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「Apple Watchを世に出した張本人たちが、自分ではWhoopやOuraを使っている」──そんな皮肉とも取れるニュースが、海外で大きな話題になっています。Apple Watchは2026年で発売から11年を迎え、ウェアラブル市場をひとりで切り拓いてきた存在ですが、ここに来て幹部の退職、人材の流出、新しい競合の台頭という三重の課題に直面しているようです。海外メディアのEntrepreneur.comが、米Bloombergのコラムニスト、Mark Gurman氏のレポートをもとに伝えました。
これは新製品発表のニュースではなく、Appleという巨人がウェアラブル領域で「次の10年」をどう描くか、というやや重めの話題です。とはいえ、Apple Watchユーザーや、これから買い替えを検討している方にとっても、今後の方向性を知るうえでとても大事な内容なので、わかりやすく整理してみました。
Apple幹部のEddy Cue氏が「WhoopとOura」を使っている
象徴的だと話題になっているのが、Appleの幹部の1人であるEddy Cue氏が、健康トラッキングのためにWhoopとOuraを使っている、という事実です。WhoopとOuraは、いずれもディスプレイを持たない「画面なしウェアラブル」の代表格。Whoopは腕に巻くリストバンド型、Ouraは指にはめる指輪型で、AIを活用した睡眠・運動・回復スコアの分析に強みを持つブランドです。
Apple Watchを擁する会社の幹部が、社外の競合デバイスを愛用しているという話は、もちろん「個人の趣味の問題」と切り捨てることもできます。ただ、それでも違和感が残るのは、Apple WatchがApple自身の健康ビジョンの中心にあるはずのデバイスだからです。Bloombergのレポートが取り上げたのも、まさにそういう象徴性の部分でした。
累計売上は推定1000億ドル超──それでもなぜ「失速」と言われるのか
Apple Watchはこの11年で、累計推定1000億ドル(日本円でおよそ15兆円規模)を売り上げたとされています。これは1製品ラインの累積成績としては、間違いなく歴史に残る数字です。
しかし、Bloombergは「Apple Watchはこの業界の次のフェーズで後れを取るリスクがある」と指摘しています。その背景にあるのが、ここ1〜2年で続いている経営層の動きです。
・元最高執行責任者(COO)のJeff Williams氏が昨年退職
・Apple Fitness+の責任者を務めていたJay Blahnik氏が、訴訟が絡む形で退社へ
・健康関連製品のマーケティングを率いていたStan Ng氏も最近退職
・さらに、Apple Watchの中核を担っていた人材の一部が、競合企業へ流出している
Apple Watchという製品を企画・育ててきた人たちが、ここ数年で一気に入れ替わっている、という構造です。製品そのものの完成度は高くても、「次に何を狙うのか」を描く中枢の力が弱まっていないか、という懸念は決して大げさではないと感じます。
画面なしウェアラブル市場の急成長と、Appleの「追いかける側」へのシフト
もうひとつのポイントは、市場のトレンドそのものが変わりつつあることです。スマートリングや、Whoopのようなスクリーンレスのバンド型デバイスは、ここ数年で数十億ドル規模のビジネスに育っています。共通するのは、ハードウェアそのものよりも「AIで分析されたインサイト(気付き)」を売っているという点です。
Bloombergの記事の中でも、「画面なしのバンドや指輪型デバイスは、本来であればAppleが先頭を切るべき領域だったはずだ。後追いで真似する立場になっている時点でおかしい」という趣旨の指摘がされていました。実際、Apple WatchのHealthアプリは情報の見せ方こそ進化してきましたが、「あなたは今日どう過ごすべきか」をAIが提案するレベルでは、Whoopコーチ機能やOuraのAdvisor機能に一歩譲っている、という評価が定着しつつあります。
AI健康コーチ「Mulberry」の縮小と、John Ternus新CEO体制への期待
そのAI領域で巻き返しを図る切り札と見られていたのが、社内コードネーム「Mulberry(マルベリー)」と呼ばれるAI健康コーチプロジェクトでした。ところが、このプロジェクトも最近スケール(規模)を縮小したと報じられています。Eddy Cue氏自身は、Apple Watch事業のテコ入れに向けてより大胆な変化を主張してきたとされますが、社内の意思決定はまだ揺れているようです。
そして節目になりそうなのが、9月に予定されているTim Cook CEOの退任です。後任には、ハードウェアエンジニアリングを率いてきたJohn Ternus氏が就くと伝えられています。Bloombergのレポートは「Appleが自ら作ったカテゴリーを再びリードできるかどうかは、新体制がどれだけ速く動けるかにかかっている」と結んでいました。
日本のユーザーから見た現実的な視点
日本のApple Watchユーザーから見ると、「いきなり明日の使い勝手が悪くなる」という話ではありません。Apple Watch自体は、SuicaやPayPay、iPhoneとの連携、watchOSアップデートによる機能拡張など、日々の使い勝手という意味では依然として頭一つ抜けた存在です。
ただし、「健康データをどう活かすか」「AIにどこまで自分の生活設計を委ねるか」というウェアラブルの本丸とも言える領域では、画面のないリングやバンドが新しい選択肢として現実味を帯びてきました。Apple Watchひとつで完結させるのか、Apple WatchとOura RingやWhoopを併用するのか──そういう「組み合わせ前提」のウェアラブル時代に、すでに私たちは入りつつあるのかもしれません。
まとめ
Apple Watchはこの10年余りで、ウェアラブルというカテゴリーそのものを作り上げた製品です。累計1000億ドル超の売上という結果は、それだけで十分すぎる成功と言っていいでしょう。
一方で、業界の関心はすでに「次の10年」に移っています。経営層の入れ替わり、画面なしウェアラブルの急成長、AI健康コーチ領域でのプロジェクト縮小、そして9月のCEO交代。Apple Watchを取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わろうとしています。Smart Watch Lifeでは引き続き、Appleおよびウェアラブル業界全体の動きを追いかけていきます。
Source:Entrepreneur.com
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