かつては大手メーカーが次々とスマートウォッチ市場に参入し、国内でも一定の存在感を放っていた国産スマートウォッチ。
しかし、2025年現在、その多くが静かに姿を消しつつあります。
相次ぐ“撤退”の足音:名機たちが終焉へ
CASIOの「WSD」シリーズ、アプリサポート終了へ
カシオ計算機が展開していたアウトドア向けスマートウォッチ「PRO TREK Smart WSD」シリーズ。タフネス性能と多機能性を備えたこのシリーズは、登山やキャンプ、トレイルランニングを楽しむ層を中心に一定の人気を博しました。
同シリーズはGoogleのWear OSを搭載し、地図表示やアクティビティログの記録など、アウトドア利用に特化したアプリ群が魅力でした。特に、「WSD-F20」や「WSD-F30」などは、オフライン地図の対応や耐環境性能が評価され、国内外で高い支持を得ていました。
しかし、2025年8月4日をもって専用アプリ群のサポート終了が発表され、シリーズとしての終焉が事実上決定しました。その背景には、以下のような課題がありました。
・Wear OSの仕様変更への対応コストの増大
・サードパーティアプリへの依存と機能更新の難しさ
・スマートウォッチとしての電池持ちの悪さ
・UIの複雑さと一般ユーザーへの訴求力の限界
筆者も実際に使ったことがありましたが、昔のWear OSはバッテリーの持ちが非常に悪く、アウトドアウォッチとしては使い勝手に難あり……と感じる部分がありました。
こうした中、Apple WatchやGarmin、Huaweiといった競合ブランドが急成長。カシオはG-SHOCKラインに注力する姿勢を強めており、Gスマートウォッチ分野からは徐々に距離を置きつつあります。
カシオのスマートウォッチの現状については、下記の記事でより詳しくまとめています。
SONY「wena3」、実質的に終売
「時計本体ではなく“バンド”にスマート機能を集約する」というコンセプトで登場したSONYの「wena」シリーズ。特に「wena3」は、Suica対応や通知機能、活動量計測などをバンド部分に内蔵し、ユーザーが既存のアナログ時計と組み合わせて使えるというユニークな設計で注目されました。
クラシックな機械式時計の美しさと、スマート機能の利便性を両立したこの製品は、一部のガジェット愛好家や時計ファンから高い評価を得ました。加えて、スマホアプリとの連携によるデータ管理や通知のカスタマイズも可能で、独自の魅力を放っていました。
しかし、その後の市場拡大には至らず、2023年には生産終了が公式にアナウンス。2026年2月にはアプリやサーバーなどのサポート終了が予定されており、シリーズとしての展開は幕を下ろすことになります。
その要因としては、
・一般層にとってやや高価でニッチな存在であったこと
・バンドのサイズ制限や装着性の課題
・一部ユーザーの間での接続不良やSuica読み取りトラブルの報告
などが挙げられます。
実際、発売当初はソニーのスマートウォッチとして大きな話題を読んだものの、購入した一般ユーザーの口コミを見ることは少なく、人気は高まらなかった印象でした。
今後、wenaのような「ハイブリッド型スマートデバイス」が再び注目される可能性もありますが、当面はSONYがスマートウォッチ市場に再び参入する見込みは薄いと見られています。
CITIZEN「Eco-Drive Riiiver」、静かにフェードアウト
CITIZENが開発した光発電スマートウォッチ「Eco-Drive Riiiver」。クラウドファンディングを起点に登場したこのモデルは、太陽光による充電が可能な“エコドライブ”に加え、ユーザー自身がアプリや動作のカスタマイズが可能な「Riiiver」プラットフォームを搭載していた点で注目されました。
スマホと連携して独自の“トリガー・アクション”を設定できる仕組みは、他のスマートウォッチとは一線を画しており、IT感度の高い層からは一定の支持を得ました。
しかし、プロダクトとしての寿命は短く、現在は主要販路での取り扱いが終了。大規模な後継機の発表もなく、実質的に「Riiiver」は静かに市場から姿を消しつつあります。
・カスタマイズの自由度が高すぎて使いこなしが難しい
・フィットネスやヘルスケア機能が他社に比べて見劣りした
・国内外での展開スピードが緩慢で、市場トレンドに乗り遅れた
といった要因が、そのフェードアウトの背景にあります。
使ってみた感想としても、機能の使いこなしは相当なガジェット好きでないと難しい感じで、独自の“トリガー・アクション”は人に説明するのも難しいほど複雑な印象。
一般ユーザーが使うにはニッチな製品過ぎた印象がありました。
国産スマートウォッチの苦境、なぜ起きた?
・Apple Watch一強の市場構造
高級志向のモデルではグローバルで圧倒的シェアを誇るApple Watchの存在が、国産メーカーの成長を阻害。
・コスパの高い中華系モデルの成長
Xiaomi、Amazfitといった中華系ブランドは安価なモデルでシェアを急拡大。国産ブランドはライトユーザーを奪われた形です。
・ソフトウェア競争力の差
OS・アプリ連携などにおける開発スピードやエコシステムで、海外勢に後れを取る。
・ニッチ市場への集中
多くの国産モデルは「アウトドア特化」「アナログ融合」など、コア層向けに留まり、マス市場への訴求に弱かった。
それでも“希望の火”は消えていない:今なお買える国産スマートウォッチ
そんな逆風の中でも、国産メーカーはいくつかの“生き残り策”を打ち出しています。
CITIZEN CONNECTED Eco-Drive W770
現在も新品で購入可能なスマートウォッチ。
光発電「Eco-Drive」を活かしながら、Bluetooth接続や通知機能、IoTプラットフォーム「Riiiver」連携にも対応。
デザイン性も高く、ビジネスシーンにもなじむハイブリッドスマートウォッチとして一定の人気を保っています。
・エコ・ドライブ(光充電)で充電不要
・専用アプリで着信・SNS通知対応
・価格帯:約63,800〜74,800円(税込)
CASIO G-SHOCK「GPR-H1000」シリーズ
Wear OSからは撤退したものの、CASIOはG-SHOCKブランドでサバイバル特化型スマートウォッチ”を展開中。
たとえば「GPR-H1000」は、GPS・心拍計・気圧・高度計・温度計・方位計といった6種類のセンサーを搭載し、まさに“最強タフネスウォッチ”。
・アウトドア・登山・サバイバル用途に最適
・専用アプリと連携してアクティビティ管理も可能
・価格帯:約77,000円(税込)前後
まとめ:技術はある、次に必要なのは「ユーザーと繋がるOS」
国産スマートウォッチはハードウェア性能では世界に誇れる製品を持っています。しかし、AppleやSamsungのようなOS+アプリのエコシステム”を自社で構築できなかったことが最大の敗因です。
今後、もし再び国産スマートウォッチが勢力を盛り返すとすれば、それはハードだけでなく「つながる体験」「使いやすさ」という面でもイノベーションを起こせるかにかかっているのかもしれません。
なお、日本で購入可能なスマートウォッチブランドを一挙34種紹介したこちらの記事もおすすめです。AppleやGarminはもちろん、国産・海外問わず主要ブランドを網羅しており、自分にぴったりの1本がきっと見つかります。
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日本で購入できるスマートウォッチ34ブランド完全ガイド【専門メディア選定、主要ブランドを網羅】|Smart Watch Life
また、ファッション系スマートウォッチFOSSILの撤退についても下記の記事で考察しています。
FOSSILはなぜスマートウォッチから撤退したのか? その答えは「Nothing」が知っている
●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者7000人程度)でも各種レビューを行っています!
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