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WHO(世界保健機関)によると、心血管疾患は世界で毎年およそ2,000万人の命を奪う、死因の第1位です。心臓発作や脳卒中と結びつけて語られがちですが、深刻な合併症はいつも突然始まるわけではなく、もっと気づきにくい形で進行することもあります。リトアニアのカウナス工科大学(KTU)などの研究チームは、こうした「見逃されやすい不整脈」を日常のなかで捉える仕組みを開発し、Teltonika Telemedicの医療用リストバンド「TeltoHeart」に応用しています。この記事では、その技術のポイントを整理して紹介します。
Image source: Teltonika Telemedic | Smart Telemedicine & Cardio Solution
診察室のECGでは捉えきれない「隠れた不整脈」
医師にとって難しいのは、「検査のあいだに起きていないもの」をどう記録するか、という問題です。標準的な心電図(ECG)は、ある一瞬の心臓の活動しか映し出しません。数日間の長時間モニタリングでも、頻度の低い不整脈のタイミングと必ずしも重なるとは限りません。その結果、特に短時間の心房細動(AF)は、より深刻な健康問題を引き起こすまで見逃されてしまうことがあります。
社会の高齢化と慢性疾患の増加にともない、この「診断のすき間」はますます大きな課題になっています。医師が知りたいのは、特定の検査中に異常なリズムがあったかどうかだけでなく、そうした発作がどれくらいの頻度で起き、どのくらい続き、どんな状況で生じ、時間とともに増えているのかという点です。コンシューマー向けのスマートウォッチでも心房細動の早期発見に向けた取り組みが進んでいますが、医療現場ではより連続的で詳細なデータが求められています。
KTU×Teltonika Telemedicの医療用リストバンド「TeltoHeart」

KTUを中心とするリトアニアの研究者が開発したシステムは、この問題の解決を狙ったもので、Teltonika Telemedicの「TeltoHeart」に実装されています。連続的な心拍リズムのモニタリングを可能にし、同じデバイスでより詳細なECG記録も取得でき、そのデータを遠隔で医師に送信できるのが特徴です。
KTU生体医工学研究所所長のヴァイドタス・マロザス教授は、このシステムがまず「見逃された不整脈が特に深刻な結果につながりかねない患者」を念頭に開発されたと説明します。その代表が、脳卒中を経験した人たちです。「チームが脳卒中後の患者に注目したのは、心房細動が短時間で無症状のことが多いからです。そのため、クリニックでの心電図や、1日〜数日間装置を装着するホルター心電図でさえ、そうした発作を捉えられないことが少なくありません」(マロザス教授)。
心房細動をはじめとする不整脈は、虚血性脳卒中のリスク上昇と直接結びついています。不整脈が見逃されると患者は適切な治療を受けられず、脳卒中の再発リスクが高まってしまう、というわけです。
電極に触れるだけで詳細ECG、異常はその場で通知
KTUとTeltonika Telemedicが開発・改良を続けてきた技術は、連続的な心拍リズムのモニタリングを実現します。疑わしい発作を検知すると、システムは画面通知や振動で患者に知らせます。これにより、数日後・数週間後の診察時ではなく、発作が起きたまさにその瞬間に記録できます。
粘着電極や追加の配線は不要で、ユーザーはデバイスに組み込まれた電極に触れるだけ。約1分で、心臓の電気的活動を複数方向から捉えたより詳細なECGが記録され、そのデータが医師へ送られます。
「不整脈がいつ・どれだけ集まって起きるか」を見る新指標
このシステムは、単に不整脈が起きたという事実だけを分析するのではありません。不整脈の集約パラメータ(arrhythmia aggregation)を用いて、リズムの乱れが監視期間を通じて均等に起きているのか、それとも短い発作がまとまって群れをなしているのか、という「時間的な分布」を示します。
「医師にとって、こうした情報は不整脈が検知されたという事実そのものよりも、はるかに大きな価値を持ちます」とマロザス教授。こうした評価により、病気の進行を追い、合併症リスクの高まりをより早い段階で見極められるようになるといいます。
日常の動きによるノイズと、危険な不整脈を見分ける
実生活の環境でもデータが信頼できるように、専用の信号処理アルゴリズムも組み込まれています。体の動きや姿勢の変化、運動などは信号を歪めてしまうため、システムはまず信号の品質を評価し、適した区間だけをより詳細な解析へ回します。「システムは、多段階の信号解析プロセスによって、日常生活のノイズと危険な不整脈を区別します」(マロザス教授)。
特許取得、そして「保険適用」という次の課題
このシステムには特許が付与され、技術的な新規性が確認されました。特許は手首装着デバイス本体だけでなく、不整脈の解析アルゴリズムや集約などの新しい評価パラメータもカバーしています。「特許は、長年にわたる分野横断的な取り組みと技術的新規性に対する重要な評価です。ただ、最大のモチベーションは、患者の命を救い、生活の質を高め、社会に役立つ形で医療を前進させることにあります」とマロザス教授は語ります。
患者にとって、TeltoHeartは何より「医師の診察までの道のりが簡単になる」ことを意味します。手術や重い病気のあとに自宅で療養している人が、検査のためにわざわざ医療機関へ足を運ばなくてもよくなるのです。このソリューションはすでにリトアニア国内の多くの医療機関で導入可能で、一部の外来クリニックではEU(欧州連合)出資のプロジェクトを通じて遠隔医療サービスも提供されています。一方で、脳卒中を経験した人などリスクの高い患者へのより広範な保険償還は今後の目標として残されており、開発者は「償還の方針が、こうした先進的な遠隔モニタリングを本当に必要とする患者に届くかどうかを最終的に左右する」と指摘しています。
まとめ
TeltoHeartは、診察室の心電図では捉えきれない「短時間で無症状の心房細動」を日常のなかで拾い上げ、詳細なECGとともに医師へ届けることを狙った医療用リストバンドです。発作の有無だけでなく「いつ・どれだけまとまって起きるか」まで見える化する発想は、脳卒中の再発予防など、ウェアラブルが医療の現場でどう役立つかを考えるうえで示唆に富みます。コンシューマー機の心拍・心電図機能とあわせて、心臓の健康を守るテクノロジーの進化に注目したいところです。
Source: Healthcare in Europe/Kaunas University of Technology(KTU)
画像:Unsplash(イメージ)
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