SOXAIがショートスリーパー堀大輔さんのリング記録を分析|睡眠判定1日54.8分・最長29分 Cole–Kripke法の測定原理も解説

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SOXAI RING 2 のカラーバリエーションを並べた製品画像

2026年10月27日、スマートリング「SOXAI RING」を開発するSOXAIの代表・渡邉達彦氏が、ショートスリーパーとして活動する堀大輔氏の「1週間30分睡眠チャレンジ」について、リングの記録を分析したレポートを公開しました。SOXAI RING 2が睡眠と判定したのは9月9日〜16日の合計6時間2分、24時間あたり54.8分でした。

レポートのタイトルは「スマートリングによる睡眠推定の測定原理の解説と睡眠候補時間の分析」。全21ページで、参考文献は33本あります。

渡邉氏は10月27日、Xで次のように投稿してレポートを公開しました。

報道では54.8分という数字が取り上げられていますが、レポートの大半は「スマートリングは睡眠をどう推定しているのか」「その数字から何が言えて、何が言えないのか」の解説に充てられています。この記事では、数字の前提になっている測定の仕組みと検証データを、論文の構成に沿って紹介します。

SOXAI RINGの睡眠判定は1週間で合計362分 24時間あたり54.8分

分析の対象は、9月9日20時00分から9月16日10時40分未満までの9,520分です。9月9日は20時まで「非装着」の判定が途切れず続いていたため、リングを着けた時刻をここと見なしています。使われた機種は現行の「SOXAI RING 2」です。

リングを装着していて、かつ1分ごとの判定が「睡眠」だった記録が途切れずに続いた範囲を「睡眠候補区間」と数えると、76区間・合計362分になりました。日ごとの内訳は次のとおりです。

日付(日本時間) 睡眠と判定された時間
9月9日(20時以降のみ) 2分
9月10日 1時間4分
9月11日 7分
9月12日 1時間27分
9月13日 50分
9月14日 30分
9月15日 1時間30分
9月16日(10時40分まで) 32分
合計 6時間2分

76区間のうち、10分以上続いたものは8区間・182分、10分未満が68区間・180分です。いちばん長い区間は9月15日3時10分からの29分で、30分を超えて「睡眠」が続いた区間はありませんでした。

SOXAI RING 2が9月9日20時から9月16日10時40分までに睡眠と判定した時間帯を、1分単位で日付ごとに青く塗ったカレンダー図

1分ごとの睡眠判定を、日付を横軸・時刻を縦軸にして並べた図(出典:渡邉達彦「スマートリングによる睡眠推定の測定原理の解説と睡眠候補時間の分析」図5)

カレンダーにすると、9月11日と15日を除く5日で、2時台に20分台のまとまった判定が出ているのが分かります。10分以上の8区間のうち6区間が、2時台か3時台に始まっています。

開始〜終了(日本時間) 連続した分数
9月10日 2:13〜2:36 23分
9月10日 14:19〜14:44 25分
9月12日 2:09〜2:34 25分
9月13日 2:10〜2:35 25分
9月14日 2:13〜2:36 23分
9月15日 3:10〜3:39 29分
9月15日 8:43〜8:53 10分
9月16日 2:14〜2:36 22分

54.8分は装着中に体の動きから「睡眠」と判定された分の合計で総睡眠時間ではない

レポートは、この54.8分を「生活上の1日当たり総睡眠時間の推定値ではない」と明記しています。理由は3つあります。

1つ目は、判定のもとが体の動きだけだという点です。今回集計したのは後述する「第1段階」の判定で、指の動きが少ない状態が続いた時間を「睡眠の可能性が高い」と分類したものです。脳波で確かめた睡眠ではありません。横になって静かに本を読んでいるような覚醒は睡眠と判定されやすく、逆に寝ている間の寝返りが覚醒と判定されることもあります。

2つ目は、リングを外していた時間を数えていない点です。非装着と判定された1分は集計から除かれているため、その間に眠っていたかどうかは分かりません。対象期間内の非装着判定は29回で、連続しても最長4回の散発的なものでした。レポートは、装着中の一時的な誤検知を含む可能性があるとしています。

3つ目は、装着者を特定する仕組みではない点です。「装着あり」は機器による判定で、装着者が誰かを証明するものではない、とレポートは書いています。

76という区間の数も、眠りに入った回数とは違います。途中に1分でも覚醒の判定が入れば区間は分かれるため、判定のゆらぎで数が増えたり減ったりします。

1分ごとの判定は前4分と後2分の動きも足して決めるCole–Kripke法

SOXAI RING 2の睡眠分析は2段階になっています。第1段階では指の動きだけを使って「睡眠の可能性が高い時間帯」を1分ごとに判定し、31分以上続いた区間だけを第2段階の機械学習モデルに渡します。第2段階では動きに心拍数と心拍変動を加えて、睡眠・覚醒と睡眠ステージを分析します。

SOXAI RING 2の睡眠分析の流れ。第1段階で体動とCole–Kripke法により1分ごとに睡眠候補を抽出し、31分以上の区間を心拍情報とあわせて第2段階の機械学習モデルで分析する

SOXAI RING 2の二段階の睡眠解析(出典:同レポート図1)

今回の分析で使われたのは第1段階の判定だけです。最長の区間が29分だったため、どの区間も第2段階の入力条件である31分に届いていません。31分未満でも第1段階の判定は1分ごとに記録されているので、それを集計しています。

第1段階で使われているのが、1992年に睡眠学会誌「SLEEP」で発表されたCole–Kripke(コール・クリプキ)法です。判定したい1分の活動量に加えて、その直前4分と直後2分の活動量にそれぞれ重みを掛けて足し合わせ、スコアが1未満なら睡眠、1以上なら覚醒とします。前後の動きも見るので、一瞬の寝返りや短い静止をそれだけで覚醒や睡眠と決めつけずに済みます。

原著では41人の手首の活動量と、脳波などを同時に測る睡眠ポリグラフ検査(PSG)を比べ、睡眠・覚醒の一致率は約88%でした。ただしレポートは、別の研究で覚醒を見つける力(覚醒特異度)が低いことも紹介しています。Marinoらの研究では、手首での一致率0.863・睡眠感度0.965に対して、覚醒特異度は0.329でした。眠っている時間はよく拾える一方、静かに起きている時間を睡眠と取り違えやすい、という性質です。

指は手首と動き方が違うため、SOXAIは係数を指向けに独自に調整しています。動きの量は、加速度の信号が基準を横切った回数を数える「ZCM」という方式で数えています。

医療用の活動量計AMIとの一致率は98.40% ただしFDA認証の製品ではない

係数を調整する際の基準に選ばれたのが、米Ambulatory Monitoring(AMI)の活動量計「Motionlogger」です。手首に着ける活動量計(アクチグラフ)で、睡眠研究で長く使われてきました。

レポートは、この機器の米国での位置づけを丁寧に説明しています。AMIの「WRIST ACTIGRAPH」は1986年6月25日にFDAの510(k)クリアランス(K854030)を取得しています。510(k)は、すでに販売されている機器と使用目的や安全性・有効性が実質的に同等であることを示す手続きで、一般に「FDA認証」と呼ばれがちですが、承認(PMA)とは別の制度です。レポートは「FDAの510(k)クリアランスを取得した機器」と書き分けています。また、クリアランスはCole–Kripke法そのものが認められたことを意味しない、としています。

東京大学とSOXAIの共同研究では、11人・各2夜でAMIとSOXAI RING 2を同時に着け、1分ごとの判定を比べました。

AMIの判定\SOXAIの判定 覚醒 睡眠 合計
覚醒 346 132 478
睡眠 18 8,872 8,890
合計 364 9,004 9,368

9,368分のうち9,218分で判定が一致し、一致率は98.40%でした。AMIが睡眠とした8,890分のうち8,872分をSOXAIも睡眠としています(99.80%)。

ただし、これは基準にした機器と同じように判定できるかを示す数字で、脳波に対する正確さではありません。両方の機器が静かな覚醒を同じように睡眠と取り違えれば、一致率は高く出ます。レポート自身が「その誤りを除外するものではない」と書いています。

睡眠検査(PSG)との一致率は91% Apple WatchやOuraと並ぶ水準

脳波を含む睡眠ポリグラフ検査(PSG)と比べた結果も載っています。SOXAI RING 2が最終的に出す睡眠・覚醒の判定をPSGと比べた11人×2夜の検証では、一致率91%、偶然の一致を差し引いて評価するカッパ係数は0.42でした。

他社の数字は、Millerらが53人・各1夜で6機種を比べた2022年の研究から引かれています。

機器 一致率 カッパ係数
SOXAI RING 2 91% 0.42
Apple Watch 88% 0.30
Garmin 89% 0.35
Polar 87% 0.44
Oura 89% 0.51
WHOOP 86% 0.44
Somfit 87% 0.48

SOXAIの行は別の被験者・別の研究の数字で、同じ人で同時に比べたものではありません。レポートも「機器間の順位や優越性を確定する表ではない」と注記しています。夜の睡眠は睡眠の時間が大半を占めるので、一致率は高く出やすく、カッパ係数のほうが差が見えやすい点も頭に入れておきたいところです。

Chinoyらが34人を3夜ずつ調べた研究では、消費者向けの睡眠計測機器は睡眠感度が高い一方、覚醒特異度は低〜中程度で、睡眠が不良・断片的な夜ほど性能が下がる傾向がありました。レポートはこの研究を挙げて、夜間のまとまった睡眠での検証成績を、今回のような短く途切れた判定にそのまま当てはめることはできない、としています。

心拍と体動を組み合わせた4段階の睡眠ステージ判定は77.2%

第2段階の機械学習については、東京大学・英国エセックス大学との共同研究が紹介されています。健康な成人9人・18夜のPSGを基準に、脈波から取った心拍の間隔と体の動きを組み合わせて、軽量なニューラルネットワークで睡眠ステージを分類しました。成果は2025年にIEEEの計測系の論文誌に掲載されています。

分類 対象クラス 心拍のみ 心拍+体動
2分類 覚醒/睡眠 84.9% 86.6%
3分類 覚醒/ノンレム/レム 80.5% 83.2%
4分類 覚醒/浅睡眠/深睡眠/レム 75.0% 77.2%
5分類 覚醒/N1/N2/N3/レム 66.3% 67.1%

数字は「UAR」という指標で、覚醒・浅睡眠などのクラスごとに正解した割合を出し、それを平均したものです。出現回数の多いクラスだけで成績が決まらないように、全クラスを同じ重みで扱っています。どの分類数でも、心拍に体動を加えると成績が上がりました。

4分類の77.2%は、Oura Ringの研究(75.4%)、Galaxy Watchの研究(71.7%)、Fitbitの研究(68.1%)の報告値と並べて載っています。これも被験者や評価方法がそろった同時比較ではない、とレポートは注記しています。

SOXAI RING 2の脈波の測り方は「Deep Sensing」と呼ばれる独自の設計です(特許第7655609号)。LEDの片側に3つの受光素子を異なる角度で配置し、一定時間ごとにいちばん強い信号が取れる素子を選び直します。光源と受光素子の角度を広げると、信号の強さは落ちる代わりに拍動成分の割合が上がる、という光学シミュレーションの結果も示されています。

マイクロスリープは1分単位の判定では数えられない

チャレンジ中、短い眠り「マイクロスリープ」が話題になりました。レポートはこれにも1章を割いています。

手首にウェアラブル端末を着けたままベッドで眠っている人

1分ごとの判定は、数秒単位の短い眠りを数えるものではない(画像:Unsplash)

マイクロスリープは研究によって定義が異なり、Poudelらの研究では課題中に起きた0.5〜15秒の反応の途絶えとまぶたの閉じかけを扱っています。一方、Cole–Kripke法は1分ごとに、前後の動きも含めて判定する仕組みです。数秒の出来事を検出して数えるものではありません。

そのため、短い「睡眠」判定がたくさん出たことを、マイクロスリープの回数や合計時間と読み替えることはできない、とレポートは結論づけています。同時に、このデータはマイクロスリープが起きなかったことを証明するものでもない、としています。それを調べるには、脳波や目の状態、反応を秒単位で照らし合わせる必要があります。

次の検証では反応の速さを測るPVTを提案

レポートは最後に、睡眠が短いことが日中の働きにどう影響するかを調べる方法として、「精神運動覚醒検査(PVT)」を取り入れることを提案しています。不規則な間隔で出る合図にできるだけ早く反応する10分間の課題で、反応時間と、500ミリ秒以上かかった反応(注意の途切れ)の回数を記録します。

昼間、自宅の机に突っ伏して眠っている男性

短い睡眠が日中の働きにどう響くかは、睡眠の記録とは別の方法で測る必要がある(画像:Unsplash)

睡眠を十分にとった日の成績を基準に取っておき、短眠の日にどれだけ落ちるかを同じ時刻・同じ機器で比べる、という設計です。慢性的な寝不足では、本人が眠いと感じていなくても認知機能が落ちることがあるため、自己申告だけでは判断できないとしています。根拠に挙げられているVan Dongenらの2003年の実験は、6時間睡眠を2週間続けると徹夜2晩ぶんまで成績が落ちたという研究です。今回の期間にはPVTを実施していないので、機能低下があったかどうかは結論を出していません。

渡邉氏は9月19日のXへの投稿で、SOXAIはスポンサーとしてお金を出しておらず、検証のためにリングを提供した立場だと説明しています。1週間以上のデータを充電なしで取りきれたことを成果に挙げる一方、「取り組みが成功した」と「堀さんの主張が証明された」は別の話だとも書いていました。

スマートリングやスマートウォッチの睡眠時間は、どれもこうした推定の積み重ねで出ている数字です。アプリに出る睡眠時間を見るときは、機器が何を測っていて、何を推定しているのかを知っておくと、数字との付き合い方が変わってきます。SOXAIの製品や、スマートリングの仕組みについては下の記事でも紹介しています。

Source: 渡邉達彦「スマートリングによる睡眠推定の測定原理の解説と睡眠候補時間の分析」

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