくつか報告されているのです。

1年に12回も不要な救急車を呼んでしまった例

2020年11月に米国のある医学サイトに掲載された論文(*1)では、そうした残念なケースを紹介しています。

ある70歳の女性がスマートウォッチから心拍数の変動に異常値が出たとする通知を受けることに気を病み、1年間に12回も不要な救急車を呼んでしまいました。

実際には彼女の症状は緊急の治療を必要とするものではありませんでした。しかしながら、彼女の心理的状態あるいは認知機能に問題が生じたとして、医師から6回の認知行動療法セッションを受けるように指示されたとのことです。

この女性はそれまではメンタルヘルスに問題はなかったということですから、健康のためにスマートウォッチを使い始めたことが、かえって仇になってしまいました。

論文は最後にこのように述べています(筆者訳)。

「ウェアラブルは患者の健康管理に大きな役割も果たすことができる。しかし、こうした新しい技術を正しく活用するためには、その製品を開発する会社、医療関係者、介護関係者などが積極的に関与しなくてはいけない。高齢者やメンタルヘルスに問題を抱えている患者には特に細心の注意が必要である」

フィットネストラッカー使用者の約半数がストレスを感じている?

もちろん、上に紹介した事例は非常に極端かつ深刻な例です。それほどでもなくても、健康のためにスマートウォッチやフィットネストラッカーを使っているはずの人が、かえって心理的なストレスを増やしてしまうケースも多々あるようです。

1800人以上のフィットネストラッカー利用者を対象にしたあるアンケート(*2)では、フィットネストラッカーのデータが健康的な生活習慣を人々に促進するメリットを認めながらも、その一方で約半数の人がフィットネストラッカーから示されるデータによって不安やプレッシャーを感じたことがあると回答したことを報告しています。

ストレスのレベルを1から10までのスケールで評価してもらうと、その平均値は6.3だったということでした。フィットネストラッカーを使うことの目的が健康になることだとすれば、それが利用者のメンタルヘルスに悪影響を与えてしまっているというのは、少々気がかりな報告です。

「どんな時にストレスを感じますか?」という質問に対して、51.6%がフィットネストラッカーを着用しなかった時、48.5%が運動不足の通知や提案を無視した時、そして38.5%が1日に設定した目標を達成できなかった時、と答えています。

こうしたストレスを感じた利用者の45%がかえってフィットネストラッカーから離れてしまうという現象が起きてしまっているとのことです。

フィットネストラッカーのデータを追うことは楽しく有意義なことですが、あまりそれに捉われてしまうと、今度は本末転倒になる危険があるようです。

フィットネストラッカーにも、「健康のため、使い過ぎに注意しましょう」という注意書きがあるべきなのかもしれませんね。

*1. When smartwatches contribute to health anxiety in patients with atrial fibrillation
https://www.cvdigitalhealthjournal.com/article/S2666-6936(20)30008-6/fulltext  

*2. Fitness Trackers & Overall Health Impact
https://joybird.com/blog/fitness-tracker-health-impact/

執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani

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