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スマートフォンやスマートウォッチを使っていて、「もう少し通信が速ければ」と感じたことはないでしょうか。そんな身近な不満に、AI(人工知能)が効いてくるかもしれません。Samsung(サムスン電子)は2026年6月30日、KDDIと共同で、商用の5G SA(スタンドアロン)ネットワーク上で、AIを活用した無線ネットワークの速度最適化の実証実験に成功したと発表しました。
使われたのは、SamsungのAIソリューション「RSO(RAN Speed Optimizer)」。実験では、5G通信速度が試験地域全体で平均31%、都市部では最大52%も向上したとしています。スマホやウェアラブルの通信が、私たちが何も操作しなくても速くなる――そんな未来につながる取り組みです。
SamsungとKDDIが、商用の5G網でAI最適化を実証
今回の実証実験は、KDDIの商用5G SAネットワーク上で実施されました。「商用」というのは、すでに私たちが日常的に使っている本物のネットワークという意味です。テスト専用の環境ではなく、実際にユーザーが通信している現場で効果を確かめた点が大きなポイントです。
実験は2025年後半から数ヶ月間にわたり行われ、東京およびその周辺の都市部・郊外・農村地域という性質の異なるエリアをカバー。3.7GHz帯のTDD周波数100MHzを、数百のセル(基地局のエリア)で活用しました。さまざまな混雑状況やネットワーク環境のデータでAIを鍛えた結果、現実の条件下でしっかり効果が出ることを確認できたとしています。
「RSO」とは?AIが基地局を1つずつ最適化する仕組み
RSO(RAN Speed Optimizer)は、ひとことで言えば「基地局ごとの設定を、AIが自動でいちばん良い状態に調整してくれる」技術です。
これまでの最適化は、複数の基地局をまとめたグループ(クラスタ)に同じ設定を当てはめる「クラスタ単位」の方法が一般的でした。しかしRSOは、セル(基地局のエリア)ごとに個別のパラメータを最適化します。AIベースの予測モデルが、それぞれの場所の環境データを自動で分析し、そのセルに最適な設定を割り出してくれるのです。
場所によって電波の届き方や混み具合は違うため、「みんな同じ設定」よりも「一つひとつに合わせた設定」のほうが、当然パフォーマンスは上がりやすくなります。RSOは、SamsungのAIエージェントやインテリジェントアプリで構成される「Samsung CognitiV Network Operations Suite(NOS)」を構成するソリューションのひとつです。
都市部で最大52%、全体で平均31%の速度向上
気になる効果は数字にもはっきり表れました。ピーク時間帯(混雑する時間帯)において、RSOは試験地域全体で5G通信速度を平均31%向上させ、とくに通信が混み合いやすい都市部では最大52%の向上を記録しています。
混雑時間帯は、まさに「通信が遅い」と感じやすいタイミングです。そこで3割〜5割もの底上げが効くというのは、体感としても無視できない差になりそうです。AIが商用環境で、より精密で状況に応じたネットワーク最適化を実現できることを示した実験だといえます。
私たち利用者・通信事業者それぞれのメリット
この技術がうれしいのは、通信を提供する側と使う側、どちらにとってもメリットがある点です。
通信事業者(キャリア)側は、ネットワークの状況変化にAIが自動で適応してくれるため、人の手による調整作業を減らせます。結果として運用の手間が下がり、コスト効率の向上が期待できます。これまで長年の課題とされてきた「基地局単位の個別チューニング」が、AIで現実的になったことが確認されました。
私たち利用者側にとっては、動画視聴・ウェブブラウジング・通話などを行う際に、より高速で信頼性の高い接続が得られます。スマートフォンはもちろん、5G/通信機能を使うAIヘルス機能を強化するGalaxy Watchのようなスマートウォッチ・ウェアラブル機器を使う場面でも、快適さの底上げにつながっていく可能性があります。
SamsungとKDDIのコメント
KDDI株式会社でネットワークを担当する古畑和弘氏は、「今回の実証実験では、KDDIが培ってきたネットワーク技術の知見とSamsungの先進技術を組み合わせることで、長年課題とされてきた基地局単位での個別チューニングがAIによって実現可能であることを確認しました。今後もAIを活用した技術開発を推進し、お客さまにより快適なネットワーク体験を提供してまいります」とコメントしています。
サムスン電子で副社長兼ネットワーク事業部開発チーム長を務めるJune Moon氏は、「今回のKDDIとの実証実験は、SamsungのAI搭載技術が多様なネットワーク環境において、商用ネットワークに高度な最適化通信をもたらし、安定したシームレスな接続が実現できることを示しました」と述べ、通信事業者のAI活用を引き続き支援していく姿勢を強調しました。
今後の展開
SamsungとKDDIは今回の成果を踏まえ、より広範なAI商用ネットワークへの対応を引き続き進める予定です。両社は長年にわたり、完全仮想化ネットワークの展開でも協力してきた経緯があり、KDDIがAIネイティブなネットワーク運用へ前進するための基盤づくりを加速させていくとしています。
Samsungは、チップセット・無線・コアネットワークを含む5Gのエンドツーエンドソリューションを手がけてきたメーカーで、専用RAN・vRAN(仮想RAN)・オープンRAN・AI-RAN、クラウドネイティブコアからプライベートネットワーク、AI搭載の自動化ツールまで幅広く展開しています。5Gの進化を推し進めながら、6G以降を見据えた開発も進めています。
まとめ
今回のSamsungとKDDIの実証実験は、「AIが基地局を1つずつ最適化することで、私たちの5G通信が体感できるレベルで速くなる」可能性を、実際の商用ネットワークで示したものです。都市部で最大52%という数字は、混雑時の通信のストレスが和らぐことを期待させてくれます。
スマートフォンやAIで進化するスマートウォッチといった身近なデバイスの裏側で、AIがネットワークそのものを賢くしていく――。普段は意識しない「電波の質」が、これからAIによって静かに底上げされていくかもしれません。今後のAI商用ネットワークの広がりに注目したいニュースです。
Source: Samsung Newsroom 日本 プレスリリース
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