恵寿総合病院がスマートウォッチを入院患者に「世界初」の本格運用|HUAWEI WATCH D2で血圧・心拍数・SpO2を電子カルテへ

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「Smartwatch meets Hospital」のボードを持つ会見の登壇者4人。ボードには恵寿総合病院、HUAWEI、ソフトウェア・サービスのロゴ

石川県七尾市の恵寿総合病院は2026年10月19日に記者会見を開き、市販のスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D2」で入院患者のバイタルを測り、電子カルテに自動で記録する運用を、この日から本格的に始めたと発表しました。運用の開始日と300台の導入は10月2日の発表で明らかにしていて、会見ではそのしくみと、選んだ理由、今後の考えを説明しました。

家電量販店で買える腕時計型の血圧計を、入院患者が着けて病院のインフラとして使う取り組みです。

理事長は「点から線へ」と看護師の時間を強調 質疑応答では対象の患者やデータの置き場所に質問

恵寿総合病院の記者会見の会場。KEIJUのロゴの前に登壇者が並び、記者が説明を聞いている

恵寿総合病院の記者会見の様子(画像:恵寿総合病院)

会見で神野正博理事長は、次の3つを強調しました。

・看護師が測ったときだけの「点」の記録が、ウォッチで「線」になり、いくつもの線を重ねて「面」で見られるようになる
・ウォッチ自体は誰でも買える製品だが、その値が電子カルテに自動で届き、急変のリスクを示す早期警告スコアにまでつながるところが新しい
・測定と記録を機械に任せて生まれた時間を、看護師が患者との会話や直接のケアに使う

そのあとの質疑応答では、記者から、300台をどんな患者に着けるのか、血圧の精度は確かか、看護師の時間はどれだけ減るのか、データはどこに置かれるのかといった質問が出ました。この記事では、会見の説明と質疑応答の内容を、順に紹介します。

会見場の画面に映した「SMARTWATCH meets HOSPITAL」「世界初」のスライドと、台に並べたHUAWEI WATCH D2の箱と本体

会見場に置かれた「世界初」の画面とHUAWEI WATCH D2(画像:恵寿総合病院)

病院はこの取り組みを「世界初」としています。病院の特設ページによると、スマートウォッチを病院で使う例はこれまで、医療スタッフが業務や連絡のために着けるものが中心でした。入院患者自身が着けて、バイタルを自動で測り電子カルテに記録するしくみを本格的に動かすのは世界で初めてだという説明です。

測った値は入力者「スマートウォッチ」で電子カルテへ 管理画面ではアラートも

恵寿総合病院のスマートウォッチの構成図。病室のWatch D2からBluetoothでアクセスポイントへ送り、バイタル情報サーバーから電子カルテサーバーとナースステーションのバイタル統合管理画面へつながる

画像:恵寿総合病院の記者会見資料

会見は、神野理事長が資料を映しながら、しくみを説明するところから始まりました。患者が着けたHUAWEI WATCH D2は、測った値をBluetoothで病棟のアクセスポイントへ送ります。データは今回新しく設けたバイタル情報サーバーに入り、そこから電子カルテと、ナースステーションの「バイタル統合管理画面」に届きます。管理画面では、患者ごとのバイタルに加えて、ウォッチの電池の減り具合も確かめられます。

10月19日に公開された病院の特設ページ「Smart Hospital KEIJU」によると、管理画面では、あらかじめ決めた値を外れると自動でアラートが出て、看護師がすぐに様子を見に行けます。病院は、夜勤の12時間に看護師1人が歩く歩数が平均11,871歩にのぼるとして、巡回の移動にかけていた時間も患者の観察とケアに回したいとしています。

病棟のスタッフステーションで、壁の画面に映したバイタルの管理画面を説明している様子

病棟見学で、看護師が確かめる管理画面を説明する様子(画像:恵寿総合病院)

恵寿総合病院の電子カルテ画面。スマートウォッチで測った血圧と脈拍が、入力者「スマートウォッチ」として記録されている

画像:恵寿総合病院の記者会見資料

理事長が会見で示した電子カルテの画面では、ウォッチが測った血圧や脈拍の「入力者」の欄に「スマートウォッチ」と表示されています。看護師が測った場合は、ここに看護師の名前が入ります。

10月2日の発表によると、電子カルテに自動で入るのは血圧、心拍数、SpO2の3項目です。病院はこれまでも、電子カルテのバイタルから急変のリスクを点数で示す「早期警告スコア(NEWS)」を自動で計算してきました。ウォッチのデータもこのしくみに組み込み、定時の測定だけでなく、より細かいデータでリスクをとらえるとしています。会見でも理事長は、ウォッチの記録に合わせて早期警告スコアの値が変わっていく画面を見せました。

血圧・心拍数・SpO2・体温・睡眠の5項目を測定 睡眠分析は会見当日から

HUAWEI WATCH D2で測る項目。血圧、心拍数、SpO2、体温、睡眠分析の5つと、それぞれの測り方

画像:恵寿総合病院の記者会見資料

会見資料に示された測定項目と、病院での使い方は次のとおりです。

項目 測り方と使い方
血圧 設定した時刻に自動で測ることもできる。いまは患者の顔を見て様子を確かめるため、看護師が病室を訪れて一緒に測る
心拍数 着けている間、自動で測り続ける
SpO2(血中酸素飽和度) 着けている間、自動で測り続ける(参考値)
体温 皮膚の温度を測る。周りの温度の影響を受けるので参考値だが、上がり下がりの傾向を見るのに役立つ
睡眠分析 10月19日から開始。眠りと目覚めのリズムの乱れや不眠の参考にし、せん妄や転倒の兆しに早く気づく手がかりにする

HUAWEI WATCH D2の画面に収縮期98・拡張期61mmHg、脈拍81bpmの血圧測定結果と再測定ボタンが表示されている

HUAWEI WATCH D2の血圧の測定結果の画面(画像:恵寿総合病院)

血圧は、光学センサーで推定するのではなく、ベルトの中のカフ(空気で膨らむ袋)が実際に膨らんで腕を締め付けて測ります。理事長は会見で、仕組みはふつうの血圧計と同じだと説明しました。いきなり腕が締まると患者が驚いてしまうため、日中は看護師がそばで「一緒に測りましょう」と声をかけて測っています。夜については、睡眠の状態が分かるようになったので、眠りを妨げないようにして自動で続けて測れるようになると話しました。ただし、ファーウェイの製品ページによると、HUAWEI WATCH D2の睡眠中の自動血圧測定は、管理医療機器認証の範囲外です。

病室のベッドに横になった患者役の職員の手首のHUAWEI WATCH D2を、看護師が操作して測定を実演している。周りで報道陣が撮影している

病室でのバイタル測定の実演。患者役は病院の職員です(画像:恵寿総合病院)

睡眠分析は、ふつうは起きたあとに結果が出る機能です。病院では、眠っている間にも結果を確かめられるように手を加えています。

理事長は、ベッドにセンサーを付けて寝ている間の状態を見る「スマートベッド」にも触れました。急性期の病院では患者に昼は歩いてリハビリをしてほしいので、ベッドにいるときしか測れないのでは足りないとして、身に着けるウォッチを選んだと説明しています。

HUAWEI WATCH D2の決め手は医療機器認証と電池の持ち 理事長は「これで決まり」と直感

HUAWEI WATCH D2。カフを内蔵したバンドで血圧を測るスマートウォッチ

HUAWEI WATCH D2(画像:HUAWEI)

神野理事長がファーウェイと初めて会ったのは2024年11月です。会見では、そのときにHUAWEI WATCH D2を2025年2月に発売すると聞き、「もうこれで決まり」と直感したと振り返りました。それまでは米国のメーカーとも、患者に着けてもらえるスマートウォッチがないか話し合っていましたが、電池の持ちや仕組みの面でうまく進まなかったそうです。HUAWEI WATCH D2は、実際に2025年2月13日に日本で発売されています。

記者会見で話す恵寿総合病院の神野正博理事長

会見で説明する神野正博理事長(右)(画像:恵寿総合病院)

会見資料と理事長の説明で挙げられた選定の理由は、次の6つです。

・血圧計として日本の管理医療機器の認証を受けている
・電池が長く持つ。特設ページによると1日6回の自動測定でも約6日持ち、平均11.0日の入院を少ない充電で乗り切れる(理事長は会見で、うまくいけば10日持つと話した)
・大型の家電量販店で売っていて、手に入りやすい
・高齢の患者にも、管理する側にも扱いやすい
・多機能で、アプリを入れて機能を足していける
・病院の使い方に合わせてカスタマイズできる

恵寿総合病院がHUAWEI WATCH D2を選んだ理由をまとめた記者会見のスライド。日本の管理医療機器認証、長時間バッテリー、手に入りやすさ、高齢者にも優しい設計など

画像:恵寿総合病院の記者会見資料

医療に特化した専用機ではなく、民生品のスマートウォッチであることも、理由の一つとして挙げていました。特設ページでは、スマートフォンを持たない高齢の人でも、腕時計なら抵抗なく着けられると説明しています。

質疑応答で答えた300台の対象と血圧の精度

集中治療室の患者や、痩せていて血圧を測れない患者は対象外

チェックのパジャマを着た入院患者の左手首に着けた、黒いバンドの四角いスマートウォッチ HUAWEI WATCH D2

入院患者の手首に着けたHUAWEI WATCH D2(画像:恵寿総合病院)

恵寿総合病院の病床数は386床です。導入した300台をどんな患者に着けるのかという質問に、神野理事長は、次のような患者を除いて、まずは300台から始めたと答えました。

・集中治療室の患者(もっと多くのセンサーをすでに着けている)
・まもなく退院する患者
・認知症などで、ウォッチを着けること自体を嫌がる患者
・とても痩せていて、いちばん細いバンドでも腕を締め付けられず、血圧を測れない患者
・皮膚がただれているなど、シリコンのバンドが肌に合わない患者

着けるかどうかは、あくまで患者に協力してもらう形です。

病院は「ほかの血圧計と比べて差はなかった」と説明

着け方のずれや皮膚の状態で誤差が出ないかという質問に、神野理事長は、HUAWEI WATCH D2は国の認証を受けた管理医療機器であり、病院の看護部でもほかの血圧計と値を比べたところ差はなかったと答えました。比べた件数や数値は示していません。ファーウェイ側も、治験のデータなどを病院の看護部に提出していると補足しました。

実証では高リスクから急変につながった例はなし 中リスクで医師に報告

2025年6月13日に始まった実証で何が分かったかという質問には、看護部長が答えました。実証に選んだのは比較的バイタルが安定した患者の病棟だったため、早期警告スコアが高リスクになり、そのまま急変につながった例は1例もありませんでした。中リスクになった場合は医師に報告し、早めに対応していたと説明しています。

質疑応答で答えた看護師の時間と費用

看護師の時間がどれだけ減るかは数字で示さず

どれくらい時間を減らせるかという質問に、神野理事長は、脈拍やSpO2を測る時間は減らせるとしながらも、血圧はいまも看護師がそばで一緒に測っているため、直接どれだけ減ったかを示すのは難しいと答えました。そのうえで「明らかにケアの質は上がる」と述べています。

恵寿総合病院の医師と看護師の時間外勤務時間の推移。医師は2021年の月45時間から2025年の月18.5時間、看護師は月10.1時間から月2.5時間に減少

画像:恵寿総合病院の記者会見資料

会見資料によると、病院全体では、電子カルテ、RPA、生成AI、業務用iPhoneなどのDXを重ねてきた結果、看護師の時間外勤務は2021年の月10.1時間から2025年の月2.5時間に、医師は月45時間から月18.5時間に減りました。理事長は、スマートウォッチもこの取り組みの一つだと位置づけています。

費用は「DX加算が一つの武器になる」と理事長

スマートウォッチには診療報酬の裏付けがないが、費用とのバランスをどう考えるかという質問も出ました。神野理事長は、人が多くない病院で質と効率を保つにはDXが絶対に必要だとしたうえで、診療報酬には情報共有や時短につながる取り組みで看護師の人数を1割減らしてもよいとする「DX加算」があり、それが一つの武器になるとの見方を示しました。

質疑応答で答えたデータの置き場所と持ち込みのウォッチ

ファーウェイは「データには触れない」と説明

300人分のデータをファーウェイが使う予定はあるかという質問に、ファーウェイ・ジャパンの担当者は、データはアクセスポイントから病院のサーバーに入るので、すべて病院のものであり、自社が触れることはないと答えました。神野理事長も、病院の中で閉じた仕組みなので外に漏れる心配はないと説明しています。

電子カルテとの連携を手がけた株式会社ソフトウェア・サービスの担当者は、受け取ったデータをサーバーとソフトウェアの両面のセキュリティで守っていると補足しました。

自分で買ったウォッチはそのままではつながらない

市販のウォッチを持ち込めばつながるのかという質問には、すぐにはつながらないと答えています。病院のシステムにつなぐには、ウォッチと病院のシステムを結びつける設定の作業が必要です。転んで壊したり落としたりすることは、ほかの医療機器や職員のスマートフォンと同じく想定済みだとしています。

今後は生成AIと在宅医療も視野 全病棟へは2027年1月中旬の予定

今後の使い方について神野理事長は、ウォッチのデータに、医療者が五感で感じたこと、放射線の画像、血液検査などのデータを組み合わせ、生成AIで診断や治療の内容に踏み込めるはずだとの考えを示しました。恵寿総合病院の電子カルテには、すでに生成AIが入っています。

在宅医療への広がりについても質問が出ました。理事長は、病院で使って気に入った患者が家でも同じウォッチを買い、血圧や脈拍を自分で管理する使い方はありうると答えました。スマートフォンからデータを送る仕組みを作れば、AIで健康状態を見たり、かかりつけ医に警告を送ったりできる可能性があるとの見方です。ただし、具体的な仕組みや計画は示していません。

ファーウェイ・ジャパンは、東京、名古屋、大阪、九州の拠点と全国のパートナー企業と組んで、このソリューションをほかの病院にも広げたいとしています。海外では、ドイツ、デンマーク、オーストラリア、シンガポール、ベトナムで同じような実証を進めていると話しました。

「Smartwatch meets Hospital」のボードを持つ会見の登壇者4人。ボードには恵寿総合病院、HUAWEI、ソフトウェア・サービスのロゴ

会見の登壇者(画像:恵寿総合病院)

病院内での広がりについて、会見では時期の説明はありませんでしたが、特設ページでも「導入台数を増やし、全病棟へ」としています。10月2日の発表では、2027年1月中旬までに全病棟で使い始める予定です。

医師や看護師が十分にいるとはいえない能登で、この仕組みを入れる意味を問われた神野理事長は、「能登だから東京と同じ医療が受けられない」ということは絶対に避けたいと話しました。会見資料では、この考えを「テクノロジーは、より人間らしいケアのために」とまとめています。

ふだん手首で血圧や心拍数を測っている人にとっても、そのデータが病院でどう使われ始めたのかが見える会見でした。10月2日の発表や、2025年6月に始まった実証など、ここに至るまでの経緯は下の関連記事で紹介しています。

Source: 恵寿総合病院 記者会見(2026年10月19日)/Smart Hospital KEIJU(恵寿総合病院)

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