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米国心臓協会スマートウォッチの血圧測定に警鐘 運動中の数値はあてにならない可能性も

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スマートウォッチを身につけたまま、ランニングや筋トレの合間にサッと血圧をチェックできる時代になりました。でも、その手首に表示された数値、本当に信じても大丈夫なのでしょうか。海外メディアのIntelligent Livingによると、米国心臓協会(AHA)は2025年12月、カフ(腕帯)を使わないスマートウォッチ型の血圧測定について「現時点では高血圧の診断や治療判断に使える精度ではない」とする科学的声明を公表しました。とくに運動中のような動きの大きい場面では、数値の信頼性に注意が必要だといいます。

Image source: Smart Watch Life (AI generated)

Source: Intelligent Living

AHAが指摘する「カフレス血圧計」の現状

従来の血圧計は、腕に巻いたカフを膨らませて一度血流を止め、再び流れ始めるタイミングで圧力を測るしくみです。一方、スマートウォッチに搭載されているカフレス(腕帯不要)の血圧測定は、光学センサーや脈波の伝わり方などから血圧を間接的に推定しています。手軽さは大きな魅力ですが、AHAは「日常生活・運動・睡眠といった現実的な場面での検証データはまだ十分ではない」と指摘しています。

AHAの科学的声明では、こうしたカフレス血圧計について「現時点で高血圧の診断や、薬の調整の根拠として使うべきではない」という慎重な見解が示されています。ガジェットとして便利でも、医療判断に直結させるには時期尚早だ、というスタンスです。

米国では成人のおよそ半数が高血圧に該当するとされ、自覚症状が出にくいことから、ウェアラブル端末で日常的に数値を把握したいというニーズは年々高まっています。ただ、その期待が大きいぶん、表示された数値が独り歩きしてしまう危うさも無視できません。

運動中の血圧は「もともと跳ね上がる」もの

そもそも、運動中の血圧は安静時とはまったく別物だと考えたほうが自然です。心臓は活発に動いている筋肉へ酸素を届けようとするため、上の血圧(収縮期血圧)は大きく上昇します。Intelligent Livingでは、激しい有酸素運動中には収縮期血圧が200mmHg近く、あるいはそれを超える数値まで上がることもあると紹介されています。下の血圧(拡張期血圧)は大きく変わらないことが多いものの、上の数値だけを見ると驚くほど高く感じるかもしれません。

これはトレーニング中に体が正常に働いている証拠でもあります。問題は、その状態の手首に巻かれたスマートウォッチが、動きながらでも正確に血圧を測れているか、という点です。

動き・腕の高さ・汗が精度を揺らす

カフレス測定は、肌に密着したセンサーが安定した信号を読み取れることを前提にしています。ところが、ハンドルを握る、腕を振る、汗で滑る、といった日常的な動作はどれもセンサーの密着度を変えてしまいます。さらに、腕の位置が心臓より高くなったり低くなったりするだけでも、測定結果に差が生まれることが分かっています。

AHAや関連研究では、腕を心臓の高さで支えた状態と、下げた状態とでは数値が変わるとの報告があり、運動中のように姿勢や腕の位置が一定しない場面では、測定値のブレが大きくなる可能性があるとされています。

運動直後の高い数値はそのまま信じない

インターバルトレーニングを終えた直後の状態を思い浮かべてみてください。呼吸は荒く、手首は汗で濡れ、心拍はまだ高いまま。この瞬間にスマートウォッチが弾き出した血圧は、座って落ち着いて測ったときの値とは別物だと考えたほうが安全です。Intelligent Livingも、運動直後の高い数値は「即座の診断材料」ではなく「クールダウンしてから測り直すきっかけ」として受け取るべきだ、と注意を促しています。

カフレス血圧測定のしくみと、避けがたい誤差

スマートウォッチのカフレス血圧測定では、主に次のような技術が使われています。

・光電容積脈波(PPG)センサーを使い、皮膚を通して血液の量の変化を読み取る方式
・手首の動脈の圧力波を直接感じ取る「トノメトリー」
・体の2点間で脈波がどれくらいの速さで伝わるかを計算する「脈波伝播時間(PTT)」方式
・光学センサーに頼らず、電波で生体信号をとらえる新しい方式の研究

いずれの方式でも、血圧そのものをカフのように直接測っているわけではなく、「推定」に頼っているのが特徴です。そのため、多くのデバイスでは精度を保つために、家庭用の従来型血圧計などで定期的にキャリブレーション(基準合わせ)を行うことが求められます。

このキャリブレーションは静かな環境・安静時に行われることがほとんどです。一方、ユーザーが実際に測りたい場面は、ランニング中だったり、筋トレ後だったりと動きの多いタイミング。「静かな状態で合わせた基準を、動きの多い場面に当てはめている」という構造的なズレが、誤差の一因になっています。

FDAも「カフレス血圧計」のテスト基準づくりに動く

こうした課題に対応するため、米国食品医薬品局(FDA)は2026年1月、カフを使わない非侵襲血圧測定機器について、臨床性能試験のあり方を示すドラフトガイダンスを公表しました。医療目的で血圧を測ると謳う機器は、さまざまな集団・利用シーンで精度を示す必要がある、という方向性が打ち出されています。

ウェアラブルが本当に「医療機器並みの信頼性」を獲得するには、研究室内のきれいなデータだけでは足りず、運動・睡眠・日常動作のなかでも一定の精度を出せる証拠が求められる、ということです。

スマートウォッチ血圧測定との上手な付き合い方

では、すでにスマートウォッチを使っている人はどう向き合えばよいのでしょうか。Intelligent Livingが整理している内容を踏まえると、ポイントは次のようなあたりにまとまります。

・1回の数値より「日々の傾向」を重視する。落ち着いた状態の数値が継続的に高めかどうかを見るほうが、健康管理の参考になりやすい。
・家庭での確認には、医療機関でも使われる上腕式の検証済み血圧計を併用する。
・スマートウォッチの数値は、「医師に相談するきっかけ」程度の位置づけで活用する。
・運動中・運動直後の高い数値は、いったん落ち着いて座り、しばらくしてから測り直す。
・キャリブレーションや腕の位置、姿勢など、メーカーが推奨する測り方を守る。

スマートウォッチの血圧機能は、健康への意識を高めるきっかけとしては非常に有用です。ただし、現時点では「あくまで補助的なツール」として扱い、診断や治療判断は医師と検証済みの血圧計に委ねる、という線引きが安全です。

まとめ:手軽さと正確さのバランスを意識する

AHAの今回の科学的声明は、ウェアラブル血圧測定そのものを否定するものではありません。むしろ「便利な技術だからこそ、しっかりとした検証と分かりやすい精度表示が必要だ」というメッセージと受け取れます。FDAのガイドライン整備が進めば、今後はメーカー側の精度表示や検証データもより明確になっていくはずです。

運動中に表示された数値に一喜一憂するのではなく、長い目で自分の体の傾向を眺めるツールとして、スマートウォッチをうまく活用していきたいところです。気になる数値が続く場合は、上腕式の血圧計や医療機関での測定で確認するという、シンプルな手順を改めて意識しておきたいですね。

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