筆者はApple Watchの睡眠アプリ「AutoSleep」で睡眠を毎日計測しているのですが、そこで気にしている指標の一つが「睡眠バンク」です。
睡眠不足気味の日が続くと、この「睡眠バンク」の表示は「負債」になり、「12時間の借金」などと表示されます。 睡眠でも現実のお金でも、借金の状態だと言われると怖いですよね……。
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なお「睡眠負債」という言葉は、このアプリ独自のものではなく、広く使われている言葉です。
今回はその概念について解説します。
以下は記事の要約です:
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睡眠負債とは:慢性的な睡眠不足が続く状態。毎日の睡眠不足が蓄積され、心身に支障をきたす。
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睡眠負債が引き起こす問題:精神機能の低下(眠気、意欲低下、記憶力減退)、ホルモン分泌の異常、食欲の増加、生活習慣病(糖尿病、心筋梗塞など)のリスク増加。
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日本人の睡眠不足:日本人は睡眠時間が短く、特に女性が慢性的に寝不足。
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スマートウォッチでの計測:Apple Watchや他のスマートウォッチを使って睡眠負債を把握し、睡眠習慣を改善することができる。
睡眠負債とは何か?
睡眠負債とは「慢性的な睡眠不足が続いている状態のこと」、さらに踏み込んで言うと「その睡眠不足が蓄積されて心身へ支障をきたしている状態のこと」を指します。
つまり、「1日だけ夜更かしして寝る時間が短くなった状態」というというより、「毎日の睡眠時間が必要な時間より短く、その足りない分=負債がジワジワ積み重なっている状態」という状態と言えます。
毎月の収支が少しずつマイナスで、借金が5万、10万、15万……と増えている状態と考えると、その恐ろしさが分かると思います。 しかも毎日の睡眠が少しずつ足りないだけだと、本人もその不足には気づきにくいのです。
睡眠負債が重なると何が起こるのか
「睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」より
では睡眠負債が増えていくと、心身にどのような変化が起こるのでしょうか。
まず、慢性的な睡眠不足は日中の眠気や意欲低下・記憶力減退など精神機能の低下を引き起こします。 つまり仕事や日常生活に支障が出てしまうわけですね。
「6時間睡眠が2週間続くと、1晩徹夜したあと同じレベルに脳のパフォーマンスが低下する」「4時間睡眠が続くと、1週間後には何と、脳のパフォーマンスは2晩徹夜明けと同じくらい低下する」という研究結果もあります※1。 さらに体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られています。
たとえば健康な人でも一日10時間たっぷりと眠った日に比較して、寝不足(4時間睡眠)をたった二日間続けただけで食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。
ごくわずかの寝不足によって私たちの食行動までも影響を受けるのです。 そして慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病や心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患といった生活習慣病に罹りやすいことが明らかになっています。
上記は厚生労働省の健康情報サイトに記載されていた睡眠不足・睡眠障害と生活習慣病の関係を表した図ですが、これを見ると怖くなりますね……。
日本人は慢性的に睡眠不足!
「睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」より
そして、同じく厚労省のサイトに記載された統計を見ると、日本人の睡眠時間は諸外国と比べても低いことが分かります。
日本人には慢性的な睡眠不足に悩まされている人が多いというわけです。
なお仕事で忙しく働いている男性が睡眠不足……というイメージがあるかもしれませんが、女性のほうが睡眠は不足しているとのこと。
同サイトでは「とりわけ女性は家事や育児の負担が大きいため男性よりもさらに睡眠時間が短く、平日・週末を問わず慢性的な寝不足状態にある」との記述がありました。
専門家の意見
睡眠研究の第一人者であるマシュー・ウォーカー博士(カリフォルニア大学バークレー校教授)は、著書『Why We Sleep(邦題:スタンフォード式 最高の睡眠)』の中で次のように述べています。
「睡眠不足は、認知機能や身体的な健康に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。特に、慢性的な睡眠不足は免疫機能の低下、肥満、心血管疾患のリスクを高める要因となり得る」
また、2024年に発表された研究(Journal of Sleep Research)によれば、Apple Watchを用いた睡眠トラッキングの精度は向上しており、深い睡眠の割合や夜間の覚醒を正確に検出できることが確認されています。この研究は、Apple Watchを活用した睡眠改善プランの有効性を裏付けています。
睡眠負債はスマートウォッチで計測・把握できる!
1日だけ寝不足の場合は「翌日は長めに寝よう」と対策がしやすいですが、慢性的な睡眠不足の場合は、本人がそれを把握するのは難しいです。
少しずつ仕事が忙しくなって、ジワジワ睡眠時間が削られていき、1日の平均睡眠時間が30分短くなり、1時間短くなり……という状態になっても、それに気づかない人は多いでしょう(2時間、3時間と削られたら、さすがにヤバいと気づくでしょうが)。
そうした睡眠不足の慢性化を防ぐ上で、Apple Watchやスマートウォッチで睡眠を計測するのは非常に有効です。
昨日と比較した今日の睡眠時間、先週と比較した今週の睡眠時間などはササッと把握可能ですし、今回説明したような「睡眠負債」などもモデルによっては把握可能です。
※1:Vol.36:ナメてませんか「睡眠負債」国民の2割 30-40代の3人に1人は睡眠負債をためている | 医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター
睡眠負債を解消するための具体的な対策
Apple Watchを用いて睡眠負債を解消するための具体的な対策を以下に示します。
- 定期的な睡眠習慣の確立: Apple Watchの「睡眠」アプリを利用して、就寝と起床の時間を固定することが重要です。特に週末も含めた一貫したリズムを保つことで、体内時計を安定させることができます。
- 睡眠トラッキングデータの分析: Apple Watchが提供する睡眠データ(就寝時間、起床時間、深い睡眠と浅い睡眠の割合など)を定期的に確認し、改善点を把握しましょう。
- サードパーティアプリの活用: 「AutoSleep」や「Pillow」などのアプリは、Apple Watchと連携してより詳細な睡眠分析を提供します。これらを用いて深い睡眠時間を増やすための対策を取ることも有効です。
- 短い昼寝の取り入れ: 睡眠負債を短時間の昼寝で部分的に回復することも可能です。Apple Watchのタイマー機能を利用して、20分程度の昼寝を習慣化しましょう。
- 光と音の管理: 就寝前にApple Watchで「ナイトモード」を設定することで、ディスプレイの光を抑え、睡眠の質を向上させることができます。また、睡眠中に邪魔にならないように通知をオフにする設定も重要です。
まとめ
Apple Watchを活用することで、日々の睡眠を可視化し、睡眠負債を減らすための具体的な対策を取ることができます。
特に、定期的な睡眠習慣の確立と、収集したデータの分析を組み合わせることで、効果的に改善を図ることができるでしょう。最新の研究結果をもとに、Apple Watchを活用して健康的な睡眠を取り戻しましょう。
●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者7000人程度)でも各種レビューを行っています!
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