総務省、スマホ「残クレ」の残価率算出ルールを見直しへ|キャリアの裁量を排除し、機種別算出を原則化【2026年とりまとめ案】

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スマートフォンを「実質安く」買える仕組みとして広く使われている、いわゆる「残クレ(端末購入プログラム/残価設定購入)」のルールについて、見直しの方向性が示されました。総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」が2026年6月24日(水)に第8回会合を開き、「専門委員会とりまとめ2026(案)」を公表。ドコモ・au・ソフトバンクなど大手キャリアが提供する端末購入プログラムの残価率算出ルールについて、機種別算出を原則とする方向性が打ち出されています。

ただし、後述のとおり「全機種一律」の大胆案は不採用、具体的な算出ルールの詳細設計はこれからとしています。

本記事では、この「残クレ」の仕組みと、今回どこまでの方向性が決まったのか、利用者目線で整理します。

そもそも「残クレ(端末購入プログラム)」とは

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「残クレ」は自動車業界でおなじみの「残価設定型クレジット」をスマホ業界に持ち込んだ仕組みで、各キャリアでは以下のような名称で展開されています。

・ドコモ「いつでもカエドキプログラム
・au「スマホトクするプログラム
・ソフトバンク「新トクするサポート(+)
・楽天モバイル「楽天モバイル買い替え超トクプログラム

仕組みはシンプルで、たとえば定価12万円のスマホを48回払いで購入すると、最初の24か月は月500円程度、25か月目以降は月4,500円程度というように設定。そして2年後に端末を返却すれば、25か月目以降の支払いが免除されます。結果として利用者は「実質12,000円程度」で2年間スマホを使えることになります。

この「免除される金額」の根拠になるのが、2年後の端末買取予想価格=「販売価格 × 残価率」という計算式です。残価率が高ければ高いほど、利用者の実質負担額は小さくなります。

残クレはここまで広がっている

総務省の集計データによれば、MNO3社(ドコモ・au・ソフトバンク)の端末販売台数のうち、残クレ利用者への販売割合は2024年度第3四半期に61.0%に到達。2022年度第2四半期の37.3%から、わずか2年半で倍近くまで拡大しました。販売チャネルの観点では、家電量販店の再編も進行中で、2026年6月にはヤマダ×エディオンが経営統合へ基本合意するなど、スマホ・スマートウォッチを買う場所そのものも変わりつつあります。

背景には、スマートフォンの大幅な高価格化があります。同じく総務省データでは、MNO4社が販売するスマートフォンのうち10万円以上の高価格帯端末の割合は、2020年度の21.1%から2024年度には47.7%まで増加。スマホ売上単価も5年間で6万円から9万円台に上昇しました。「高くなったスマホを残クレで実質安く買う」という構図が、すでに当たり前になっているわけです。

では何が問題視されているのか──「グループ化の抜け道」

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今回見直し対象になっているのは、残価率の算出ルールです。

そもそも残クレでは、キャリアが残価を高く設定するほど利用者の負担は軽くなる代わりに、キャリアによる「実質値引き」が拡大します。電気通信事業法27条の3はキャリアの過度な端末値引きを規制しており、残クレの残価率も「中古端末市場における本来の価値を超えてはいけない」というのが原則。これを担保するため、2024年12月に具体的な算出ルールが導入されました。

このルールでは、残価率の算出にあたり、中古端末取扱事業者の業界団体「RMJ(リユースモバイル・ジャパン)」が公表する買取実績データを参照する必要があります。原則は機種ごとに残価率を算出することとされましたが、「共通項が多い機種をグループ化して、グループ単位で残価率を算出する」ことも、業務負担軽減や柔軟性確保の観点から認められていました。

ところが、この「グループ化」が、実態としては規制の抜け道として機能してしまっていたのです。

とりまとめ案には、こんな指摘が明記されています。

・MNO各社がグループ化を採用しているが、グルーピングの細分化の程度は各社の裁量に委ねられている
・たとえば「iPhone」「Androidスマホ」「スマートウオッチ」など大きくグルーピングすると、同じグループに属する端末の残価率が価格帯・スペック・人気度に関わらず全て同一になる
・その結果、機種によっては本来の残価率よりも大きく吊り上がった残価率になっている=これは規制の潜脱

かみ砕いて言えば、「本来は中古市場での人気が低くて残価率も低いはずのAndroid中位機種が、人気のフラッグシップ機種と同じ高い残価率で計算されている」ということが起きていたわけです。これでは利用者が選ぶ機種によって不公平が生まれますし、キャリアによる過度な実質値引き競争にもつながります。

2つの見直し案と、委員会が出した結論

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この問題に対し、関係者からは大きく2つの案が示されました。

案①:グループ化を禁止し、機種ごとに残価率を算出させる
案②全機種・全キャリアで一律の残価率を採用する(例:あらゆる機種の2年後の残価率は50%)

このうち案②については、関係者の中でも意見が大きく割れました。特に注目を集めたのが、Appleが残価率一律化に対して猛反対したことです。Appleは「価値が低い機種に不相当な補助を与えることで市場をゆがめる」と主張。中古市場での価値が高いiPhoneの残価率を、他の機種と無理やり同じ水準にされることへの強い懸念を示しました。

委員会は議論を経て、案②(残価率一律化)について「機種ごとの市場価値の違いが反映されず、本来価値の低い機種の残価率を引き上げることは規制の潜脱に当たる」と評価し、「適当ではない」と結論。結果的にAppleの主張が認められた形となりました。

その上で、見直しの大方針として次の点が示されました。

27条の3の元々の趣旨に立ち返り、各社の裁量によるグループ化を広く認めている現行ルールは見直す
・残価率算出にあたっては、MNOの裁量を排除しつつ、本来の市場価値からの乖離を抑制することが最も重要
機種ごとの算出を原則化する方向で詳細な見直しを進める

専門委員からは、自動車業界の事例を踏まえた提案も出ています。自動車メーカーではファイナンス会社がオークションデータをもとに車種別の残価率を算出してディーラーに提示しており、新車種が登場した際には「最も類似する車種のデータを参照」して算出しているといいます。「モバイル業界もこれと同じ仕組みで、機種別かつ全キャリア共通の残価率を第三者機関が公表すればよい」という方向です。

具体例:「実質24円」のスマホは今後も続く?

残クレのインパクトを実感しやすい事例として、「Galaxy A57」のケースを見てみます。

ソフトバンクが2026年4月に発売したGalaxy A57は、「新トクするサポート+」を適用して2年後に返却すると、MNP契約の場合は実質24円で済むという攻めた価格設定になっています。

計算を分解すると、こうなります。

・2年後に免除される残債:93,576円
・27条の3で許容される割引上限:44,000円
・差し引いた「2年後の買取予想価格」:49,576円

つまり、ソフトバンクはGalaxy A57の2年後の中古買取価格を約5万円と見込んでいる、ということです。

では、この金額は妥当なのか?──ここからが議論の余地のあるポイントです。2年前の2024年に発売された2世代前の「Galaxy A55」は、2026年現在、中古市場の買取価格を3万円前後とする業者が多い状況です(中古スマホ市場の最新動向は2026年3月の中古スマホ市場まとめ(iPhone SEが10か月連続1位)でも整理しています)。仮にGalaxy A57が同様のリセールバリューに収束するとすれば、4万円台後半の残価設定はやや高めに設定されているとも見えます。

ただし、Galaxy A55の発売時価格は7万円台で、Galaxy A57はそこから約2万円値上げされているので、機械的に40%程度の残価率を当てはめれば3万8,000円前後が妥当ライン。それでもソフトバンクの設定(4万9,576円)よりは1万円強低くなる計算です。これを「不当に高い」と見るか「許容範囲」と見るかは判断が分かれます。

さらにここに、円安・メモリ価格高騰など外的環境の変化も絡んできます。同じ系統の機種でも発売時の端末価格は時期によって大きく変動しており、2年先の中古買取価格を正確に予測すること自体が極めて難しいのが実情です。

こうした難しさを踏まえると、「明確な基準でルール化すること自体が現実的ではない」という見方も成立します。専門委員会のとりまとめ案でも、「客観的基準や分類表の作成には一定の時間を要する」「新しいタイプの機種が発売される場合に、既存のどの機種の買取価格を参照するかMNO各社によって判断が分かれうるため、残価率算出におけるMNOの裁量を排除する方針と両立できるかが課題」と、慎重な書きぶりが目立ちます。

結論として、Galaxy A57のような「実質24円」級の攻めた残価設定が、すぐに大きく変わる可能性は低いと見ておくのが妥当でしょう。

あわせて議論された「短期解約(ホッピング)規制」も整理された

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同じとりまとめ案では、「残クレ」と並ぶ大きな論点として「短期解約問題」も整理されました。これは、乗換え特典(MNPキャンペーンのキャッシュバック等)を目当てに、契約してすぐ別のキャリアに乗換える「ホッピング」と呼ばれる行為のことで、MVNOが「踏み台」にされる構図などが問題視されてきました。

とりまとめ案では、関係者から提案された3つの規制見直し案のうち、「最も競争制限的でない案1」を採用する方向です。これにより、これまで禁止されていた「最長1年間の継続利用を条件とした分割でのキャッシュバック付与」が許容されることになります。

具体的には、たとえば「1年間契約を続けてもらえれば毎月1,000円ずつ還元する」といったキャンペーン設計が可能になり、契約直後の一括キャッシュバックだけに頼った商習慣からの脱却が期待される、というロジックです。一方で、関係者から強く要望のあった「違約金の引き上げ」や「キャッシュバック上限額の引き下げ(現行2万円)」は、当面見送りとされました。

スマホ購入を検討している人がいま知っておきたいこと

とりまとめ案を踏まえて、利用者目線で押さえておきたいポイントを整理します。

当面、販売現場が大きく変わる可能性は低い:制度改正には意見募集・答申(2026年秋頃予定)を経て、所要の制度改正を順次進める形になります。さらに、残価率算出ルールの詳細設計には客観的基準・分類表の作成といった時間のかかる作業が必要なため、いまの「実質◯円」表示がすぐに大きく変わる可能性は低いと見られます。

「実質負担額」表示の根拠は機種ごとにバラつきがある:機種別の残価率算出が原則化される方向は示されたものの、現状ではキャリアの裁量で大括りのグループ単位で残価率が決まっているケースもあります。同じ価格帯のスマホでも、キャリア・機種によって「実質負担額」の妥当性は変わりうると理解しておくと安全です。

残クレの「2年後の端末返却」が前提という仕組み自体は変わらない:いずれにせよ、残クレで購入した端末は2年後・1年後など指定タイミングで返却が必要です。プログラム加入時に「2年後の支払い免除には端末返却が必要」「キャリア変更しても残債が残る場合がある」といった条件説明をしっかり受けることが重要です。

中古端末市場の選択肢も視野に:総務省のデータでは中古スマホの販売台数は5年間で約1.7倍に拡大し、新品比10.7%まで成長。今後はキャリアの認定中古品(CPO)と中古端末市場の関係も検討論点として挙がっており、利用者の選択肢はさらに広がる方向です。認定中古品の仕組みについては、Google認定再生品とは?も参考になります。

スマートウォッチ・ウェアラブルユーザーへの影響

Apple Watch・Galaxy Watch・Pixel Watchなどスマートウォッチを使うユーザーにとっても、無関係な話ではありません。スマートウォッチのセルラーモデルはiPhoneやAndroidスマホとセットで契約・購入することが多く、その親機であるスマホを残クレで購入するケースが大半だからです。

たとえば、Apple Watch Ultraのセルラーモデルを購入する際にiPhoneを「いつでもカエドキプログラム」で契約するパターンや、Galaxy Watchを「スマホトクするプログラム」のGalaxyフラッグシップとセットで契約するパターンは典型例です。残クレのルール見直しによって、これらの「セット契約時の実質負担額」の計算が変わる可能性があります。Apple Watchセルラーモデルの契約先選びは、Apple Watchセルラーは格安SIMで契約できる?対応5キャリアの料金を比較【2026年】もあわせてチェックしておくと安心です。

もうひとつ気にしたい点が、Apple Watch本体は端末購入プログラムの「スマートウォッチ」グループに含まれているケースがあり、今回のとりまとめ案でも「iPhone」「Androidスマホ」「タブレット」「スマートウォッチ」という大括りグルーピングが具体例として明示されています。スマートウォッチの残価率算出も、同じ枠組みで見直しの議論対象になる可能性があります。

今後のスケジュール

専門委員会のとりまとめ案は、今後以下のプロセスで正式な制度改正につながる予定です。

・2026年6月24日:専門委員会で「とりまとめ2026(案)」を提示
・2026年7月以降:親会である市場検証委員会に報告・議論
2026年秋頃:「令和7年度評価」として答申予定(意見募集を経て)
・答申を踏まえ、所要の制度改正を順次実施

残クレの算出ルールについては、RMJの新たな分類表の作成や、業界関係者との詳細協議が並行で進む見込みですが、客観的基準作成に一定の時間を要することを踏まえると、販売現場の実際の変化は2027年以降に段階的に出てくる、というのが現実的な見通しです。

まとめ:方向性は示された、ただし「現状維持」の見方も強い

これまで利用者の多くが何となく「お得感」を感じながら使ってきた残クレ(端末購入プログラム)。実は、その「お得感」の根拠である残価率の設定に、キャリアの裁量による“さじ加減”の余地が残っていたのが現状です。

2026年6月24日の総務省とりまとめ案は、その裁量を排除し、機種ごとの本来の市場価値を反映した「公平で説明可能な残価率」を目指す方向性を示しました。一方で、Appleの猛反対もあって「全機種・全キャリア一律」の大胆案は不採用となり、具体的な算出ルールの詳細設計はこれから関係者と協議していく段階です。客観的基準の作成や分類表の整備には時間がかかるため、当面は「現状維持」となる見方も強いのが実情です。

スマートフォンや関連デバイスの購入を予定している方は、現時点での「実質負担額」の表示が将来も同水準で続くとは限らない、という点を頭に置きつつ、当面は今のキャリアの残クレ・キャンペーンが大きく変わらない前提で検討してよさそうです。秋以降の答申や、各キャリアの新しいプログラムの動きを継続的にチェックしておきたいところです。

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Source: 総務省 情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会 市場検証委員会 利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会(第8回)配布資料

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