血糖とケトンを1台で連続測定するウェアラブルをFDAが認可|アボット「Libre Duo 10 Day」、2歳以上対象で米国は年内発売へ【海外ニュース】

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上腕の裏側に貼り付けられた、円形で白いアボットのLibre Duo 10 Dayセンサー。500円玉ほどの大きさで厚みは薄い

体に着けたセンサーが、血糖値とケトン値を同時に、ずっと測り続ける。そんな機器が米国で認められました。

米食品医薬品局(FDA)は2026年8月25日、アボット(Abbott Diabetes Care)の「Libre Duo 10 Day」を認可したと発表しました。血糖(グルコース)とケトンの両方を連続的に測るウェアラブル機器としては世界初で、ケトンを連続測定できるウェアラブルとしても米国初になります。対象は2歳以上の糖尿病がある人です。

ウェアラブルで血糖を測るという話題は、当サイトの読者にとっても関心の高いテーマだと思います。ただ、今回のニュースは「スマートウォッチで血糖が測れるようになった」という話ではありません。そこを含めて、順に整理していきます。

腕時計ではなく、腕に貼り付けるセンサーです

指先でつまんで持たれた、円形で白いアボットのLibre Duo 10 Dayセンサー。指の太さと比べて硬貨ほどの直径

まず形から確認しておきます。Libre Duo 10 Dayは、硬貨ほどの大きさの円いセンサーを上腕に貼り付けて使う機器です。腕時計型でもリング型でもありません。皮膚のすぐ下にある体液を測るタイプで、アボットが10年以上続けてきた「Libre」シリーズの最新モデルにあたります。Libreは60か国以上、800万人を超える人に使われているとアボットは説明しています。

ここは大事な区別なので、はっきり書いておきます。手首に着けるだけで採血なしに血糖値が分かる、という機器ではありません。この誤解については、日本糖尿病学会が「血糖測定機能をうたうスマートウォッチ」に注意喚起を出した件でも取り上げました。市販のスマートウォッチが光学センサーだけで血糖値を測れるという主張には、現在も根拠がありません。

今回の機器は、医療機器としてFDAの審査を通ったものです。糖尿病がある人が使うことを前提にした製品で、健康な人が日常の目安に使うガジェットとは位置づけが違います。

なぜ「ケトン」を測るのか

聞き慣れない言葉かもしれません。ケトンは、体がエネルギー源としてブドウ糖ではなく脂肪を使うときにできる物質です。インスリンが足りない状態が続くと、このケトンが血液中で危険な水準まで増えることがあります。

それが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)です。アメリカ糖尿病学会(ADA)によれば、DKAは数時間で進行することがあり、放置すれば昏睡や死に至る可能性もあります。アボットは、DKAが糖尿病における最も一般的な高血糖の緊急症であり、過去10年でDKAによる入院が55%増えているというデータも示しています。

やっかいなのは、初期のサインが普通の感染症と間違われやすいことです。さらに、ケトンを測るべきだと分かっていても、家庭に血中ケトン測定器がある人は多くありません。米疾病対策センター(CDC)の推計では米国の糖尿病人口は4,010万人、そのうち1型糖尿病は210万人とされています。

FDAのCDRH(医療機器・放射線保健センター)所長であるミシェル・ターバー氏は、今回の認可について「糖尿病とともに生きる子どもと大人の安全にとってのブレークスルーだ」とし、「ケトン値が上がっていることを、リアルタイムで24時間把握できることが、早期の対応と命に関わる緊急事態との分かれ目になり得る」と述べています。

単発の測定から、連続とアラートへ

上腕の裏側に貼り付けられた、円形で白いアボットのLibre Duo 10 Dayセンサー。500円玉ほどの大きさで厚みは薄い

これまでケトンを測るには、血液や尿を使った検査が必要でした。しかもそれは「いまこの瞬間の値」を1回分だけ示すもので、上がっているのか下がっているのかは分かりません。

Libre Duo 10 Dayは、皮膚のすぐ下の体液から血糖とケトンを1分ごとに、昼も夜も測り続けます。読み取った値は無線でスマートフォンに送られ、現在の血糖値とケトン値、そしてそれが上昇傾向なのか下降傾向なのかを画面で確認できます。ケトンが気になる水準に達すると、自動でアラートが出ます。

アボットの糖尿病ケア事業を統括するクリス・スコギンズ氏は、この関係を「血糖がスピードメーターだとすれば、ケトンはチェックエンジンランプのようなもの」と表現しています。ふだんは意識しなくてよく、何かが起きたときだけ知らせてくれる、という位置づけです。

ウェアラブルで血糖まわりを測る試みは各社が進めていて、当サイトでも指の汗から血糖などを測るスマートリングの研究を紹介しました。今回の認可は、そうした研究段階のものとは違い、実際に販売される医療機器として審査を通った点が大きく異なります。

認可の中身。De Novoという審査経路

今回の認可は、FDAのDe Novoという経路で下りています。これは、これまでにない新しい種類の機器のうち、リスクが低から中程度のものを対象とした審査の枠組みです。認可に先立って、開発と審査を早めるための「ブレークスルーデバイス指定」も受けていました。

審査の根拠になったのは、6件の臨床試験です。2歳以上の600人を超える参加者が対象で、さまざまな血糖値・ケトン値の範囲で測定の正確さが評価されました。FDAは、10日間の装用期間を通じて臨床的に意味のあるケトンの差を正確に追えたこと、DKAが起きる前の高いケトン値も検出できたことが示されたとしています。

アボットによれば、この機器はFDAのiCGM(統合型持続血糖測定)基準に加えて、新設されたiCGK(統合型持続血糖・ケトン測定)基準を初めて満たした製品でもあります。米国における連続ケトン測定の基準そのものが、今回できたことになります。

ウェアラブルが医療機器としての審査を通る流れは、ここ最近続いています。Galaxy Ringが睡眠時無呼吸のリスク検知でFDAクリアランスを取得した件も、同じ文脈にある動きです。

10日装用には但し書きがあります

製品名にある通り、装用期間は最長10日です。ただしアボットは、この点について注記を付けています。

装用期間を検証した試験では、10日間もったセンサーは成人で84.1%、小児で68.8%でした。つまり、表示どおりに使っても成人でおよそ16%、小児ではおよそ31%のセンサーが10日に届かない可能性があるということです。買う側にとっては知っておきたい数字だと思います。

安全性についての注意も出ています。血糖が55mg/dL未満になったときの緊急低血糖アラームと、ケトンが3.0mmol/Lを超えたときの緊急高ケトンアラームは、すべての事象を検知できるとは限りません。アボットもFDAも、ケトンの値は血糖値と症状とあわせて解釈すべきだとしています。表示と体調が食い違うときは指先穿刺による血糖測定を使うように、とも案内されています。

米国は年内発売。日本については発表なし

アボットは、Libre Duo 10 Dayを年内に米国で発売する予定としています。米国で提供されている最新世代のLibreアプリで使え、医療者向けのLibreView、介護者向けのLibreLinkUpとも連携します。

インスリンポンプとの連携も進んでいます。Beta Bionicsの「iLet」とSequel Med Techの「twiist」は年内、InsuletとTandemの機器は2027年に対応する見込みで、MiniMedとは独占的な統合を2027年に予定しているとのことです。欧州では、今年すでにLibre DuoのCEマークを取得しています。

日本での取り扱いについては、今回のFDAの発表にもアボットの発表にも記載がありません。現時点では米国と欧州の話として受け止めるのが正確です。

なお、ウェアラブルで得たデータを糖尿病の管理に活かす取り組み自体は日本でも進んでいて、Garmin Healthが公開した糖尿病インサイトレポートのような事例も出てきています。

まとめ

今回のポイントを整理します。血糖とケトンを1台で連続測定するウェアラブルが世界で初めて認可されたこと、対象は2歳以上の糖尿病がある人で腕時計型ではないこと、狙いはDKAという命に関わる合併症を早く捉えることにあること、そして米国での発売は年内予定で日本については未発表であること、の4点です。

ウェアラブルが「健康の目安を見る道具」から「医療の判断材料を出す機器」へ広がっていく流れのなかで、今回の認可はひとつの節目と言えそうです。同時に、市販のスマートウォッチが同じことをできるようになったわけではない、という線引きも忘れずにおきたいところです。この境界については、米国の内科医がスマートウォッチの健康データをどう見ているかという記事でも詳しく扱っています。

Source: U.S. Food and Drug AdministrationAbbott/画像:アボット

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