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スマートウォッチにAIが乗る、という話はここ数年ずっと聞こえていました。ただ実際に手首で使えるものとなると、まだ試作品や一部モデルの話にとどまっていたのも事実です。
その状況が今秋に変わりそうです。watchOS 27でApple WatchがSiri AIに対応することで、一気に多くの人の手首でAIが動き始めます。
米Computerworldのコラムニスト、Jonny Evans氏は2026年7月29日付の記事で、これによってApple Watchが世界で最も広く使われるウェアラブルAIの基盤になると指摘しています。同氏の見立てをもとに、watchOS 27のSiri AIで何ができるようになるのかを整理します。なおスマートウォッチの出荷台数のうち25%がEdge AI対応で、その約9割をAppleが占めるという調査もあり、規模の面では確かに突出しています。
watchOS 27で、手首からSiri AIを呼び出せるようになる
操作そのものはシンプルです。Digital Crownを押すと、Appleの新しい光るアイコンが画面に現れます。アプリ一覧からも呼び出せます。
注目したいのは、この見た目と操作感がiPhone・iPad・Mac・Apple Watch・Vision Proのすべてで同じだという点です。デバイスごとに別物を覚え直す必要がなく、ひとつの製品として扱えるようになります。ベータ版で公開された機能の全体像はwatchOS 27パブリックベータのまとめ記事で紹介しています。

ただし、iPhoneが必要になる
ここは先に押さえておきたいところです。Apple WatchのSiri AIは、Apple Intelligenceに対応したiPhoneが処理を担当します。時計が単独で考えているわけではありません。
つまり、対応iPhoneを持っていないとこの機能は使えません。Apple Watchだけを買い替えても手に入る機能ではない、という点は理解しておく必要があります。
会話の履歴が残り、iPhoneの続きを手首で再開できる
Siriアプリでは、過去のSiriとのやりとりをさかのぼって見られます(この機能はオフにもできます)。途中だった会話を開いて、続きから話を再開することも可能です。
会話の履歴はiCloud経由でプライベートに同期されるため、iPhoneで始めた相談を、あとから手首で続けるという使い方ができます。あとで見返したい会話はピン留めしておけます。
質問への回答だけでなく、アプリの起動や、「特定の日の歩数は?」といった込み入った問い合わせにも答えます。ウェブから最新の情報を引いてくることもできます。
本当の価値は「パーソナルコンテキスト」にある
Evans氏がこのアップデートで最も重要だとしているのが、パーソナルコンテキストへの対応です。
手首のスマートウォッチから、メッセージやメール、メモといった自分の情報の中身にアクセスできるようになります。連絡先を探してそのまま電話をかける、玄関の暗証番号を確認する、仕事で顧客の情報を引く。こうした操作を、スマートフォンを取り出さずに済ませられます。
Appleが示している例のひとつが「スペインに行ったときの写真を見せて」というものです。これで実際にその写真が出てきます。さらに追加で質問を重ねて、会話を自然に続けていくこともできます。ひとつずつ独立した命令を出す従来のやり方とは、使い勝手が変わってきます。
アプリの中で動くこともできます。自宅までの道順を出す、メールを送る、プレイリストを再生する。もっと細かく「ブランドンが送ってくれた曲をかけて」といった指示も通ります。
電話中に必要な情報を出す「Call Context」
新しく加わるCall Contextは、企業に電話をかけたときに、関連する情報をアプリの中から先回りして出してくれる機能です。
たとえば航空会社に電話しながら、メールの中にある予約確認番号を探し出す、といった使い方ができます。電話をかけながら必要な情報を探し回るのは地味に面倒な作業なので、ここが自動化されるのは実用的です。
Evans氏はこれを、デバイス側の知能で日常の細かい手間を取り除くというAppleの戦略を分かりやすく示した例だと評価しています。
いまできないこと
一方で制約もあります。Apple WatchからMacやiPhone、iPadのアプリを遠隔で動かすことはできません。Evans氏はこの点を歯がゆいと書いています。
代わりにできるのが、ショートカットの実行です。iPhone側で対象のショートカットを選び、「Apple Watchで表示」をオンにしておけば、手首から、しかも音声でも実行できるようになります。
今は限られた使い方ですが、より複雑なアプリがショートカットに対応し、App Intentsを取り入れる開発者が増えていけば、手首から何段階もある作業をまとめて走らせることも難しくなくなる、というのが同氏の見立てです。ベータの更新状況はwatchOS 27 beta 4の記事でも追っています。
なお、watchOS 27ベータを実際に試した範囲では、パーソナルコンテキストを使った問い合わせは印象的だった一方、まだ不安定な部分も残っているとのことです。あくまで第1世代の機能であり、期待は持てるものの完成度はこれからという段階です。
開発者はすでに動き始めている
ウェアラブルAIの可能性を試す動きは、すでに開発者側から出てきています。
Evans氏が例に挙げているのがGranolaです。ノートパソコンを持ち込まない対面の打ち合わせで、メモを取るために作られたApple Watchアプリです。
手首をタップすると画面が緑に変わり、音が鳴って相手にも録音していることが分かるようになっています。あとは普通に話を進め、終わったらアプリを止めるだけ。まとまった議事録と要約、それに次にやることのリストが出てきます。
ただしEvans氏は、開発元のサイトにプライバシーとデータ保持についての説明が見当たらない点を懸念として挙げています。この種のツールは、Appleのオンデバイス音声認識APIがwatchOSに広がっていくにつれて、より安全な形に整っていくだろうとも書いています。
スマートグラスへの布石でもある
そして最後に、この記事で最も示唆的なのがこの指摘です。
watchOSとSiri AIをめぐってAppleが下す判断は、将来のAIスマートグラスの土台になる——Evans氏はそう見ています。
手首という小さな画面で、AIとどう会話させるか。どこまでを本体で処理し、どこからをiPhoneに任せるか。プライバシーをどう扱うか。こうした設計の答えは、そのまま眼鏡型のデバイスにも引き継がれていくことになります。そのアップル初のスマートグラスは2027年のWWDCでお披露目されるのではないかとも報じられています。
まとめ
watchOS 27のSiri AIは、単に「時計でAIが使える」という話にとどまりません。すでに多くの人が身につけている端末に、AIがまとめて配られるという点に意味があります。
現時点ではiPhoneが必要で、動作もまだ完成しきってはいません。それでも、パーソナルコンテキストやCall Contextのように、日々の細かい手間を減らす方向に機能が向いているのは分かりやすい変化です。
正式版は今秋の配信予定です。直前のwatchOS 26.6は不具合修正のみの内容だったので、大きな変化は27で一気に来ることになります。手元のApple WatchとiPhoneが対応しているかを含めて、続報を待ちたいところです。
Source: Computerworld「Apple preps for a wearable AI revolution」(Jonny Evans氏)
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