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スマートウォッチ市場はなぜ成熟した?「新規参入の減少」と「撤退の増加」から現在地を読む

コラム・業界分析

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生成AIの世界では、日々驚くような進化が起きています。新機能や新モデルがニュースになり、SNSでも連日のように話題が生まれる――そんな空気感を、ここ1〜2年で強く感じた方も多いのではないでしょうか。

一方でスマートウォッチはどうかというと、進化は続いているものの、AIほど「毎回驚くような新規性」が生まれにくく、以前より話題化しにくくなった印象があります。

私たちは2019年からスマートウォッチ専門メディアとして情報を追い続けてきましたが、最近あらためて感じるのは、スマートウォッチ市場が“成熟期”に入ったということです。本記事では、その背景を複数のトピックに分けて整理します。なお、成熟は衰退と同義ではありません。成熟したからこそ見える「安心して選べる時代」も含めて、現状の輪郭を掴んでいきましょう。

新しいブランドがほとんど出てこなくなった

まず象徴的なのが、新規ブランドの参入が目に見えて減ったことです。ここ数年で「新しいブランド」として話題になった例を挙げるなら、現実的にはCMF by Nothingくらいしか思い当たりません。

以前は、海外・国内を問わず大小さまざまなブランドが参入し、「スマートウォッチっぽい製品」が増えていきました。しかし今は、そうした動き自体が落ち着き、参入のハードルが上がった印象があります。

背景として考えられるのは、単に時計を作れば成立する世界ではなくなり、以下のような総合力が求められるようになった点です。

・OSやアプリ連携の完成度(通知、ヘルスケア、ワークアウトなど)
・健康データの精度や“説得力”
・継続アップデートやサポート体制
・価格競争に耐える調達力

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撤退するブランドが増え、「淘汰」が見えるようになった

スマートウォッチから撤退したFOSSILのモデル

成熟を感じさせるもう一つのサインが、撤退するブランドが目立つようになったことです。

たとえばFossilはかつてWear OS搭載モデルを積極的に展開していましたし、Sonyも初期のスマートウォッチ的プロダクトで存在感がありました。ただ、現在はこれらのブランドがスマートウォッチ市場の主役として語られることはほとんどありません。

またCASIOも、Wear OSを搭載したPRO TREK Smartはシリーズとして終了し、全体として「スマートウォッチに注力して市場を取りに行く」空気は弱まった印象があります。

この数年で感じるのは、スマートウォッチが“未来の期待枠”だった頃とは違い、勝ち筋が見えないブランドは撤退せざるを得ない市場に近づいている、という点です。

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「定番」が固まり、競争の構図が完成した

Pixel Watch

現在のスマートウォッチ市場は、定番の顔ぶれがとても明確です。高性能モデルでは、以下の3系統が強い存在感を持っています。

・Apple Watch
・Galaxy Watch
・Pixel Watch

さらに低価格帯では、XiaomiAmazfitHUAWEIといったブランドが幅広い人気を獲得しており、価格と機能のバランスで“強い選択肢”が揃っています。

この構図が固まったことで、「中途半端な価格」「決め手のない機能」のブランドは生き残りにくくなり、市場競争に負けたブランドは撤退を余儀なくされやすい――そんな状況が見えやすくなりました。

低価格帯のレベルが上がり、“適当なスマートウォッチ”が通用しにくい

特に印象的なのが、低価格帯の基準が引き上げられたことです。たとえばXiaomiのように、5,000円以下のモデルでも「十分に使える」と感じる人が増えると、単に安いだけの製品は選ばれにくくなります。

以前は「中国からの輸入品にブランド名だけ付けたようなモデル」でも、勢いで売れてしまう場面がありました。しかし今は、通知や健康管理、アプリ連携などの“体験”の差が表に出やすく、日本市場でも通用しにくくなってきた印象があります。

なお、「安いけど大丈夫?」の不安を減らしたい方は、まずこの定番記事から入ると判断しやすくなるはずです。
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AIが毎日話題になる一方で、スマートウォッチは「話題化しにくい」

AIの世界は、モデル更新・新機能・新サービスが短い周期で登場し、SNSでの拡散も速いため、「今日の話題」が生まれやすい土壌があります。対してスマートウォッチは、改善はあっても“驚きの体験”が連続して起きるジャンルではないため、ニュースとして爆発しにくい面があります。

もちろん、スマートウォッチも進化はしています。心電図機能(ECG)がApple Watch以外でも使えるようになったり、健康系の機能が段階的に拡張されたりと、生活の質を上げるアップデートは積み重なっています。

ただ、ユーザーの体感としては「買い替えの決定打」になりにくく、結果として“新しさ”が話題になりにくい――これが成熟期らしさの一つだと感じています。

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市場データで見ると「伸びは緩やか、ただし価値は上がっている」

成熟している印象がある一方で、市場自体が完全に縮んでいるわけではありません。たとえば、世界のスマートウォッチ市場は2025年に回復基調へ転じる見通しとして、出荷台数が前年比+7%と予測されています。

また中国市場が成長ドライバーとなり、中国の市場シェアが2024年の25%から2025年に31%へ拡大する見込みだとされています。Appleも回復傾向で、2025年の第3四半期(Q3)は出荷が前年比+23%、年間でも+12%が予測されています。

さらにウェアラブル全体の見方としては、2025年Q3のウェアラブルバンド市場が前年同期比+3%5,460万台に達した一方で、市場価値は+12%と大きく伸び、平均販売価格(ASP)も225ドルに上昇した、というデータもあります。

ベンダー別では、Xiaomi17.6%(960万台)、Apple16.6%(900万台)、HUAWEI14.8%(810万台)の「3強」が中心で、この3社だけで世界出荷の約半分を占める構図になっています。こうした数字を見ると、量の爆発というより“価値の上振れ”が目立つ局面に入っている、と捉えることもできそうです。

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スマートリング・スマートグラスなど“競合ウェアラブル”が増えた

7〜8年ほど前は、スマートウォッチに「未来」を感じている人が今より多かったように思います。ところが現在は、スマートリングやスマートグラス(ARグラス)など、別の形のウェアラブルも増えてきました。

もちろん、これらがスマートウォッチの完全な代替になるとは限りません。ただ、選択肢が増えたことで、スマートウォッチが“唯一の未来デバイス”ではなくなり、市場全体の熱量が分散しているようにも見えます。

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高級時計市場は変わらず元気で、共存に落ち着いた

スマートウォッチが広まり始めた当初は、「時計市場そのものを変える」といったイメージもありました。しかし現実には、高級時計の市場は今も健在で、スマートウォッチが置き換えたとは言いにくい状況です。

ルイ・ヴィトンやタグ・ホイヤーといった一部のブランドはスマートウォッチを出しているものの、高級時計の世界ではニッチな存在にとどまり、主流にはなりきれていません。ラグジュアリー系の動向が気になる方は、こちらの記事も参考になります。
ラグジュアリースマートウォッチ4ブランド徹底比較【2025年版】ルイ・ヴィトン、タグ・ホイヤー、ウブロ、モンブラン

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結論:市場は成熟したが、「安心して選べる時代」にもなった

ここまで整理すると、スマートウォッチ市場はかなり成熟しきっており、爆発的な発展がこの先ずっと続くというよりは、堅実な改善と定番の安定が続く市場になった――そんな見方ができそうです。

ただし成熟は悪いことばかりではありません。むしろ成熟したことで、以下のような価値が強まった面もあります。

・安心して使える完成度の高いモデルが増えた
・定番が揃い、選び方が分かりやすくなった
・身につける人は“じわじわ”増えている印象がある

スマートリングやスマートグラスは便利さがあり、今後さらに伸びる可能性もあります。一方で、Apple Watchのように街中で多くの人が身に付けるレベルの「次のウェアラブル」がすでに誕生しているかというと、まだこれからの段階にも見えます。

その意味で、ウェアラブルのトップランナーという位置は、当面スマートウォッチが守り続ける――そんな可能性も十分にあるのではないでしょうか。

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