Apple Watchがアスリートの不整脈を捉え、重い心筋症の早期発見に|33歳男性の症例を医学誌が報告。ただし診断は医療機関で【海外研究】

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Apple WatchのECG(心電図)アプリで心電図を計測している画面。心拍数68拍/分と22秒のカウントダウン表示

スマートウォッチの心電図(ECG)機能は「心房細動を見つけるもの」というイメージが強いかもしれません。ところが、より命に関わる別の不整脈をきっかけとして捉え、若いアスリートの重い心臓病の発見につながった症例が、医学誌に報告されました。

医学ジャーナル「Cureus」に2026年7月25日付で掲載された症例報告です。33歳の運動習慣のある男性が、Apple Watchの単極誘導ECGで異常な脈に気づいたことが受診のきっかけとなり、最終的に不整脈原性心筋症(ACM)という診断にたどり着いた経緯がまとめられています。若い人・アスリートの突然死の原因にもなりうる病気だけに、ウェアラブルが果たした役割が注目されます。

きっかけは、明け方に腕時計が捉えた「異常な脈」

症例の男性は、週5回以上のウェイトトレーニングやサッカーを続ける、健康的なアスリートでした。喫煙・飲酒はなく、心筋症や突然死の家族歴もありません。ある火曜の夜に12分間の動悸を感じ、翌朝にも同様の発作を経験。そして木曜の午前3時、目を覚ました彼のスマートウォッチの単極誘導ECGが頻発する期外収縮を記録し、それが幅広い波形の頻拍(ブロードコンプレックス頻拍)へと進んでいきました。過去にも腕時計の心拍データが受診につながった例が報告されています。

最終的に40分間続く動悸となりましたが、血行動態は保たれていました。彼はこの記録を手に自ら救急外来を受診。病院の12誘導心電図では、左脚ブロック型の心室頻拍(VT)が確認されました。腕時計の異変がなければ、受診のタイミングはもっと遅れていたかもしれません。

「良性」と思われた不整脈が、実は重い心筋症だった

当初、この不整脈は特発性右室流出路起源の心室頻拍(idiopathic RVOT VT)と考えられました。これは構造的に正常な心臓で起こる、比較的良性でカテーテルアブレーション(焼灼術)で治りやすいタイプの不整脈です。

ところが、最初のアブレーション後も心室頻拍が再発しました。ここが重要な分かれ目です。心臓MRIでは心筋の一部に線維化(傷んだ組織)が見つかり、さらに詳細な電気解剖学的マッピングで、右心室の広い範囲に瘢痕(はんこん=傷跡の組織)が確認されました。これらは、良性の不整脈ではなく不整脈原性心筋症(ACM)の特徴と一致するものでした。「良性そうに見える不整脈が、実は進行しうる心筋症の初期段階だった」という、見逃されやすいパターンです。

再発を防ぐため、皮下植込み型除細動器を装着

再発する心室頻拍と広範囲の瘢痕を踏まえ、男性は突然死の二次予防として皮下植込み型除細動器(S-ICD)を装着しました。遺伝子検査や炎症・自己免疫などの精査は陰性で、遺伝子が特定できないタイプ(gene-elusive)のACMと考えられています。

その後17か月ほどの経過観察では、男性は症状なく安定しており、除細動器が作動した記録もありません。スポーツ心臓病の専門チームと連携しながら、運動を続けられる範囲を個別に調整しつつ、投薬とフォローアップが続けられています。

ウェアラブルの心電図は「入り口」。診断は医療機関で

この症例が示すのは、スマートウォッチのECGが、心房細動だけでなくより危険な心室性の不整脈を捉えるきっかけにもなりうるということです。特に、若くて活動的な人は長時間の医療用モニタリングを受ける機会が少なく、いつ起こるか分からない不整脈を拾ううえで、ウェアラブルが補助的な役割を果たせる可能性があります。

ただし、論文の著者らも強調しているとおり、スマートウォッチのECGでは心臓の構造的な病気そのものを診断することはできません。あくまで異常に気づく入り口であり、確定には12誘導心電図・心臓MRI・電気生理学的検査といった医療機関での精密検査が欠かせません(Apple Watchの心拍計測のしくみもあわせて押さえておきたいところです)。なお今回の報告では、きっかけとなった腕時計のECG波形や通知データそのものは、後から検証する形では残っていなかったことも記されています。

まとめ

この症例は、3つのことを教えてくれます。ひとつは、若い人やアスリートの心室頻拍を「どうせ良性だろう」と決めつけてはいけないこと。もうひとつは、ウェアラブルが早期の気づきを助ける一方で、必ず従来の検査による確認が必要なこと。そして、電気生理・画像診断・スポーツ心臓病といった多職種の連携が、長期的なケアの質を左右することです。

スマートウォッチはお医者さんの代わりにはなりません。それでも、「いつもと違う」と教えてくれる小さなきっかけが、大きな病気の早期発見につながることがある——そんな可能性を示す一例といえます。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。

Source: Cureus(Shroddha A, Mukherjee I, Lambiase PD, 2026)DOI:10.7759/cureus.113337

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