スマートウォッチで高齢者は自分の“頭の冴え”を正確に判断できる|UC Davisの研究がリアルタイム認知評価の可能性を示す

NEWS

公開日:

Apple Watchに関するイメージ画像

スマートウォッチは歩数や心拍を測るだけの道具、と思っていませんか。実は「今、自分の頭がどれくらい冴えているか」を高齢者自身がかなり正確に感じ取れる——そんな研究成果が、米カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)から発表されました。Apple Watchを使って日常生活のなかでリアルタイムに認知機能を測るという新しい試みで、認知症やアルツハイマー病の“兆し”を早く見つける手がかりになるかもしれません。

スマートウォッチで「今の頭の冴え」をその場で記録する研究

この研究は神経心理学の学術誌「Neuropsychology」に掲載されたもので、静かな検査室ではなく、家事や買い物といったふだんの生活のなかで気分と認知機能をリアルタイムに測定した点が特徴です。

研究のシニア著者で、UC Davis Healthの神経心理学者サラ・トマシェフスキ・ファリアス教授(神経内科教授、UC Davis California Alzheimer’s Center of Excellence ディレクター)は、次のように説明しています。「私たちの目標は、人が自分の認知——つまり考える力——をどう認識しているか、そしてそれが客観的なテスト結果とどれくらい一致するかを理解することです」。

そのうえで「人々の“瞬間ごとの頭の冴え”の印象は、実際のテスト成績と密接に一致していました。これは、従来の標準的な認知テストよりも早い段階で、認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクを見つけることにつながるかもしれません」と述べています。

162人の高齢者がApple Watchで1日4回セルフチェック

研究では、平均年齢およそ72歳の高齢者162人を対象にしました。参加者は全員、記憶力や思考の変化に不安を感じてはいるものの、事前の標準的な認知テストでは正常範囲に収まっていた人たちです。

参加者は1週間にわたり、Apple Watchから1日4回の通知を受け取りました。通知が来るたびに、その時の「頭の冴え(mental sharpness)」と気分(ストレス・疲労・落ち込みの度合いなど)を自己評価。さらに、Apple Watch上で処理速度や注意力を測る短い課題にも取り組みました。

こうした手法は「生態学的瞬間評価(ecological momentary assessment)」と呼ばれます。数週間から数か月前の状態を思い出して答える従来の検査と違い、その場の認知をリアルタイムに捉えられるのが強みです。ファリアス教授も「検査室のような静かで人工的な環境ではなく、家事の途中や買い物中など、生活のなかで認知を捉えられた」と話しています。

自己評価は実際の認知テスト結果とよく一致した

結果として、参加者が感じた「今の頭の冴え」は、実際の認知テストの成績とよく相関していました。自分の平均より「今日は冴えていない」と感じたときは、テストの成績も実際に低かったのです。しかもこの傾向は、気分・年齢・その時の状況といった要因とは独立して見られました。

気分の落ち込みに影響されにくいのがポイント

「自分は物忘れが増えた」という主観的な感覚は、うつ状態と強く結びつくことが知られています。ところが今回の研究では、気分は「頭の冴えの自己評価」と「実際の成績」の関係にほとんど影響しませんでした

ファリアス教授は「気分が、どれだけ冴えていると感じるかとテスト成績の関係に大きく影響しなかったのは、うれしい発見でした。その場で主観的な認知を測る方法は、検査室で測るよりも気分の落ち込みの影響を受けにくく、実際の認知機能をより敏感にとらえられる可能性があります」と説明しています。

「頭を使う作業は午前中に」を裏付け

さらに、時間帯によっても思考の冴えが変わり、午前中のほうが思考が鋭い傾向が見られました。ファリアス教授は「臨床では、認知的な負担が大きいことは午前中に行うよう患者さんに伝えることが多いのですが、今回の研究はその助言を裏付ける可能性があります」と述べています。

このようなリアルタイムの主観評価は、医師が患者のふだんの認知状態をより正確に把握し、変化に気づいた人を支えるうえでも役立つと期待されています。

まとめ

スマートウォッチを「日常のなかで認知機能を見守る道具」として使うこの研究は、健康管理におけるウェアラブル活用の新しい方向性を示しています。自分の“頭の冴え”の感覚が意外とあてになること、そして頭を使う作業は午前中が向いていることは、私たちの毎日の過ごし方にもすぐ活かせるヒントかもしれません。もちろん現時点では研究段階であり、医師による診断に置き換わるものではありませんが、Apple Watchのようなデバイスが将来、認知の変化にいち早く気づく手助けをしてくれる日が近づいていると言えそうです。

Source: MedicalXpress(UC Davis) / 論文: Brandon E. Gavett et al., Neuropsychology (2026) DOI: 10.1037/neu0001075

あわせて読みたい関連記事

Apple Watchを大規模データで解析した、加齢と睡眠に関する研究も話題になりました。

ハーバード大学、Apple Watchの睡眠データ約94,000夜分を分析|更年期前後の睡眠パターンの変化を発表

スマートウォッチが症状の“予兆”を捉える研究は、子ども向けにも広がっています。

米Mayo Clinic、AIスマートウォッチで子どものかんしゃくを予測する研究を発表|装着群は持続時間が10分に半減、最大60分前に警告

医療現場での検出精度でも、Apple Watchは存在感を示しています。

Apple Watchが小児の不整脈検出でパッチ型モニターを上回る、Heart Rhythm 2026で研究発表

「自己申告」と「実測」のズレという意味では、睡眠計測の機種差を検証したこの話題も参考になります。

Apple Watch・Whoop・Oura・Fitbit Airを1週間同時装着した人の見解が話題|深い睡眠は機種間で76%もズレる

これから健康管理にApple Watchを取り入れたい方は、モデル選びから始めてみてください。

【2025年最新版】Apple Watch SE 3・Series 11・Ultra 3の違いを徹底比較|実機レビューでわかった“本当の選び方”

 はじめての方・記事の探し方に迷った方へ
記事が多くて迷ったら、 記事の探し方ガイド から目的別に読めます。

※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。
     

関連記事