オランダのラドバウド大学医療センター(Radboudumc)の研究チームによると、早期パーキンソン病の患者が日常生活でスマートウォッチをつけ続けることで、年1回の通院による検査よりも腕の震え(振戦)の変化を正確に捉えられることが分かりました。新しい治療法が本当に効いているかどうかを、より早く見極められる可能性があるとして注目されています。
Source:Radboudumc
年1回の診察では見えにくい「症状の揺らぎ」
パーキンソン病はオランダ国内だけでも6万3,000人以上が抱えている病気で、手の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばりといった症状が現れます。症状を抑える治療は存在するものの、現時点で根治させる方法はなく、病気の進行を遅らせる新しい治療法の研究が世界中で進められています。
そうした新治療の効果を確かめるには、症状の変化を信頼できる形で測ることが欠かせません。ただ、これまでの評価は基本的に「通院時の問診と身体検査」に頼ってきました。問題は、パーキンソン病の症状が日や時間帯によって大きく変動することです。1年に1度の通院ではあくまでその瞬間のスナップショットしか得られず、診察室の緊張で症状が一時的に悪化することもあると、研究チームは指摘しています。
620人が2年間スマートウォッチをつけ続けた大規模研究
ラドバウド大学医療センターのチームは、別のアプローチとして「家でスマートウォッチをつけ続けてもらう」方法を試しました。早期パーキンソン病の患者にスマートウォッチを常時装着してもらい、腕の動きをずっと記録します。そのデータを、チームが独自に開発した解析アルゴリズムが処理し、パーキンソン病の症状と結びつくパターンを抽出する仕組みです。
博士課程学生のNienke Timmermans氏は「たとえば、震えがどのくらいの頻度・強さで起きているかを把握できます。それを1年に1度ではなく、ずっと続けて測れるようになります」と説明しています。
今回の研究には620人が参加し、2年にわたってスマートウォッチを身につけました。研究者のLuc Evers氏は「これだけ大規模な集団のパーキンソン病の症状を、これほど長い期間、現実の生活の中で追跡した研究はこれまでありませんでした」と、プロジェクトの規模感を強調しています。これは「Personalized Parkinson Project」と呼ばれる取り組みの一部として行われました。
結果:通院時の検査より早く・正確に進行を検知
研究の結果、スマートウォッチで取得したデータは、年1回の通院での評価よりもパーキンソン病に関連する振戦の変化を正確に検知できることが示されました。これにより、病気の進行を初期段階から信頼できる形でマッピングできるようになります。
Evers氏は「新しい疾患修飾療法が有望かどうかを、これまでよりずっと早い段階で判断できるようになります。明日にも治療薬が完成するという話ではありませんが、効果のある治療をより早く見つけられるということです」と意義を語っています。
誰でも使える解析ツールとして公開
研究チームが開発した解析手法「ParaDigMa」は、オープンソースのPythonツールとして無償で公開されており、世界中の研究者がすぐに利用できます。専用デバイスを新たに用意する必要はなく、モーションセンサーを備えた一般的な研究用スマートウォッチでも対応可能とされています。
将来的には、研究目的だけでなく日々の臨床ケアへの応用も視野に入っています。たとえば、処方された薬がきちんと効いているかを確認したり、脳深部刺激療法(DBS)の効果をより精緻に測ったりといった使い方が考えられます。Timmermans氏は「さらなる研究が必要なのは確かですが、自宅で時計をつけているだけで、これまでよりはるかに有効にパーキンソン病をモニタリングできることが今回の結果で示されました」と述べています。
研究の出典
本研究は学術誌『Annals of Neurology』に「Daily-life, sensor-derived tremor measures are sensitive to progression in early Parkinson’s disease」として掲載されています(DOI: 10.1002/ana.78236)。解析手法ParaDigMaそのものについては、先に『The Journal of Open Source Software』で「ParaDigMa: a Python toolbox for extracting Parkinson’s disease digital biomarkers from daily life wrist sensor data」として発表されています(DOI: 10.21105/joss.09502)。
まとめ
「年に一度の診察」では捉えきれない症状の細かな揺らぎを、スマートウォッチが日常生活の中で連続して記録できる時代に入りつつあります。今回のラドバウド大学医療センターの研究は、健康管理ツールとして広く普及したスマートウォッチが、将来の難病治療の評価そのものを変えていく可能性を示すものといえそうです。スマートウォッチが「健康をなんとなく見守るデバイス」から「医療研究を支えるツール」へと役割を広げつつあることを、改めて感じさせるニュースです。
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