スマートウォッチにある「医療機器ではない」の注意書き、その背景を解説

スマートウォッチの使い方、基礎知識

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Galaxy Watchの製品写真

スマートウォッチの健康機能が注目される中での「ただし書き」

Apple WatchやGarmin、Fitbitなどの説明書を読むと、「この機器は医療機器ではありません」「診断や治療の目的には使用できません」と小さく書かれていて、少し不安に感じた方もいるかもしれません。

現代のスマートウォッチは心拍数や血中酸素濃度、睡眠の質、不規則な心拍リズムの通知、高血圧パターンの検出まで、ひと昔前なら病院でしか測れなかったデータを手軽に記録できるようになりました。それなのに「医療機器ではない」と書かれているのは、なぜなのでしょうか。

これは単なる注意書きではなく、製品の機能と法律上の立ち位置を明確にするための重要な記載です。この記事では、薬機法やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の基本を踏まえつつ、スマートウォッチの健康機能と「医療機器ではない」の意味をやさしく解説していきます。

背景1:医療機器は法律により厳格に定義されている

日本やアメリカでは、医療機器の定義や審査、販売が法律によって厳格に管理されています。

・日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称:薬機法)」が、医療機器の分類・審査・販売を規制しています
・実際の審査・認証はPMDA(医薬品医療機器総合機構)が担当し、機器のリスクに応じてクラスⅠ〜Ⅳの4段階に分類されます
・アメリカではFDA(米国食品医薬品局)が同様の役割を担い、機器の承認やクリアランス(510(k))を行っています
・「医療機器」として認可されるには、精度・安全性・臨床的有用性を裏付けるデータの提出が必要で、開発と販売には相応の時間とコストがかかります

近年は、ソフトウェア単体で医療機器として扱われる「プログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)」という枠組みも整備され、Apple Watchの心電図アプリのようなアプリ機能もこの分類で承認されるケースが増えています。

そのため、多くのスマートウォッチは「健康管理の参考」としての機能提供にとどめ、法的には「医療機器」ではないと明記する必要があるのです。

背景2:過度な信頼による誤用を防ぐため

法律上の問題に加えて、ユーザーが健康データを過信してしまうことを防ぐ意味でも、「医療機器ではない」の表記は重要な役割を果たしています。

・ユーザーが健康データを過信し、必要な医療処置を遅らせるリスクがある
・たとえば、心拍数の異常が出ても「スマートウォッチが正常と言っているから大丈夫」と判断してしまう可能性がある
・実際にはセンサーの装着位置や肌の状態、運動状況によってデータのばらつきや測定誤差が生じるため、「診断」や「治療判断」に用いるには限界がある

そのため、メーカー側は誤解を防ぐ目的で「医療機器ではない」と記載し、注意喚起しています。あくまで日々の傾向を把握する目的で使うのが、本来の役割です。

背景3:一部の機能は認可を受けていることも

「医療機器ではない」と書かれているからといって、すべての機能が認可外、というわけではありません。一部のモデルや機能は、特定国で医療機器として認可されています。

たとえばApple Watchでは、以下の機能が日本の薬機法やFDAで承認・クリアランスを受けています。

・心電図アプリ(Apple Watch Series 4以降の心電図対応モデル)
・不規則な心拍リズムの通知(心房細動の兆候を検知する機能)
・睡眠時無呼吸の通知(Apple Watch Series 9以降の対応モデル)
高血圧パターンの通知(Apple Watch Series 11・Ultra 3など最新モデル)

Samsung Galaxy Watchでは血圧測定機能が一部の国で医療機器として認定されており、HUAWEI WATCH D2のように腕時計型でありながら血圧計として認証を取得した製品も登場しています。

ただし、これらはあくまで「特定の機能に限って」の話であり、スマートウォッチ全体の機能や製品自体が「医療機器」となるわけではありません。同じApple Watchでも、心電図機能は認可機器、心拍数や血中酸素ウェルネスの計測は一般的なヘルスケア機能、と分かれている点に注意が必要です。

認可を受けている代表例

・Apple Watchの心電図アプリ:日本(厚生労働省)や米国(FDA)で承認済
・Apple Watchの不規則な心拍リズム通知:日本(厚生労働省)や米国(FDA)で承認済
・Samsung Galaxy Watchの血圧測定:一部の国で一部モデルが医療機器として認定
・HUAWEI WATCH D2:血圧計(家庭用医療機器)として認証を取得

認可された機能でも「診断の代用」とは考えないことが大切

Apple Watchの心電図機能やSamsungの血圧測定機能のように、特定の機能が医療機器として認可を受けている場合でも、それだけで医師の診断や治療の代用になるわけではありません。

・心電図アプリは心房細動(AFib)を検知するきっかけにはなりますが、診断はあくまで医師が行うべきものです
・血圧や心拍数の変動が表示された場合も、スマートウォッチの通知を参考に医療機関で検査を受けることが前提です
・高血圧パターンの通知も、生活習慣の見直しや受診の判断材料として活用するのが基本で、診断結果ではありません
・スマートウォッチで得られるデータは、症状がない場合でも異常のサインに気づける「早期発見の補助ツール」として活用するのが適切です

スマートウォッチは受診の”きっかけ”として活用を

スマートウォッチの通知や異常検出は、ユーザーにとって貴重な気づきの機会になります。しかしそれは「診断結果」ではなく、「医療の入り口」として使うのが本来の役割です。

たとえば、「不整脈の可能性があると表示された」「いつもより心拍数が高い」「高血圧パターンの通知が届いた」といった変化を感じたら、放置せずにかかりつけ医や専門医を受診しましょう。スマートウォッチが残してくれた記録は、医師に状況を伝えるうえでも有用な情報になります。

注意! 医療機器のように誤解させる製品にも要注意

近年、ネット通販や一部の海外製品を中心に、「医療機器であるかのような表現」で販売されているスマートウォッチが増えています。

これらには、以下のような問題があります。

・心電図や血圧、さらには血糖値まで測定できるとうたっているが、医療機器認証を取得していない
・医療機器に求められる精度検証や安全性の証明がなされていない
・データの信頼性が不明で、健康や命に関わる判断に使うのは危険

特に「採血なしで血糖値を連続測定できる」とうたう低価格スマートウォッチについては、消費者庁や国民生活センターが繰り返し注意喚起を行っており、実際には正確な測定ができないにもかかわらず、誤解を招く表現で販売されているケースが多く報告されています。

こうした製品に注意すべき理由

・正確性のない数値で自己判断すると、医療機関を受診すべきタイミングを逃す
・薬や生活習慣の管理に誤った影響を与える可能性がある
・悪質な業者が健康不安につけ込み、根拠のない商品を販売しているケースも

ユーザー自身が「医療機器として認可されているか」を確認することが、健康を守るうえで非常に重要です。

ユーザー側で医療機器かどうかを確認する方法

購入前や購入後でも、その製品(または機能)が医療機器として認可されているかどうかは、いくつかの方法で確認できます。

・PMDA(医薬品医療機器総合機構)が運営する「医療機器情報検索」で、製品名や承認番号から検索する
・製品の公式サイトや取扱説明書で「薬機法に基づく承認番号/認証番号」が明記されているか確認する
・日本ではメーカー名・販売名・一般的名称・クラス分類などが公開されているため、これらをもとに本物かを判断する
・「FDA Cleared」「CEマーク」など海外の認可表記も参考になりますが、日本国内で医療機器として使う場合は薬機法の認証があるかが基本となります

特に、極端に安価で「血糖値測定可」「血圧測定可」をうたう海外製品については、認証番号の有無を必ず確認するようにしましょう。

まとめ:スマートウォッチの健康機能はあくまで「参考指標」

スマートウォッチの健康機能は、日々の健康管理や早期の体調変化の気づきに役立ちますが、医療診断を代替するものではありません。「医療機器ではありません」という記載は、製品の正しい使い方をユーザーに促すためのもので、決してネガティブな意味で書かれているわけではないのです。

今後、SaMD(プログラム医療機器)の枠組みの整備が進むにつれて、スマートウォッチの医療活用はさらに広がる可能性があります。一方で現時点では、「健康の見守りツール」として日々の傾向をつかみ、気になる変化があれば医師に相談する、という使い方が正しい姿勢と言えるでしょう。

スマートウォッチの健康機能を正しく理解し、日々の健康管理に役立てましょう。

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●執筆者:スマートウォッチライフ編集部
日本初のスマートウォッチのウェブメディア。編集部には50本以上のスマートウォッチがあり、スマートウォッチ・Apple Watchの選び方や入門者向けの記事を多く配信しています。日本唯一のスマートウォッチ専門ムック本『SmartWatchLife特別編集 最新スマートウォッチ完全ガイド』(コスミック出版)を出版したほか、編集長はスマートウォッチ専門家としてテレビ朝日「グッド!モーニング」や雑誌『anan』(マガジンハウス)にも出演。You Tube「スマートウォッチライフ」(チャンネル登録者8000人程度)でも各種レビューを行っています!

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