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Appleが開発しているとされるスマートグラスについて、これまで語られてきたのは「AIアシスタント」や「Ray-Ban Metaへの対抗」といった話題が中心でした。ところが2026年8月2日(日)に配信されたBloombergのニュースレター「Power On」で、Mark Gurman氏がもうひとつの狙いを伝えています。Appleはこのメガネを、Apple WatchやAirPodsと並ぶ健康・フィットネスのデバイスに育てようとしている、というものです。
根拠として挙げられたのが、Apple自身が公開している1枚の求人票でした。ここでは海外メディアの報道をもとに、何がわかっていて、何がまだわからないのかを整理します。
Appleがメガネに持たせようとしている「もうひとつの役割」
Gurman氏によれば、Appleは将来のメガネとヘッドセットに、健康とフィットネスの機能を担わせたいと考えています。単に通知を表示したりAIに話しかけたりするための装置ではなく、身につけているあいだ体の状態を測り続けるウェアラブルとして位置づけたい、という発想です。
考えてみると、これはAppleにとって目新しい発想ではありません。Apple Watchは登場した当初、iPhoneの通知を手元で見るためのアクセサリーという見られ方をしていました。それが心拍数、心電図、睡眠、転倒検出と機能を重ねていくうちに、いまでは同社の健康戦略の中心にいます。この構図をメガネでもう一度描けるのかという論点は、Apple Glassesは「次のApple Watch」になるのか? 2,000億ドル眼鏡市場を揺さぶる戦略でも取り上げています。メガネにも同じ役割を期待している、と考えると筋は通ります。
じつはVision Proで一度つまずいている
この構想の出発点は、Vision Proの開発初期にさかのぼります。Gurman氏によると、Appleは当時、ヘッドセット向けの野心的な健康・フィットネス機能をいくつも検討していました。
なかでも具体的だったのが、Vision Pro専用のApple Fitness+です。ヘッドセットに搭載された身体トラッキング用のセンサーでユーザーの動きを読み取り、レッスンに合わせて運動しながらフォームが正しいかどうかを見てもらえる、という構想でした。自宅で一人でトレーニングしていると、自分の姿勢が合っているのか不安になる場面は少なくありません。それを機械の側から指摘してくれるなら、たしかに価値があります。
しかしこの計画は途中で止まり、最終的に取りやめになりました。理由は2つあると伝えられています。ひとつは技術的な壁。もうひとつは、そもそもVision Proが運動中に着けていられるほど軽くなかったことです。前に大きく張り出した重量物を頭に載せたまま、スクワットや腕立て伏せをする場面を想像すると、この判断は納得できるものです。
なお、Vision Proが健康分野で完全に手ぶらというわけではありません。ヘルスケアと連携するアプリ、ガイド付きの瞑想、運動要素のあるゲームには対応しています。本格的なトレーニング機器と呼べる水準ではないものの、Appleがこの方向をあきらめていなかったことはうかがえます。
参考になるのは、AirPodsがたどった道
Gurman氏はここでAirPodsを引き合いに出しています。AirPodsは当初、単なるワイヤレスイヤホンでした。それがいつのまにか聴力を測り、軽度から中等度の難聴を補う補聴器としての機能まで持つようになっています。イヤホンという「耳に着けるもの」の枠は変えずに、中身の役割を増やしていった形です。
メガネでも同じことができるのではないか、というのがGurman氏の見立てです。フレームに組み込んだセンサーで動きのデータを取れるようになれば、そこからフィットネストラッキングへ進む道が開ける、という筋書きになります。
ちなみにAirPods Proの聴力チェックがどんなものかは、AirPods Proでヒアリングチェックを実際に受けてみたを読むとイメージしやすくなります。
手がかりになった1枚の求人票
Gurman氏が今回の根拠として挙げたのが、Appleが7月23日に掲載した求人でした。募集しているのは、メガネと将来のヘッドセットを担当するVision Products Group(VPG)の「strategic product design leader(戦略的プロダクトデザインリーダー)」というポジションです。
求人票には、この人物が「vision製品全体にわたる健康、ウェルビーイング、フィットネス体験の未来を定義する」手助けをする、と書かれています。求める経験としても「デジタルヘルスまたはフィットネス製品の開発と検証の経験」「センサー駆動の体験への理解」が挙げられました。さらに、空間コンピューティングとウェアラブル、消費者向け健康、人間の行動が交わるところにあるまだ形になっていない可能性を、実際の製品の方向性へ翻訳する役割だとも記されています。
求人票は企業が外に向けて出す数少ない公式文書です。そこに健康とフィットネスがはっきり書かれているという事実は、Appleがこの分野を本気で見ていることの現れだとGurman氏は読み解いています。
細かい点では、勤務地がカリフォルニア州のロサンゼルスとサンノゼの2カ所とされていることも目を引きます。ロサンゼルスが入っているのは、Apple Fitness+のスタジオがサンタモニカにあるためではないか、という見方が海外では出ています。
ただし、発売時点では載らない
ここは誤解しやすいところなので、はっきりさせておきます。Gurman氏は、こうした健康機能がデビュー時のメガネには入らないと明言しています。第1世代には高度な生体センサーは搭載されない見込みで、健康まわりの機能は発売から数年かけて、少しずつ増えていくという見立てです。
Appleの最初のスマートグラスは、2027年の登場が見込まれています。WWDCでお披露目され、その年の後半に発売される、という流れが海外では有力視されています。お披露目の時期をめぐる報道はアップル初のスマートグラスはWWDC 2027でお披露目か?で詳しくまとめています。つまり、健康機能を目当てに待つのであれば、まだかなり長い時間がかかることになります。
「まず出して、あとからセンサーを足す」というやり方
もっとも、この進み方はAppleにとってはいつも通りです。Apple WatchもAirPodsも、最初は限られた機能で登場し、世代を重ねるなかで健康機能を積み増してきました。ハードウェアを先に世に出し、プラットフォームが育ってからセンサーを増やしていく。10年以上続けてきたやり方です。そのApple Watchがいまどこまで来ているかは、Apple Watchは「世界で最も使われるウェアラブルAI」になるかで整理しています。
裏を返せば、製品に実際に現れるずっと前の段階から、Appleの中ではロードマップが引かれているということでもあります。今回の求人票は、その「ずっと前の段階」をたまたま外から覗けた一例と言えます。
現時点でわかっていること
今回の話を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報源 | BloombergのMark Gurman氏によるニュースレター「Power On」(2026年8月2日配信)とApple公式の求人票 |
| Appleの狙い | スマートグラスをApple Watch・AirPodsに続く健康プラットフォームにする |
| 担当部門 | Vision Products Group(VPG) |
| 求人の掲載日 | 2026年7月23日 |
| 募集職種 | strategic product design leader(健康・ウェルビーイング・フィットネス体験の策定) |
| 勤務地 | 米カリフォルニア州ロサンゼルス/サンノゼ |
| 過去の経緯 | Vision Pro向けApple Fitness+を検討したが、技術的な制約と重量の問題で中止 |
| 第1世代での搭載 | なし(高度な生体センサーは載らない見込み) |
| 健康機能の登場時期 | 発売から数年かけて段階的に |
| スマートグラスの登場時期 | 2027年。WWDCでの発表後、年後半に発売との見方 |
まとめ
今回明らかになったのは、あくまで求人票1枚と、それを読み解いた報道です。製品の仕様が発表されたわけでも、Appleが公式に健康機能を予告したわけでもありません。その意味では、まだ推測の域を出ない話です。
それでも、Vision Proで一度断念したフィットネス構想があり、AirPodsを補聴器に変えた実績があり、そこへ「健康とフィットネスの未来を定義する」人材の募集が重なった、という流れには一定の説得力があります。Appleが手首の次に狙っているのが顔まわりだとすれば、スマートウォッチを選ぶときの基準も、数年後には少し変わっているのかもしれません。
続報が入りしだい、あらためてお伝えします。
Source: MacRumors / Cult of Mac / Apple 求人情報
画像: Unsplash(イメージ写真)
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