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運動科学者が指摘するスマートウォッチの健康データの限界。主に6つの嘘をついている?【海外研究紹介】

コラム・業界分析

公開日:

木目テーブルに並べた丸型と角型のスマートウォッチ2台

ランニングを終えて満足してスマートウォッチを見ると、フィットネススコアが下がっていて、消費カロリーはほぼゼロ、回復スコアは最低レベル。次の72時間は運動を控えるよう警告まで表示されている——。それなのに、自分の身体は「最高に気持ちよかった」と感じている。こんな経験はないでしょうか。

アデレード大学で運動科学を教えるハンター・ベネット講師は、こうした違和感の原因を「スマートウォッチが計測している健康データの多くは、推定値であって直接計測ではないため」と説明しています。同氏が2026年4月にThe Conversationへ寄稿した記事では、スマートウォッチが提示する6種類の数値について、それぞれどこまで信頼できるのかが整理されています。本記事ではその要点を、SWLとして読者向けに翻案・要約してお届けします。

紹介する記事と著者について

今回紹介するのは、The Conversationに掲載された「6 ways your smartwatch is lying to you, according to science」という記事です。著者はアデレード大学の運動科学講師 Hunter Bennett氏で、研究対象はトレーニング科学・運動生理学です。記事冒頭には、ベネット氏が「本稿に関連する企業・団体から資金提供や顧問・株式の利害関係を持たない」という開示も明記されています。

The Conversationは大学研究者が一般向けに寄稿する学術解説メディアで、内容はCreative Commons(CC BY-ND)ライセンスで提供されています。本記事は要約・紹介の形でこの寄稿を取り上げ、原文へのリンクと著者・所属機関のクレジットを明示しています。

1. カロリー消費は20%以上ズレることもある

スマートウォッチで最も人気が高い機能のひとつが消費カロリー計測です。ところがその精度は、お世辞にも高くないとベネット氏は指摘します。ウェアラブルデバイスは消費エネルギー(カロリー)を20%以上、過大評価または過小評価することがあり、運動の種類によって誤差の大きさも変わってきます。とくに筋力トレーニング、サイクリング、高強度インターバルトレーニング(HIIT)では誤差がさらに広がる傾向があるとのことです。

この誤差がやっかいなのは、多くの人がスマートウォッチの数値を「どれだけ食べていいか」の判断材料にしている点です。過大評価された数字を信じれば食べすぎてしまい体重増加につながりますし、逆に過小評価されたまま運動を続けると栄養が不足し、結果としてパフォーマンスを落とすことになります。

2. 歩数は約10%少なくカウントされる傾向

歩数計測はスマートウォッチの定番機能で、日常の活動量を把握する指標として広く使われています。ただしベネット氏によると、通常の運動条件下でもスマートウォッチは歩数を約10%過少カウントする傾向があるとのこと。スマートウォッチは腕の振りで歩数を検知する仕組みのため、ベビーカーを押す、買い物袋を持つ、ポケットに手を入れて歩くといった状況では、さらに精度が落ちる可能性があります。

とはいえ、絶対値そのものよりも「日々の活動量の傾向」を見るうえでは十分有用だ、というのがベネット氏のスタンスです。「1日1万歩」のような目標値も、厳密な精度を求めるよりは「だいたいの目安」として捉えるのが現実的でしょう。

3. 心拍数は強度が上がると精度が落ちる

心拍数は、手首の血流変化を光学的に読み取る方式で計測されています。安静時や軽い運動であれば精度は高いものの、運動強度が上がるにつれて誤差が増す傾向があると指摘されています。腕の動き、汗、肌の色、装着時の締め付け具合などが値に影響するため、人によって精度のばらつきも生じます。

これが問題になるのは、心拍ゾーン(脂肪燃焼ゾーン・有酸素ゾーンなど)を基準にトレーニングしている人です。小さな測定誤差が積み重なると、想定と異なる強度で走り続けてしまうことになります。SWLでも以前から、スマートウォッチによる心拍計測の精度については肌の色や装着位置が影響することが研究で示されていると紹介してきました。

4. 睡眠ステージの判定は脳波検査ほど正確ではない

ほとんどのスマートウォッチには睡眠スコア機能があり、夜の睡眠を浅い眠り・深い眠り・REM睡眠の3ステージに分解して見せてくれます。一方で、睡眠の計測における「ゴールドスタンダード」は、脳波を測定するポリソムノグラフィという研究室レベルの検査です。スマートウォッチはあくまで動きと心拍数から睡眠ステージを推定しているため、原理的に精度には限界があります。

「眠っているか起きているか」自体は比較的しっかり判定できるものの、ステージ単位の判定はかなり粗くなります。スマートウォッチが「今日は深い睡眠が足りなかった」と表示していても、それが実態を正しく表しているとは限らないわけです。睡眠スコアに振り回されすぎることでかえって睡眠が悪化する「オルソソムニア(睡眠スコア依存症)」のような問題も最近では指摘されており、数値はあくまで参考に留めるのが賢明です。

5. 回復スコアは2つの不正確な指標の組み合わせ

多くのスマートウォッチは、心拍変動(HRV)と睡眠スコアを組み合わせて「レディネス」「リカバリー」などの回復スコアを算出します。本来、心拍変動は心電図(ECG)で測定するもので、手首センサーで推定する方式は誤差が出やすいとされています。つまり回復スコアは、心拍変動と睡眠スコアという「どちらも不正確な指標」を掛け合わせたうえで作られていることになります。

結果として、「回復が足りていません」と表示されたから運動をやめたものの、実際の体感は絶好調だった、というすれ違いが起こりやすくなります。逆に「回復済み」と出ていても、体感が重いなら無理をせず控える方が賢明、というのもよくあるケースです。

6. VO₂max推定は研究室の計測には及ばない

VO₂max(最大酸素摂取量)は、有酸素能力の指標として位置づけられている数値です。本来は呼気ガス分析を行う研究室レベルの計測で正確な値を出すもので、スマートウォッチは心拍と運動データから「推定」しているにすぎません。

ベネット氏によると、スマートウォッチによるVO₂max推定は、運動不足の人については過大評価、よく鍛えているアスリートについては過小評価される傾向があるとのこと。日々の値の上下に一喜一憂するよりも、長期的なトレンドの方向性を見るほうが現実的です。

では、スマートウォッチをどう活用すべきか

ここまで読むと「じゃあスマートウォッチは役に立たないのか」と感じるかもしれませんが、ベネット氏の結論は逆です。これらのデバイスは長期的な傾向を把握するうえでは有用であり、運動習慣の継続を支える存在になりうると述べています。

大切なのは、日々の数値の細かな上下に振り回されないことと、最終的には「自分の身体がどう感じているか」「どこまで動けるか」「どれくらいで回復したか」という体感に耳を傾けることです。スマートウォッチが示す数字と、自分の感覚の両方を併用してこそ、健康データは初めて意味を持ちます。

まとめ

スマートウォッチは便利な健康ガジェットですが、表示される数字の多くは「直接の計測値」ではなく「推定値」であり、その精度には明確な限界があるというのが、ベネット氏の研究を通じた結論です。とりわけカロリー消費・VO₂max・回復スコアなどは大きく外れる可能性があるため、目安として活用しつつ、最終的には自分の体感を判断基準にする姿勢が大切です。

SWLでも、スマートウォッチ2台を同時装着してデータを比較した検証記事など、健康データの読み解き方に関する複数の研究を紹介してきました。スマートウォッチの数値を信じすぎず、しかし長期トレンドはしっかり活用する——そのバランス感覚を、改めて見直すきっかけにしていただければと思います。

Source: Hunter Bennett, Lecturer in Exercise Science, Adelaide University. 6 ways your smartwatch is lying to you, according to science(The Conversation, 2026年4月19日)

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