摂取カロリーを腕時計で自動測定する「FLOW™テクノロジー」とは?HEALBEの特許技術の仕組みを解説

食べたものをアプリに入力しなくても、つけているだけで摂取カロリーが自動でわかる——。シャープ「からだメイト Watch」やHEALBE「GoBe」シリーズが実現しているこの体験を支えているのが、HEALBEの特許技術「FLOW™テクノロジー」です。とはいえ「体が吸収したカロリーを測るって、いったいどういう仕組み?」と気になる人も多いはず。この記事では、FLOW™テクノロジーが摂取カロリーを推定する原理と、記録されるタイミング、精度の考え方、そして知っておきたい注意点までを、わかりやすく整理します。

実際にこの技術を搭載したシャープ「からだメイト Watch」を使ってみた様子は、シャープ「からだメイト Watch」実機レビューでお届けしています。あわせてどうぞ。

FLOW™テクノロジーとは?「食べた量」ではなく「吸収したエネルギー」を推定する

FLOW™テクノロジーの最大の特徴は、食品データベースや入力した食事内容からカロリーを計算するのではなく、体が実際に吸収したエネルギー量を推定する点にあります。GoBeスマートバンドは、この特許技術とインピーダンスセンサーを使って、体内のグルコース(糖)濃度の変化を分析します。だからこそ、食べたものをいちいち記録しなくても、日常生活のなかで自動的に摂取カロリーが記録されていきます。

この違いは、実際に数字を見るときに効いてきます。からだメイト Watchを扱うシャープの説明でも、測定しているのは「口に入れた食品の表示カロリー」ではなく「身体が実際に吸収・利用したカロリー」で、食品に表示されているカロリーとウォッチの表示は必ずしも一致しない、と明記されています。パッケージの数字と突き合わせて答え合わせをする使い方は、そもそも想定されていないわけです。

シャープ「からだメイト Watch」の背面。中央の光学式心拍センサーが緑色に発光し、周囲に生体電気インピーダンス測定用の電極と充電端子が並ぶ

背面の中央が光学式心拍センサー。その周囲の金属部が、体内の水分の動きを読み取る生体電気インピーダンスの電極

ここで押さえておきたいのが、FLOW™が単体のセンサーではないことです。HEALBEは公式サイトで、FLOW™を「センサー群と、生理学的モデル・数学的モデルの複合体」と定義しています。センサーが拾った生体データを、消化と吸収の生理をモデル化した計算式に通して初めて摂取カロリーの数値が出てくる、という構造です。関連資料では、インピーダンスセンサーに加えて圧力(ピエゾ)センサーや加速度センサーも組み合わせて使われると説明されています。つまり「ひとつのセンサーがカロリーを読み取っている」わけではありません。

手に持ったシャープ「からだメイト Watch」。カロリー収支のウォッチフェイスに摂取カロリー、消費カロリー1147kcal、収支マイナス291kcal、歩数1863歩が表示されている

シャープ「からだメイト Watch」。FLOW™テクノロジーを採用し、食事を入力しなくても摂取カロリーが積み上がっていく

仕組み:糖の吸収にともなう体液の動きをインピーダンスで読む

ポイントになるのが、糖と水分の関係です。食事をすると炭水化物がグルコース(糖)に変わって血中に入り、細胞はそのグルコースを取り込みます。このとき細胞は水分を放出するため、細胞の内と外で体液の分布が変化します。FLOW™テクノロジーは、この変化を高精度の生体電気インピーダンスセンサーで追い続けます。

HEALBEの公式説明では、この仕組みを「摂取した栄養素の浸透圧に関連するパターンを検出するために、組織内の水分の動きを常時追跡している」と表現しています。つまり水分量そのものを知りたいのではなく、浸透圧の変化を手がかりに、糖がどれだけ吸収されたかを逆算しているわけです。その波形から利用者ごとのグルコース曲線を組み立て、曲線の形から摂取エネルギーを算出します。曲線の形は炭水化物・脂質たんぱく質といった栄養素の構成によって変わるため、同じカロリーでも食事内容によって現れ方が違ってきます。

生体電気インピーダンス自体は100年以上前から知られている手法ですが、HEALBEはこれをウェアラブルに載せた最初の例だとしています。シャープの説明でも、体内の水分や糖の動きを検知して自動的に摂取カロリーを測定するため、食事内容やカロリーを入力する必要がない、とされています。

いつ記録される?「食べた瞬間」ではなく「吸収されたタイミング」

FLOW™テクノロジーが測っているのは食べた瞬間ではなく、栄養素が血液に入る“吸収”の段階です。食事はすぐに吸収されるわけではなく、一般的に食後5〜9時間ほどかけて体内に取り込まれます。消化の各段階には、次のような時間差があります。

・1〜2時間:咀嚼と嚥下(噛んで飲み込む)

・3〜4時間:消化液による食べ物の処理

・4〜8時間:消化の進行

・5〜9時間(ときに24時間以上):吸収エリアへ運ばれ血液に入る

これらの一部は同時に進むため、消化された食べ物の最初の一部は15〜30分ほどで血中に入ることもありますが、食事の主要な部分は3〜4時間かけて消化され、その吸収期間が次の食事と重なることもあります。食事の内容によっても差があり、糖類や砂糖なら1時間ほどで約90%が血液に現れる一方、肉と付け合わせを含む複雑な料理では9〜10時間かかることもあります。こうした吸収の時間差があるため、夜間や睡眠中に摂取カロリーが記録される場合があるのはこの技術ならではの特徴です。

食べていないのに摂取カロリーが増えるのはなぜ?

使っていると不思議に感じるのが、何も食べていない時間帯に摂取カロリーが記録されることです。これは不具合ではありません。

HEALBEの説明によると、GoBeは食事由来のエネルギーだけでなく、体脂肪やグリコーゲンといった体内の貯蔵エネルギーが使われた分も検出します。実際に起きやすい場面として、断食や間欠的な食事のあいだ、ダイエット中、運動のあと、そして睡眠中や安静時が挙げられています。

言い換えると、FLOW™が示しているのは「口から入れた量」ではなく「体が使えるエネルギーとして受け取った量」です。食事を抜いた日に数値がゼロにならないのは、体が自分の蓄えを取り崩して動いていることの裏返しでもあります。

数値が後から変わるのはなぜ?最大12時間の“再評価”

もうひとつ知っておきたいのが、一度表示された摂取カロリーの値や推移が、後から変動することがあるという点です。これは、より正確な摂取カロリーを算出するために、過去のデータをさかのぼって再評価しているためです。シャープの説明によると、この更新は最大12時間程度行われることがあります。「さっき見た数字と少し違う」と感じても不具合ではなく、精度を高めるための仕組みだと理解しておくと安心です。

精度を高めるコツと、限界について

FLOW™テクノロジーは吸収のプロセスを継続的にとらえる必要があるため、装着時間がそのまま精度に効いてきます。HEALBEは1日22〜23時間以上の連続装着と、食事中および食後3〜4時間はとくに外さないことを推奨しています。食後の数時間こそがデータの本番だからです。使い続けるほど個人のデータに合わせて調整が進む、とも説明されています。

装着時間と同じくらい大事なのが、どう着けるかです。シャープの説明によれば、センサーと皮膚の間に大きな隙間がない状態が望ましく、装着が緩いとセンサーと皮膚の接触が不安定になって、消化・水分量の測定と心拍の測定の両方に影響します。数値が出なくなったり動かなくなったりしたときは、まずバンドの締め具合を疑うのが早道です。

では22〜23時間装着するとして、充電はいつするのか。シャープは「起床から朝食までの時間」を推奨しています。この技術にとって重要なのは食事とその後の数時間なので、まだ何も食べていない起床直後に充電を済ませてしまえば、測りたい時間帯を削らずに済むという理屈です。

水分バランスの測定にも、同じように前提があります。シャープは、正常な水分状態を判断するために少なくとも2日間の継続装着が必要だとしたうえで、摂取カロリーの反映に時間がかかることとあわせて、最低7日間は連続で装着してから評価を始めてほしいと案内しています。着けた初日の数字で判断するには、そもそも早すぎるということです。

精度の根拠として、HEALBEは第三者機関による2件の検証研究を公開しています。

カリフォルニア大学デービス校(米国):18〜40歳の成人27名(男性11名・女性16名)を対象に14日間実施。食事は同校の厨房でHACCPに沿って調理し、各メニューのカロリーを分析、配膳量と食べ残しまで記録して比較。3日移動平均に変換した比較で精度90%、2週間全体では精度91%(相対誤差9%)

広州赤十字病院(中国):健康な13名(男性3名・女性10名)を対象に28日間実施。食事記録との比較で、1日あたりの差は平均およそ250kcal、相対誤差は約12.55%

この2件を合わせた2週間の相対誤差の平均が11%で、HEALBEはここから平均精度89%としています。ここで大事なのは、この数字が「1食ごとの正確さ」ではないことです。いずれの研究も3日単位で平均をとって比較しており、評価されているのは数日から数週間のスケールでの一致度です。吸収に数時間から十数時間かかる仕組みである以上、「いま食べたこの一皿を当てる機器」ではなく、長期の摂取傾向をつかむための推定機器と位置づけたほうが実態に近くなります。

限界もはっきり示されています。HEALBEは断食(ファスティング)中や、高たんぱく・高脂質に偏った食事では精度が下がるとしており、アルゴリズムの改良を続けているほか、近く「ダイエット」モードの導入も目指していると案内しています。なお「推定である」という事情は、収支のもう一方である消費カロリー側も同じです。むしろ消費側のほうが、食べるだけで消費する分や歩数にならない活動が抜け落ちるぶん、実態より低く出やすいという構造を抱えています。

つまりFLOW™テクノロジーは万能の“カロリー計算機”ではなく、日々の摂取と消費のバランスの傾向をつかむための目安として活用するのが現実的です。

医療機器ではない点に注意

大切な前提として、FLOW™テクノロジーを搭載した製品は医療機器ではありません。病気や症状の診断・治療・治癒・予防を目的としたものではなく、提供される情報やガイダンスはあくまで参考情報です。医師や医療専門家による診断・治療の代わりにはならないため、数値や体調について疑問がある場合は、自己判断せずに医師などの専門家に相談してください。あくまで日々の健康管理を楽しく続けるためのパートナーとして捉えるのがよいでしょう。

どの製品で使える? GoBeシリーズとからだメイト Watch

シャープ初のスマートウォッチ「からだメイト Watch」のメインビジュアル。左がゴールド、右がシルバーの2色展開
シャープ「からだメイト Watch」(左から、ゴールド、シルバー)

現在、摂取カロリーを自動で計測できるモデルは、このFLOW™テクノロジーを提供するHEALBEの「GoBe」シリーズと、同技術を採用したシャープ「からだメイト Watch」くらいしか存在しません。GoBeシリーズのこれまでの流れは「摂取カロリー自動計測」のHEALBE GoBe3が販売終了しGoBe Uへ移行した経緯で、からだメイト Watchの発売時の詳細はシャープ初のスマートウォッチ「からだメイト Watch」7月9日発売の記事でまとめています。操作感などで先発メーカーに譲る部分はあっても、「食べたものを入力せずに摂取カロリーがわかる」という独自性は、ほかにはない大きな魅力です。

からだメイト Watch(MH-W01)の購入先

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シャープ公式オンラインストア(COCORO STORE)でも取り扱いがあります。家電量販店の店頭でも購入できるため、実機を触ってから決めたい方は店舗も選択肢になります。

なお、収支のもう一方である消費カロリーを各社がどう見積もっているかはスマートウォッチは消費カロリーの「基礎代謝」まで測れるの?で横並びに整理しています。摂取と消費の両方を押さえておくと、手元に出てくる数字の意味がつかみやすくなります。

まとめ

FLOW™テクノロジーは、食事を直接“測る”のではなく、食後のグルコース変化にともなう体液分布の変動を複数のセンサーで解析し、摂取エネルギーを長い時間スケールで推定するHEALBEの特許技術です。記録が吸収のタイミングで行われることや、後から数値が再評価されること、そして医療機器ではないことを理解しておけば、表示される数字ともうまく付き合えます。食事の記録が続かなかった人でも「つけているだけ」で摂取と消費のバランスが見える——そんな新しい健康管理のかたちを支える技術として、今後の進化にも注目です。

Source: HEALBE公式(FLOW™ Technology)HEALBE公式(Technologies and validations)HEALBEサポート(How FLOW Technology Works)HEALBEサポート(How Does GoBe U Count Calories)HEALBEサポート(How Accurate is GoBe U)シャープ公式(からだメイト Watch)

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