スマートウォッチは消費カロリーの「基礎代謝」まで測れるの? 各社の仕組みを比較

机上に置かれたシャープ「からだメイト Watch」。ウォッチフェイスに摂取カロリー、消費カロリー1146kcal、収支マイナス290kcal、歩数1863歩が並んで表示されている

スマートウォッチを着けていると、毎日「消費カロリー」の数字が出てきます。ダイエットの目安にしている方も多いと思いますが、その数字を見ながら「これって本当に合っているの?」と感じたことはないでしょうか。

じつは消費カロリーの大部分を占めているのは、運動した分ではありません。じっとしていても使われる基礎代謝です。ということは、スマートウォッチが基礎代謝をどう扱っているかを知らないと、表示される数字の意味もわかりません。今回は、Apple Watch・Fitbit・Garmin・Galaxy Watch・シャープ「からだメイト Watch」が、それぞれ基礎代謝をどう扱っているのかを、各社の公式説明をもとに整理してみました。

提供に関する注記
本記事はシャープから製品貸与を受けて執筆していますが、内容・評価は編集部(筆者)が独自に判断しています。

消費カロリーは「基礎代謝」と「動いた分」の合計

Apple Watchに関するイメージ画像

まず前提の整理です。1日の消費カロリーは、大きく2つに分かれます。

ひとつが基礎代謝。呼吸をする、心臓を動かす、体温を保つといった、生きているだけで使われるエネルギーです。基礎代謝率(BMR)や安静時代謝率(RMR)とも呼ばれます。もうひとつが、歩いたり運動したりして使われる活動分です。

比率としては、基礎代謝のほうが圧倒的に大きくなります。Fitbitのヘルプ(現在はGoogle Health)は、BMRが「1日の消費カロリーの少なくとも半分を占めています」と説明しています。体組成計メーカーのタニタも、1日の総消費エネルギーのうち基礎代謝によるものは約60パーセントにのぼるとしています。

つまり、スマートウォッチが運動をどれだけ正確に計測できても土台になる基礎代謝の見積もりがズレていれば、1日の消費カロリーは丸ごとズレます。ここが今回のいちばん大事なポイントです。

各社は基礎代謝をどう扱っているのか

Apple Watchに関するイメージ画像

「うちのスマートウォッチは運動しか見ていないのでは?」と思われるかもしれませんが、実際には主要メーカーはいずれも基礎代謝にあたる分を計算に入れています。各社の公式説明を見てみましょう。

Apple Watch

Appleのサポートページには「Apple Watchは、身長、体重、性別、年齢などの個人情報を参考にして消費カロリーなどを測定します」と書かれています。iPhoneのヘルスケアAppには「安静時消費エネルギー」という項目が独立して用意されていて、これが基礎代謝にあたる部分です。

アクティビティリングの「ムーブ」は動いた分だけを表示する仕組みなので、「Apple Watchは基礎代謝を見ていない」と誤解されがちですが、内部では別に持っています。

Fitbit(Google Health)

Fitbitの説明は、アプリがGoogle FitbitからGoogle Healthに変わったあとも引き継がれていて、各社のなかでいちばん直接的です。「Fitbit デバイスは、基礎代謝率(BMR)とアクティビティ データを組み合わせて、消費カロリーを推定します」と明記されており、BMRについては「呼吸、血液循環、心拍などの重要な身体機能を維持するために、安静時に消費されるカロリーの割合のこと」と定義されています。運動中は心拍数データも判断材料に加わり、デバイスに表示されるのはその日の総消費カロリーだと説明されています。

そのBMRは「Google Health アカウントに入力した身体データ(身長、体重、性別、年齢など)に基づいており、1 日の消費カロリーの少なくとも半分を占めています」とされています。睡眠中や活動していないときも身体はカロリーを消費するため、目を覚ました時点ですでに消費カロリーが表示され、その数値が1日を通して増えていく仕組みです。詳しい説明はGoogle Healthヘルプの「Fitbit デバイスは毎日のアクティビティをどのように計算しますか?」で公開されています。

Garmin

Garminの用語解説がいちばん構造をはっきり示しています。「安静時カロリー」は休息代謝率(RMR)とも呼ばれるもので、「身体の基本的な生理機能に必要な最小カロリーである基本代謝量(BMR)、そして年齢、身長、体重、性別によって計算され」ると説明されています。そして「合計カロリー=アクティブカロリー+安静時カロリー」と定義されています。

メーカー 基礎代謝の扱い 何をもとに算出するか
Apple Watch 「安静時消費エネルギー」として保持 身長・体重・性別・年齢などの個人情報
Fitbit(Google Health) BMRとアクティビティデータを組み合わせて推定 身長・体重・性別・年齢などの身体データ
Garmin 「安静時カロリー」+アクティブカロリー=合計カロリー BMRと年齢・身長・体重・性別
Galaxy Watch 体組成測定の結果としてBMRを表示 BIAセンサーによる体組成の実測値
からだメイト Watch 身体活動レベルを3段階から選んで設定 ユーザーが申告する活動レベル(低い/ふつう/高い)

こうして並べると、どのメーカーも基礎代謝そのものを計測してはいないことが分かります。身長・体重・年齢・性別といった情報を計算式に当てはめて、統計的に推定しているだけです。これは手抜きではなく、手首のセンサーで基礎代謝を直接測る手段が現実的に存在しないためですが、推定である以上、限界もあります。

タニタの解説によれば、脂肪を除いた体組織のなかで基礎代謝のエネルギー消費がもっとも多いのは骨格筋です。つまり、同じ体重・同じ年齢・同じ性別でも、筋肉量が多い人と少ない人では基礎代謝が変わります。身長と体重からの推定では、この差を拾えません。日ごろから運動している方が「表示より実際はもっと消費しているはず」と感じるとすれば、その感覚のほうが正しい可能性があります。

例外はGalaxy Watch。体組成を測ってBMRを出す

Galaxy Watch Ultra 2025

そのなかで一歩踏み込んでいるのがGalaxy Watchです。Wear OS搭載のGalaxy Watchには体組成測定機能があり、Samsungの公式サポートによれば、背面の生体電気インピーダンス分析(BIA)センサーが微弱な電流を流して、体内の筋肉・脂肪・水分の量を測定します。同社はこの測定結果について、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)のスキャンと98パーセントの相関を達成し、市販の8電極式BIA機器に匹敵する精度だとしています。

そして測定が終わると、体重・骨格筋・体脂肪量・体脂肪率・BMI・体水分に加えて、BMR(基礎代謝量)が結果画面に表示されます。体組成の実測値からBMRを出しているという点で、身長と体重からの推定より根拠が一段しっかりしているわけです。この体組成測定は歴代のGalaxy Watchで毎年試してきた機能で、世代ごとの使い勝手はGalaxy Watch歴代モデル使用レビュー総まとめにまとめています。

ただし注意点もあります。この体組成測定は、指を2つのボタンに当てて15秒ほどかけて行う手動の計測です。測定したBMRが日々の消費カロリーの計算にどう反映されるかまでは、公式には明示されていません。「常に体組成に基づいて消費カロリーが計算され続けている」わけではない点は、押さえておいたほうがよさそうです。

シャープ「からだメイト Watch」は3段階の申告制

机上に置かれたシャープ「からだメイト Watch」。ウォッチフェイスに摂取カロリー、消費カロリー1146kcal、収支マイナス290kcal、歩数1863歩が並んで表示されている

シャープ「からだメイト Watch」。摂取カロリーは自動で測れる一方、基礎代謝のほうは実測ではなく、身長・体重・年齢・性別と3段階の申告から割り当てられた固定値が使われている

なお、この製品が消費カロリーの相方である摂取カロリーをどう測っているかはHEALBEの特許技術「FLOW™テクノロジー」の解説で、実際に使うと収支がどう見えるかはからだメイト Watchの実機レビューでそれぞれ詳しく扱っています。

からだメイトアプリのプロフィール設定画面。身体活動レベルを「低い(運動はしない)」「ふつう(軽く運動する)」「高い(活発に活動する)」の3段階から選ぶ

もうひとつ、方式がはっきり違うのがシャープの「からだメイト Watch」です。摂取カロリーを自動測定できる珍しいモデルですが、その相方である消費カロリー側は、アプリで身体活動レベルを「低い(運動はしない)」「ふつう(軽く運動する)」「高い(活発に活動する)」の3段階から選ぶ設定になっています。

この3段階には元ネタがあります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、1日に必要なエネルギー量を基礎代謝量×身体活動レベルで求め、18〜64歳の身体活動レベルを「低い1.50/ふつう1.75/高い2.00」の3区分としています。栄養学では標準的な考え方で、からだメイトはこの枠組みをそのまま採用していると考えてよさそうです。

方式としては筋が通っているのですが、他社とは性格が変わります。Apple Watchなどが「基礎代謝の推定値に、実際に動いた分を積み上げる」のに対して、からだメイトはユーザーが申告した活動レベルが土台を決める形になります。申告が実際の生活と合っていないと、収支が丸ごとズレてしまうわけです。

実際に使ってみたときも、身体活動レベルを「低い」に設定していると、常に摂取カロリーが消費カロリーを上回る状態が続きました。それでいて体重はほとんど変わらないままです。「低い」は生活の大部分が座位という想定なので、日常的に運動をしている人が選ぶと消費側が小さく見積もられてしまうのだと思われます。

ただし、これは短期間だけ使ったときの印象でもあります。2週間ほど続けて使うと、消費が摂取を上回る日も出てくるようになり、表示される数値は体感に近づいていきました。収支が一方向に張り付いて見えるときは、設定の問題だけでなく、その時期の食生活そのものが数字に出ている可能性もあります。判断するなら、最低でも1週間は連続で装着してからにしたほうがよさそうです。

どのメーカーも、基礎代謝を「毎日計算し直していない」

各社の実際のデータを追っていくと、もうひとつ見えてくることがあります。基礎代謝にあたる数値は、日によってほとんど動きません。

iPhoneのヘルスケアAppで安静時消費エネルギーを週表示にしたグラフ。月曜から土曜まで棒の高さがほぼ揃っている

iPhoneのヘルスケアAppで「安静時消費エネルギー」を週表示にすると、棒グラフの高さが横一列に揃ったままになります。その日の運動量や睡眠時間がどうであれ、安静時の消費エネルギーとして計上される値は変わらないわけです。Appleはこの項目を「体が最低限の活動を行っているときに消費されるエネルギーの推定値」と説明しており、運動した分は「アクティブエネルギー」として別に積み上がる構造になっています。

Google Healthの合計消費カロリーの週表示。7月27日から29日まで1,477kcalと同じ数値が並んでいる

Google Healthの合計消費カロリーでも同じことが起きます。日別のリストを見ると、7月27日・28日・29日がいずれも1,477kcalと、1kcalの違いもなく同じ数値が並んでいました。こちらは安静時の分だけを取り出した数値ではなく合計値ですが、その半分以上をBMRが占めていて、しかもそのBMRが固定されているために、こうした一致が起こります。

シャープの「からだメイト Watch」でも同じでした。からだメイトも基礎代謝そのものを測っているわけではありません。申告された身体活動レベルに合わせて、一定の数値を割り当てているというのが実態のようです。

これは実データでも確かめられました。からだメイトのアプリは消費カロリーを「基礎代謝」と「活動カロリー」に分けて表示するのですが、基礎代謝の欄はどの日を開いても1,448kcalのまま動きません。変わるのは活動カロリーの側だけで、筆者の場合は46〜104kcalの範囲でした。

からだメイトアプリのカロリーバランス画面3日分。基礎代謝はいずれも1448kcalで固定され、活動カロリーが46kcal・87kcal・104kcalと変動している

興味深いのは、同じ人物を別の機器で測った場合との差です。手持ちの体組成計が体脂肪率や筋肉量の実測から算出した基礎代謝は1,352〜1,361kcal。からだメイトの1,448kcalとは90〜100kcalの開きがあります。実測ベースと申告ベースで、これだけ違うわけです。

1日100kcalの差は小さく見えますが、1か月なら3,000kcal、体重にすればおよそ0.4kgぶん。「基礎代謝を測っているのか、推定しているのか」の違いは、長い目で見るとこれくらいの誤差として効いてきます。

ここから言えるのは、Apple・Google・シャープのいずれも、身体データから割り出した固定的な値を基礎代謝として割り当てているという点では同じだということです。シャープは活動レベルの申告から、AppleとGoogleは身長・体重・年齢・性別から値を決める、という入口の違いはあります。それでも「一度決めた数値を毎日使い続けている」という土台の作り方は共通しています。入口は違っても、基礎代謝を毎日測り直していないという意味では、どのメーカーも同じ地点に立っています

表示された数字が怪しいと感じたときの読み方

ここまでを踏まえると、スマートウォッチの消費カロリーとの付き合い方も見えてきます。

絶対値より変化を見る。基礎代謝が推定である以上、「今日は2,100kcal消費した」という数字そのものの正確さを追いかけてもきりがありません。先週より増えたのか減ったのか、という変化のほうが信頼できます。

消費カロリーは全体として低めに出ると考えておく。抜けているのは基礎代謝の推定誤差だけではありません。食べるだけで消費する分(食事誘発性熱産生)や、家事・姿勢の維持といった歩数にならない活動は、手首のセンサーでは原理的に測れないからです。この構造と、実データで逆算するとどれだけ差が出るのかはスマートウォッチの消費カロリーはなぜ低く出るのか? 厚労省の内訳と実測データで検証にまとめています。

最終的な答え合わせは体重計でする。摂取と消費の収支がプラスに出ているのに体重が変わらないなら、どちらかの見積もりがズレています。数週間単位の体重の推移こそが、いちばん確かな検証になります。

プロフィールを最新に保つ。身長・体重・年齢が計算の入力値そのものなので、体重が変わったら更新しておかないと、基礎代謝の推定もズレたままになります。Appleも公式に、個人情報を最新の状態に保つことを精度向上の第一項目として挙げています。

体組成を別で把握しておく。筋肉量が基礎代謝を左右するので、体組成計を併用すると自分の基礎代謝の水準がつかめます。Galaxy Watchのように本体で測れるモデルなら、その値を目安にできます。

まとめ

スマートウォッチは基礎代謝を「測って」はいません。Apple Watch・Fitbit・Garminはいずれも、身長・体重・年齢・性別から推定した基礎代謝に、実際に動いた分を足して消費カロリーを出しています。Galaxy Watchだけは体組成の実測からBMRを算出でき、シャープのからだメイト Watchはユーザーが3段階で申告した活動レベルを土台にします。そしていずれの方式でも、いったん決まった基礎代謝の値は日々ほとんど動きません。

どの方式にも一長一短があり、「絶対に正しい消費カロリー」を表示できる機種は存在しません。ただ、仕組みを知っていれば、数字が想像と違ったときに慌てずに済みます。表示された数値は目安として受け取りつつ、体重の推移と突き合わせて自分なりの補正をかけていく――それが、いまのスマートウォッチとのいちばん現実的な付き合い方だと思います。

Source: AppleGoogle Health(Fitbit)GarminSamsung厚生労働省厚生労働省 健康用語辞典(日本人の食事摂取基準)タニタ

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