Table of Contents
ランニングを始めて、スマートウォッチに「VO2max」という数値が出るようになった。でもこれ、良い数字なのか悪い数字なのか、そして上げるにはどうすればいいのか。同じところで止まっている人は、実はかなり多いようです。低酸素トレーニングスタジオ「ハイアルチ」を運営するHigh Altitude Management株式会社が2026年7月28日、市民ランナー向けの無料カウンセリングを始めるにあたって公表したデータによると、Googleでの「VO2max」の検索関心は直近1年で約2倍に伸びていました。しかも伸びているのは「とは」ではなく「上げ方」。スマートウォッチがきっかけで、VO2maxは見る数値から動かす数値に変わりつつあります。
「VO2max」の検索が1年で約2倍。約5年間ずっと横ばいだった
ハイアルチがGoogleトレンド(日本)で「VO2max」の検索人気度を調べたところ、約5年間ほぼ横ばいだった検索関心が2025年後半から急に立ち上がり、直近1年で約2倍に達していました。

グラフを見ると変化がはっきり出ています。2022年から2025年前半までは30〜40のレンジで動いていたのが、2025年後半から一気に100近くまで駆け上がっています。
関連トピックの急上昇には「Garmin」が入り、関連キーワードでは「HRV(心拍変動)」が約1,400%増。VO2maxだけが単独で注目されているのではなく、ウェアラブルが表示する指標群への関心がまとめて立ち上がっているかたちです。かつて研究機関の専用機器でしか測れなかった数値が、走るだけで手首に出てくるようになった結果と言えます。
ただし検索の中身は「とは」「平均」「年齢別」に集中している
おもしろいのは検索ワードの内訳です。「VO2max」関連で多く検索されているのは「vo2max とは」「平均」「年齢別」といった、数値の意味や自分の立ち位置を確かめる語だとしています(ハイアルチ調べ)。つまり大半の人が、まだ「これは何なのか」「自分は普通なのか」を調べている段階です。
一方で「vo2max 上げ方」が約150%増、「vo2max 計算方法」が約200%増と、次の行動を探す検索も伸び始めています。ただしその規模はまだ小さいとのこと。数値を見る人は倍増したのに、伸ばし方まで進む人は一握りという構図です。
ハイアルチはこのギャップを「意欲がないからではなく、知るから伸ばすへ進むための道筋が示されていないから」と分析しています。店舗の現場でも「ウォッチに表示される数字が、良いのか悪いのか分からない」「サブ4を目指して走り込んでいるが、タイムもVO2maxも頭打ち」「練習量は増やせない。何を変えればいいのか知りたい」といった声が聞かれるそうです。心当たりがある人は少なくないのではないでしょうか。
そもそもVO2maxとは何か
VO2max(最大酸素摂取量)は、運動中に体内へ取り込んで利用できる酸素量の最大値です。単位はml/kg/分。身体を動かすエネルギーは酸素を使って生み出されるため、この数値が高いほど「より速いペースを、より長く」維持できることになります。いわば身体のエンジン性能を表す数値で、持久力・心肺機能の代表的な指標としてスポーツ科学の現場で長く使われてきました。
マラソンのタイムとの関係が深いことでも知られています。加齢とともに低下していく一方、適切なトレーニングによって高められることもわかっています。だからこそ「上げ方」を探す検索が伸びているわけです。
走る人は減っているのに、40代・50代男性は増えている
市民ランナーを取り巻く環境の変化も、この流れを後押ししています。笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査2024」によると、ジョギング・ランニングの推計実施人口は758万人で全体としては減少傾向にある一方、働き盛りである40歳代・50歳代男性の実施率はむしろ増加しています。
また東京マラソンには33万5,147人(過去最多)が応募し、倍率は約9.6倍。走る人が全体で増える時代から、走る一人ひとりが記録と質を追求する時代へと移ってきています。数値への関心の高まりは、その表れというわけです。
ハイアルチが始めた無料「ランナーズカウンセリング」
今回開始されたのは、記録更新を目指す市民ランナー向けの対話型カウンセリングです。トップアスリート指導の実績を持つランニング専門のトレーナーが、目標と練習状況を聞きながら、伸び悩みの要因を一緒に整理していきます。
| サービス名 | ハイアルチ ランナーズカウンセリング |
| 対象 | ハイアルチ会員のうち、フルマラソン完走を目指す人から自己ベスト更新を目指す市民ランナーまで |
| 料金 | 無料(会員特典) |
| 所要時間 | 約30分 |
| 実施店舗 | 期間によって異なる |
| 持ち物 | 不要(ウォッチのデータ持参も不要) |
流れは4ステップです。目指すレースや目標タイム、これまでのベストを聞く「目標のヒアリング」から始まり、現在の練習内容や頻度、体力面の手ごたえや不安を聞く「現在地の整理」へ。そこから伸び悩みの要因が心肺面なのか、脚づくりなのか、休養なのかを切り分ける「課題の言語化」を行い、最後に低酸素トレーニングの活用や汗乳酸測定によるLT速度の計測を含めた「次の一手の提案」に進みます。
注意しておきたいのは、これはVO2maxの測定や医学的な診断を行うサービスではないという点です。あくまでトレーニングの考え方を整理する対話型のカウンセリングだと明記されています。数値そのものを測ってもらえるわけではないので、そこは期待しすぎないほうがよさそうです。
なお、2026年7月31日までは体験料・入会金・事務手数料が無料になる「サマースタート キャンペーン」も実施中とのこと。気になる人は期限に注意してください。
低酸素トレーニングがVO2maxに効くとされる理由
ではなぜ、低酸素トレーニングスタジオがVO2maxの相談窓口を始めたのか。ハイアルチのスタジオは室内の酸素濃度を下げることで標高2,500m相当の高地環境を再現しています(常圧低酸素方式)。

酸素が薄い環境では、ウォーキングから軽いジョグ程度の強度でも心拍数と呼吸数が自然に上がります。つまり体の内側は「ややきつい運動」をしている状態になる。脚への衝撃は少ないまま心肺に負荷をかけられるので、1回30分でも効率よくトレーニングできるという理屈です。
メカニズムとしては、低酸素環境で低酸素誘導因子(HIF-1α)が安定化し、赤血球を増やすホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の分泌が促進されるとされています。これにより血液の酸素運搬能力が高まり、最大酸素摂取量の増加や持久力の向上が期待できるという流れです。HIFとEPOの関係は2019年のノーベル生理学・医学賞の対象となった研究に基づく知見でもあります。

日本スポーツ協会の「スポーツ医・科学ガイドライン」でも、低酸素施設の利用を含む高地トレーニングは酸素運搬能力や有酸素性能力の向上が期待できるトレーニング法として整理されています。猛暑で外を走りにくい時期の代替として、あるいは秋のマラソンシーズンに向けた走り込みの補完として使う手もあるわけです。
会員の実績と、読むときの注意点
ハイアルチの会員アンケート(2025年実施)では、約93%が低酸素トレーニングの効果を実感したと回答。マラソン大会に出場した会員向けの「マラソン大会参加に関するアンケート2025」では、自己ベスト更新の報告が多数寄せられたとしています。
フルマラソン3時間52分から3時間28分へ(30代・女性)、3時間03分から2時間52分でサブ3達成(20代・男性)、4時間05分から1年で3時間35分へ(40代・女性)、2時間43分から2時間40分と20年ぶりの自己ベスト(40代・男性)、ハーフマラソン1時間48分から1時間36分へ(30代・男性)といった具合です。「脚に負担をかけずに心肺に負荷をかけられるので、怪我を治しながら練習を積めた」という声もありました。
ただし、これらは個人の感想・記録であり結果を保証するものではない、と同社も明記しています。効果には個人差があり、特定の疾病の治療・予防を保証するものでもありません。数字のインパクトは大きいですが、そこは冷静に読みたいところです。
代表コメント

ハイアルチ代表の坪井玲奈氏は次のようにコメントしています。
「VO2maxも同じです。アスリートには昔から当たり前だった指標が、今、時計をつけて走るすべての人の手元に届いています。ただ、数字だけを渡されても人は動けません。『あなたの場合は、次に何をすればいいか』を一緒に考える相手が必要です。100名以上のトップアスリートを指導してきた経験をもとに、市民ランナーの記録更新に伴走します。走り込む量ではなく、やり方を変えるきっかけにしていただきたいです」
まとめ:手首の数値を「読む力」も一緒に育てたい
VO2maxの検索が2倍になったという話は、スマートウォッチが単なる通知端末から「体の状態を測る道具」に変わったことの裏返しでもあります。走るだけで持久力の通信簿が出てくるようになり、その数字をどう扱えばいいかという次の悩みが生まれた。今回のサービスは、そこに人間のトレーナーを置くという回答です。
そのうえで、スマートウォッチ側の事情も押さえておきたいところです。手首に表示されるVO2maxはあくまで推定値で、心拍数と走行ペースから計算されたもの。実験室で測る値とは別物ですし、機種によって出る数字も変わります。絶対値に一喜一憂するより、同じ機種を使い続けて変化の方向を見るほうが実用的です。
数値が伸び悩んだときに「機械のせい」か「自分の練習のせい」かを切り分けられると、次にやることが見えてきます。VO2maxが上がらないのは心肺の問題なのか、そもそも休養が足りていないのか。手首の数字を出発点にしつつ、そこから先は人に相談するというのは、悪くない使い方かもしれません。
サービスの詳細はハイアルチ公式サイトで確認できます。
Source: High Altitude Management株式会社 プレスリリース(画像:ハイアルチ)
あわせて読みたい関連記事
VO2maxそのものの意味と、スマートウォッチの数値がどう算出されているのかはこちらで詳しく解説しています。
VO2Max(最大酸素摂取量)とは何かを有識者が解説!スマートウォッチで計測可能
VO2max対応のランニングウォッチを選ぶなら、まずこのまとめから。
ランニング向けスマートウォッチおすすめ10選【2026年版】二周波GPS/VO2MAX対応モデル厳選
機種によって数値がどれだけ違うのか、指標別に比較した研究をまとめました。
「どのスマートウォッチが一番正確?」睡眠・心拍・歩数・VO2 Maxを指標別に比較した最新研究まとめ
推定値をどこまで信じてよいのか。運動科学者からの指摘も押さえておきたいところです。
運動科学者が指摘するスマートウォッチの健康データの限界。主に6つの嘘をついている?【海外研究紹介】
VO2max表示の定番であるGarmin Forerunnerは、モデルごとの違いを整理しています。
Garmin Forerunnerシリーズ徹底比較|70・170・265・570・965・970の違いを詳しく解説
データと感覚をどう両立させるか。トレイルランナーへのインタビューが参考になります。
「感覚は、積み重ねたデータが育てる」SUUNTOアンバサダー吉住友里選手が語るレース哲学
心肺の状態を表す指標はVO2maxだけではありません。PAIという考え方もあります。
【PAIとは?】スマートウォッチで計測できる健康指標の意味と目安|Xiaomi・Amazfit対応モデルや上げ方も解説
ランニング関連の記事はランニングのタグページにまとまっています。最新情報はSmart Watch Lifeトップページからどうぞ。
はじめての方・記事の探し方に迷った方へ
記事が多くて迷ったら、
記事の探し方ガイド
から目的別に読めます。











