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「Suica」や「PASMO」、Apple WatchやiPhoneをかざして改札を通る——いまや当たり前の光景です。しかし、その「かざす」動作すらいらない未来が、すぐそこまで来ています。カメラに顔を向けるだけ、あるいは歩いて通り抜けるだけで改札を通過できる「顔認証改札」です。
2025年から2026年にかけて、JR東日本・JR西日本・東武鉄道といった大手鉄道各社が、相次いで顔認証改札の実証や本格導入に動き出しました。本記事では、3社の公式発表をもとに、顔認証改札の「いま」を整理します。
顔認証改札とは——「タッチ」すらしない改札
顔認証改札の基本的な仕組みはシンプルです。利用者があらかじめ自分の顔情報を登録しておき、改札に設置されたカメラが通過時に顔を撮影。登録済みのデータと照合し、定期券などの情報と紐づけて通過の可否を判定します。ICカードやスマートフォンを取り出してタッチする必要がありません。
最大のメリットは、両手が荷物でふさがっている人やベビーカーを利用する人、小さな子ども連れの人でもスムーズに改札を通れること。さらに各社が目指しているのが、立ち止まってカメラに顔を向けることすら不要な「ウォークスルー改札」——つまり歩いて通り抜けるだけで通過できる形です。
東武鉄道:大手私鉄で初の顔認証“自動改札機”

東武宇都宮駅に導入された顔認証対応自動改札機(出典:東武鉄道 ニュースリリース)
東武鉄道は2026年5月27日から、東武宇都宮線の東武宇都宮駅で、顔認証に対応した自動改札機の利用を開始しました。これは大手私鉄として初の取り組みです。
東武では、栃木駅から東武宇都宮駅までの計12駅で、すでに顔認証改札を導入していました。ただしこれまでは独立した顔認証用タブレットの前で一度立ち止まって認証を受ける必要がありました。今回の自動改札機では、立ち止まらないスムーズな通過が可能になります。
仕組みの土台になっているのが、東武鉄道が日立製作所と共同で進める生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」です。利用者はマイページに顔情報や定期券を搭載した交通系ICカード番号を登録しておくことで、顔認証改札を使えます。東武は今後、さまざまなメーカーの自動改札機に顔認証機能を後付けできる汎用システムの開発も進め、他の鉄道事業者への導入拡大も目指すとしています。
JR東日本:「Suica Renaissance」上越新幹線で実証
JR東日本は2025年4月、中長期戦略にもとづく構想「Suica Renaissance(スイカ・ルネサンス)」の一環として、上越新幹線の新潟駅・長岡駅で顔認証改札機の実証実験を行うと発表しました。掲げるテーマは「改札はタッチするという当たり前を超える」。実証は2025年秋頃から2026年春頃まで予定されています。
対象は新潟〜長岡間の新幹線定期券(Suica FREX)を持つモニター参加者。改札機はJR東日本メカトロニクス・NEC・パナソニックコネクトと共同開発し、新潟駅にはNEC製(既設の改札機に上から被せて設置)、長岡駅にはパナソニックコネクト製(新設)の2種類を導入します。
JR東日本は今後、大人の休日倶楽部会員や新幹線eチケット利用者へと対象を広げ、エリアも拡大していく方針です。ウォークスルー改札については顔認証以外の方式も検討しており、2027年春頃には在来線で別技術の実証も予定。今後10年以内のウォークスルー改札実現を目標に掲げています。
JR西日本:大阪・新大阪に「IC併設」の新型
JR西日本は2026年1月、大阪駅・新大阪駅に新タイプの顔認証改札機を導入すると発表しました。利用開始は2026年3月2日からで、ICOCA定期券を持つモニター参加者が対象です。
JR西日本は2023年3月から、大阪駅(うめきたエリア)でゲートのないウォークスルー型の顔認証改札を実証してきました。今回の新型の特徴は、普段使われている標準型のIC専用改札機を改造し、顔認証機能を増設した点にあります。これにより改札機の台数を減らすことなく、ICカードと顔認証の両方を同じ改札機で使えるようになり、他駅への展開もしやすくなりました。進行方向にカメラを2台縦列で配置し、認証精度の向上も図っています。
プライバシー面では、顔認証用カメラで取得した顔画像や特徴点データは認証後に即時削除し、録画も行わないと明記。取得データは外部に接続しない専用ネットワークで管理するとしています。
3社に見える共通の流れ
発表内容を並べると、各社の取り組みにはいくつかの共通点が見えてきます。
ひとつは、最終的なゴールが「ウォークスルー(タッチレスで立ち止まらない)」であること。もうひとつは、ゼロから専用改札を作るのではなく、既存の汎用的な改札機に顔認証を「後付け」する方向で、コストと展開性を重視している点です。
また、いずれの社も顔データの取り扱いに慎重で、即時削除や専用ネットワークでの管理などプライバシー保護を強調しています。そして現状はどの社も「定期券+事前の顔登録」が前提で、誰もが顔だけで自由に通れるわけではない、という点も共通しています。
スマートウォッチ・Suicaユーザーにとっての意味
Apple WatchやiPhoneでSuicaをかざして改札を通るのが定番になった今、顔認証はその「次」の一手と言えます。手ぶら・タッチレスで通れる体験は、毎日の通勤・通学のストレスを確実に減らしてくれるはずです。
ただし当面は定期券+顔登録が必要で、SuicaやApple Watchのタッチがすぐに不要になるわけではありません。むしろしばらくは、従来のタッチ改札と顔認証が併存していく形になりそうです。手首のApple Watchでサッと改札を抜ける快適さは当面そのままに、その先に「歩くだけ」の改札が見えてきた——そんな段階だと捉えておくとよいでしょう。
まとめ
顔認証改札は、JR東日本・JR西日本の実証段階から、東武鉄道の本格導入まで、一気に現実味を帯びてきました。各社が「タッチの先」を競い、10年スパンでウォークスルー改札が広がっていく可能性があります。
一方で、プライバシーへの配慮、事前登録の手間、対象が定期券利用者に限られるといった課題も残ります。当面はSuicaやApple Watchが改札の主役であり続け、その傍らで顔認証が少しずつ存在感を増していく——そんな移行期に、私たちはいま立っています。
Source: 東武鉄道 ニュースリリース / JR東日本 ニュースリリース / JR西日本 ニュースリリース
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