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Apple Watchの多機能性はランニングコーチの強い味方

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公開日: 最終更新日:

 

私はアメリカの高校でクロスカントリー部のヘッドコーチ(監督)をしていて、今年で6年目になります。ヘッドと言っても、私以外には今年からアシスタントがひとり入っただけで、それまではずっと私ひとりでやってきました。

クロスカントリーと言えば、日本ではスキーの方が有名かもしれませんが、アメリカでは野山を走る長距離走レースのことを指します。殆どの高校や大学で行われているメジャーな部活動です。

クロスカントリーのシーズンは秋に、陸上競技のシーズンは春にありますので、真剣な長距離走ランナーはその両方を行うことが普通です。オリンピックでアメリカを代表するマラソンランナーは、ほぼ例外なく高校クロスカントリー部の経験者です。

一緒に走るだけでは済まないコーチの役割


とは言っても、私が指導する高校のチームは最弱と呼んでもいいレベルです。ユダヤ教による一貫教育と進学率の高さを売りにした私立学校で、要するにスポーツには全然熱心ではないのです。生徒数も少なく、我がクロスカントリー部の人数は20~30人ほど。周辺の公立高校では同じ部が100~200人ほどのランナーを抱えていますので、その規模の違いが分かってもらえるでしょう。

その弱小クロスカントリー部を率いるうえで、ヘッドコーチとしての私の指導方針は極めてシンプルです。練習では生徒たちと同じ距離を走る。それだけです。

練習の大部分は学校の外を走ることです。その日の目的がスピードを重視するか、あるいはスタミナを重視するかで、走るコースを毎回変えます。生徒たちが飽きないように、という配慮もあります。生徒のレベルによって、走る距離も変えますが、私はそのなかで一番長い距離を走るグループに入ります。

生徒たちと一緒に走ることで、彼らの走力やフォームを確認して、必要に応じてアドバイスを送ることができます。しかし、それよりは、むしろお守り役であり監視役であることの比重が大きいかもしれません。怪我をする生徒もいますし、迷子になる生徒もいますし、なかにはサボる生徒もいるからです。

スマホを持たずに走ることができる有難さ

昨年までは、私だけはスマホを持って走っていました。安全のため生徒たちにはスマホ携行は禁止しています。走りながら音楽を聴きたがる生徒は多いのですが、ヘッドフォンを着用して外を走ると、背後からの自転車や車に気がつかないこともあり、とても危険なのです。それだけではなく、ちょっと目を離すと、電話やテキストやSNSをやり始める生徒が必ずいます。そのため、スマホは置いて走れと、これだけは厳しく、そしてしつこく言い聞かせています。

私だけがスマホを携行するのは、ランニングのペースや距離を測ることはもちろんですが、緊急事の連絡手段がどうしても必要だからです。幸い、今までに重大な事故や怪我はありませんが、それでも学校関係者や保護者に緊急連絡を入れなくてはならない局面が何回かありました。電話もテキストもメールもできるApple Watchがあれば、そのようなときにも対応することができます。


レースでは自転車で先導ペーサーを務めることもある。後ろにいるのは先頭ランナー

それ以外にも、私がコーチングのために利用しているスマホの機能はいくつかあります。初めて走るレースではGPS地図を使ってコースを把握します。コンパス機能を使うこともあります。タイマーアプリを使って、様々なインターバルトレーニング(例:2分走って1分休み、1分ごとにダッシュ走、など)の設定をします。急な雨や雷に備えて天気を確認します。気温によってはトレーニング内容を変更することもあります。

今年からスマホを携行する代わりにApple Watchを手首に巻いて走っています。それだけで上に挙げたことをすべてできてしまうのですから、Apple Watchの多機能性はランニングコーチの強い味方です。

今のところ、スマホでできてApple Watchでできないのは、生徒たちの写真を撮ることくらいでしょうか。あとこれは滅多にやらなかったことですが、疲れてペースが落ちた生徒を追い抜くときに、最大音量でロッキーのテーマを流して、笑いをとることができなくなりました。Apple Watchで音楽を再生するときはヘッドフォン接続が必要になるからです。私だけが盛り上がっても仕方ありません。

高校生は日々成長します。シーズンの初めには私についてこられなかった生徒が、数か月後には私に背中を見せて走るようになります。そうなると、彼らに混じって走るときには、スマホを手に持つことも、スマホを入れたポーチを腰に巻くことも、つらくなります。

生徒たちと一緒に走れなくなった時がコーチを辞めるときだと考えてきましたが、Apple Watchのおかげでその日を少し遅らせることができそうです。

●執筆者プロフィール 角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー走部監督を務める。年に数回、フルマラソンやウルトラマラソンを走る市民ランナーでもある。フルマラソンのベストタイムは3時間26分。公式Facebookはhttps://www.facebook.com/WriterKakutani

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