Galaxy Watchはなぜ「一新」しなかったのか|サムスンのデザイン責任者が語るクッションデザインと、1億件の手首データから作ったバンド

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サムスン電子 副社長 兼 MX事業本部デザインチーム長のHubert Lee。Galaxy Z Fold8シリーズとGalaxy Watchのデザインを統括する

新しいスマートウォッチが出るたびに、私たちはスペック表を見比べます。バッテリーが何時間伸びたか、画面が何nits明るくなったか。ただ、毎日腕につけるデバイスとして本当に効いてくるのは、実はそこではないのかもしれません。

サムスン電子ジャパンが2026年8月14日、Galaxy Unpacked July 2026で発表された「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra|Fold8|Flip8」と「Samsung Galaxy Watch Ultra2」「Samsung Galaxy Watch9」のデザインについて、開発を統括した責任者へのインタビューを公開しました。

語られているのは、数字にならない部分の話です。とくにGalaxy Watchについては「デザインを一新するのではなく、磨き上げることに主眼を置いた」とはっきり述べられていて、なぜ見た目が大きく変わらなかったのかという疑問に、作り手側から答えが出ています。

話したのは、MXデザインチーム長のHubert Lee氏

インタビューに答えたのは、サムスン電子 副社長 兼 MX(Mobile eXperience)事業本部デザインチーム長のHubert Lee氏です。スマートフォンからスマートウォッチまで、Galaxyのハードウェアデザインを統括する立場にあります。

サムスン電子 副社長 兼 MX事業本部デザインチーム長Hubert Leeの全身に近いポートレート写真

折りたたみスマートフォンとスマートウォッチという、形も使い方もまったく違う製品群に共通して掲げられたキーワードが「快適さ」でした。Lee氏は、現在のGalaxyデバイスがこれまで以上に高速で高性能になっているとしたうえで、そこからさらに一歩進んで「より自然で快適な体験をお届けするにはどうすればよいか」を考えたと語っています。

Galaxy Watchは「一新」ではなく「磨き上げ」を選んだ

スマートウォッチのデザインについて、Lee氏は次のように説明しています。

「スマートフォンが『手に持って使う』デバイスだとすれば、スマートウォッチは『毎日身につけていても心地よい』ことで、その真価を発揮します」

だからこそ、新しいGalaxy Watchシリーズはデザインを一新するのではなく、これまでのコアとなるデザインを守りながら細部を丁寧に磨き上げる方向を選んだ、というわけです。

Samsung Galaxy Watch Ultra2とSamsung Galaxy Watch9を並べた製品写真。クッションデザインのボディが確認できる

その中心にあるのが「クッションデザイン」です。単なる形状のことではなく、存在感と柔らかさ、精密さと快適さを両立させるためのバランスであり、これがGalaxy Watchらしさを形づくっているとされています。

Galaxy Watch Ultra2では、ディスプレイ・ベゼル・クッションボディをシームレスにひとつのフォルムへ融合させることで、すっきりとしたシルエットとプレミアムな印象を狙ったとのこと。加えて、ボタンの間隔や触感の違いも磨き上げ、画面を見なくても指先の感覚だけで正確に判別できるように設計したと述べられています。

運動中や暗い場所でボタンを押し間違えた経験がある人なら、この一文の意味は分かるはずです。カタログのスペック欄には載らない部分ですが、使い勝手に直結する話です。スペック面での変化は、Galaxy Watch Ultra2は前モデルから何が進化した? Watch Ultra(2025)と徹底比較で整理しています。

バンドは1億件の手首データと1万回のシミュレーションから

今回のインタビューでもっとも具体的な数字が出てきたのが、バンドの話です。

Samsung Galaxy Watchの複数モデルとバンドのバリエーションを並べて上から撮影した写真

新しいモデルのバンドには新たなエアポケット構造が採用され、より軽く、より薄く、より通気性の高いものへと進化したとされています。夏場にスマートウォッチを着けっぱなしにしていると、バンドの下が蒸れるのは誰もが経験するところで、通気性が改善されるのは素直にありがたい変化です。

そして、手首の形は人によって違います。この課題に対してサムスンは、1億件を超える実際のユーザーの手首データと1万回にも及ぶシミュレーションをもとに、コンピュテーショナルデザインで快適性とフィット感を検証したと説明しています。ウォッチ本体とバンドのバランスを細部まで詰めることで、装着時の手首の安定感を高めたとのことです。2機種で迷っている人は、Galaxy Watch9とWatch Ultra2はどっちを買うべき? スペック・価格を徹底比較もあわせてどうぞ。

折りたたみが目指したのは「薄く見え、薄く感じる」こと

折りたたみスマートフォン側のコンセプトは「エモーティブ・スリム(Emotive Slim)」でした。単に厚みを削るのではなく、日常の使用シーンでいかに薄く見え、薄く感じられるかにこだわったアプローチだとされています。

Galaxy Zシリーズのプロダクトスケッチとヒンジなどのデザイン要素を並べた展示の様子

具体的には、自然に開けるようフレームに緩やかな傾斜を施し、グリップ感を柔らかくするために外側のシルエットに丸みを加え、側面のフラットな部分を最小限に抑えることで視覚的にもよりスリムに見せています。

折りたたみ側の価格やスペックは、Galaxy Z Fold8 Ultra・Fold8・Flip8が国内発売|価格・スペックまとめにまとめています。また、ラインアップ全体を貫くコンセプトとしては「エモーティブ・ジオメトリー(Emotive Geometry)」が挙げられています。シンプルで洗練されたフォルムに人間らしい温かみを吹き込み、性能だけでなく愛着を持ってもらえるバランスを目指す考え方です。

「万能な一台は存在しない」からラインアップを広げた

Galaxy Zシリーズのラインアップが拡大した背景についても語られています。7世代にわたって折りたたみデバイスを作り続ける中で、ユーザーの期待が多様化し、「One size does not fit all(万能な一台は存在しない)」という現実に気づかされたのだそうです。

Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra、Fold8、Flip8の3機種を並べた製品写真。バイオレットシャドウ、ラベンダー、ピンクのカラー

生産性やマルチタスクを重視する人もいれば、携帯性を優先する人もいます。その違いに一台で応えるのをやめて、それぞれのニーズに合わせて選べるようにした、という整理です。スマートウォッチ側でGalaxy Watch9とGalaxy Watch Ultra2が並んでいるのも、同じ考え方の表れと見ることができます。

Galaxy Z Fold8は、パスポートから着想を得た

意外な着想元として挙げられたのがパスポートです。持ち運びやすく、片手で扱いやすく、一目で内容を確認できる。この人間工学的な考え方をGalaxy Z Fold8に反映したと説明されています。

ラベンダーカラーのSamsung Galaxy Z Fold8を開いた状態とパッケージ、カラーサンプルを並べた写真

折りたたんだ状態では片手操作に最適化された16:10のアスペクト比、開くと左右対称のバランスを持つ4:3ディスプレイへと姿を変えます。数字だけ見ると地味ですが、閉じているときと開いているときで求められる形が違う、という前提に立った設計です。

カラーは、想定するライフスタイルを映す

カラー選定についても、それぞれのデバイスが想定するユーザーのライフスタイルを映すように選ばれたと説明されています。

Galaxy Z Fold8 Ultra、Fold8、Flip8のカラーコンセプトと分解図を並べたデザインボード

Galaxy Z Fold8 Ultraの「バイオレットシャドウ」はシックで洗練された印象を、Galaxy Z Fold8の「ラベンダー」はフレッシュで柔らかな雰囲気を、Galaxy Z Flip8の「ピンク」は鮮やかで遊び心のある表情を担当します。そこに、時代を超えて使える汎用色として「クリーム」と「グラファイト」が加わる構成です。

まとめ:AI時代だからこそ、人間中心に戻る

最後にLee氏は、今年のGalaxyデバイスすべてに共通する哲学について、こう述べています。

「AIによる変化が社会を形づくる時代だからこそ、人間中心の価値観はこれまで以上に重要になっています」

デザインは見た目だけでなく、開きやすさ、持ちやすさ、装着感といった実際に使うときの心地よさでなければならない。そのためには、人々が日々どう生活し、働き、テクノロジーと関わっているのかを理解するところから始める必要がある。これが折りたたみスマートフォンとスマートウォッチのデザインの根幹になっている、という締めくくりでした。

Galaxy Watch Ultra2やGalaxy Watch9を見て「前のモデルとあまり変わらないのでは」と感じた人は少なくないはずです。ただ、その据え置きは手抜きではなく、ボタンの触感やバンドの通気性といった数字にならない部分に開発リソースを振り向けた結果だ、というのが今回の説明です。買い替えを急ぐ理由にはなりませんが、実際に腕に着けたときの印象が変わっている可能性はあります。国内での価格や発売状況は、Samsung Galaxy Watch9・Galaxy Watch Ultra2が8月7日に国内発売で確認できます。

Source: サムスン電子ジャパン プレスリリース(共同通信PRワイヤー)/画像:サムスン電子ジャパン

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